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花火とヤモリとGB250
《花火とヤモリとGB250》 花火が打ち上げられていた 僕はオートバイを停めると見惚れる 花火はけして途切れるコトなく続く ひょい、と花火が永遠に続く亜空間に 入り込んでしまったのである 腹を揺さぶる爆発音は脳ミソをも揺るがす 阿蘇まではまだまだ遠い 松江の海岸で道に迷い 行き着いたのが岸壁だった きっと穴場だったのだろう 見物人は多くなかった 花火は続く 延々と続く まだ亜空間から逃げ出せない まアここで死んでもええやろと思う 悔いなく死ねると思う どうせ人生は儚い そうだろ? 僕はとうとう花火の炸裂に合わせて叫ぶ 近くにいた見物人が振り返るが知ったコトか 叫びに叫んでからオートバイで走り出す 花火はまだ終わっていない でも僕には頃合いだ 走り行く先のアスファルトを染め上げる花火 僕は色彩の爆発の中をオートバイで走り抜け そして亜空間ともおさらばだ 遠雷のように花火の音だ 店の網戸に止まり虫を食うヤモリの 白い腹を見ながらラーメンを啜(すす)る きゅッと首を傾げるようにヤモリは僕を見る ラーメンを食うのを一時中断して 僕はヤモリに語りかける おい、ヤモリ? ヤモリは僕を見詰めながら言う なんだ、人間? 僕はいつ死んでもええ思てんねん 妻が死んだのは昨年だった 今年の早い春に親父も死んだ だから死はとても身近だった するとヤモリは僕を見てくふふと笑う そしてひそひそ声で語りかけてくる なかなか思うようにはいかないだろ? つい僕も首を傾げる 僕からはきっと死が臭うんやろな? ふふん ヤモリは頭の位置を下にする そしてつぶらな瞳で僕をぼうっと見つめる 死は「おともだち」じゃないかな? 僕は答えるように言う 上手く歳を取ってるやろかな? ふん? さあね ヤモリはそう答えると虫食いに戻る 僕は夜を裂きながらオートバイを走らせる 日本海が見たくて松江や島根を走っていたが こう夜中では何も見えない なんとしても今夜の野宿の塒(ねぐら)を 探さねばならなかった もし明朝生きて目覚めたなら旅は続くからだ
花火とヤモリとGB250 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 223.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-10-07
コメント日時 2025-10-07
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


敏感だった若い頃、花火の音が痛かった記憶を思い出しました。 次々とあらわれるモチーフに飽きずに読めた。草枕の旅に寒さは辛いですが秋は良い季節ですかね。元気出して。
0花火の途中で帰ろうとする。旅の途中。今夜の塒は。守宮との対話。ラーメンを食うのを一時中断している。喋る家守?爬虫類の言葉が聞こえると言う事は確かに、何か異形の状態、特別な状態に入った人なのかもしれません。日本海が見たくて、松江や島根を走って居る。まさに亜空間だと思いましたね。
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