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セプテンバー・デイドリーム
葉が落ち始めた木々の根元にもたれて、 崩れそうな肩同士を寄せ合い、 ずっと笑っている風の強い午後の僕らにも届いた木漏れ日に、 片方ずつの掌をかざせば、 天気雨のあとの空はいつも、悲しいくらいに青かった。 あの日々の、あの時間と同じ匂いで通り過ぎていく、 秋の風をもう幾つも見送ったよ。 見通しの立たない視界不良の将来に揺さぶられる呼吸を、 なだめる為だけに吹いて、 まだ陽の目を知らない人生が並ぶ列の一番後ろ、 次の順番を取りこぼし続ける僕らの手をすり抜けていった。 誰の涙にさえ疑いようもなく開かれた心の南側から吹き寄せる、 冷たい笑い声で日々の地肌がざらつくたびに、 巻き上げた荷物の下ろすべき場所も早合点して進む時計の針は、 ざわつく心をやがて更地に戻した。 約束とは、僕らが踏みしめたそれぞれの道に蒔かれた種に芽吹く、 一輪ずつの花と、それゆえの言葉。 大舞台の演目には選ばれなかった僕の一生の物語に、 突然割り込んで、 太陽の役目を買って出てくれた人たちの、 離れていく背中。 ずっと、みんなと遊んでいたかった。 終わる事なんて知らなかった、 知らなかった、だけだった。 振り向けば、あの名残惜しい時間をいっしょに潜り抜けた、みんなはもうずっと遠くなって、 解かれた絆の残滓を首飾りに、 同窓の記憶から伸びた長く険しい一本道を、 いつも一人で歩いていた。 沁みるほど見つめた一番星の影を追って、 深く入り組んだ青年期の林道を進めば、 気の置けない間柄で繋ぎあえた人間たちの頭数は、 数え上げるたびに目減りした。 獰猛な獣たちが見張る土煙の風上に立って、 過ぎ去る幾つもの'懐かしさ'をあの街のビル風は吹き上げていて、 '夢'だとか'憧れ'、刻一刻重苦しくなるだけの荷物に値札を貼れば、 売っぱらってしまったあとの清々しささえ、二束三文だった。 十四歳のふらつきを説得してみせた大きな神話は失われたけれど、 物語が抱く巨大な力だけを信じて喋り続けた。 やがて掠れた言葉が暮らしの空白を埋めるだけの時間は終わり、 人生は一枚の履歴書になった。 誰の慰めにもなれず、色褪せやすくなった一枚の紙っぺらに...。 僕はまた一人、人生に振り向き直して、 寒気が黙々と立ち込める冬先の徹夜明けをぶった斬って始動する、 窓の外、都心環状線。 山積みの仕事をかき分けて見つめれば潤んでしまう、 怠そうな眼差しを凝らしたなら、 晩秋の訃報が立て続けに降り積む後光の街の一画に、 いつもと変わらない、みんなが待っていた。
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セプテンバー・デイドリーム ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 355.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2026-01-15
コメント日時 2026-01-16
| 項目 | 全期間(2026/01/25現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


ご自分の人生の物語なのでしょうが、 少年期・青年期・壮年期ときて、最後は晩年の訃報の日々。 軸が何本もあるのだけど、貫かれた1本の軸を感じられず、その分、散漫な印象になっています。 ひとつの詩の中に盛り込み過ぎているのではないか?と思います。 14歳のころが、いちばん印象的で、良く書けています。
0夢想感はよく出てる。 なので文法的にも息継ぎも、少々読みにくい箇所には眼を瞑る。 そんな意識された文章だとは思うのですが、 途中~ずっとみんなで遊んでいたかった。~知らなかった、だけだった。 このような一呼吸置くところがあるのだから、 もう少し流れを意識して手を施してもらいたいな、 推敲して現実離れした浮遊感覚を失ってしまう、と思うのならば、 推敲されてそのことを意識的に工夫すればいい。 意識されない読み難さが目立ってしまったのでは、 この漠然とした夢想感も余韻を伴わないで終えてしまう。 とも思うのです。
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