似た夢をよく見る。
私は空っぽな部屋に座っている。明りは無い。
少し離れた向かいの壁は障子が連なっていて、正面に隙間が開いている。
障子の向こうは明るく、知った顔が疎らに通り過ぎていく。
彼らは隙間から私を横目に見るだけである。
私は動かず、声を張り上げる勇気もない。
まずこの空虚を恐怖として、思いつく儘のものを部屋にばら撒き始める。
足の踏み場が無くなる。
足りない。
どんどんと山が高くなる。
高くない天井に段々と届き始める。
積み上げられたものたちに私は視界を埋め尽くされる。
埋めなければ。
最早思考と感情の届かない所にいる。
いつしかこのがらんどうは、はち切れんばかりに満たされる。
妙な満足感だ。
私は笑みを溢す。
そして同時に気付く。
瞬間、空っぽになるまで詰め込まれた空っぽは空っぽに還る。
身体を失った私は、
ようやく障子の向こうへと声を投げる。
声帯も持たない私に視線は当てられない。
私は一頻り哭き、
からだを作り始める。
作品データ
コメント数 : 1
P V 数 : 368.4
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 71
作成日時 2025-09-02
コメント日時 2025-09-02
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 25 | 25 |
| 前衛性 | 6 | 6 |
| 可読性 | 2 | 2 |
| エンタメ | 5 | 5 |
| 技巧 | 10 | 10 |
| 音韻 | 3 | 3 |
| 構成 | 20 | 20 |
| 総合ポイント | 71 | 71 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 25 | 25 |
| 前衛性 | 6 | 6 |
| 可読性 | 2 | 2 |
| エンタメ | 5 | 5 |
| 技巧 | 10 | 10 |
| 音韻 | 3 | 3 |
| 構成 | 20 | 20 |
| 総合 | 71 | 71 |
閲覧指数:368.4
2025/12/05 20時29分03秒現在
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単なる「夢の記録」というより、空虚と充満の逆説を描いたストーリーのように感じました。 何かで自分を覆い尽くした瞬間に、自分自身の輪郭を失う…という、アイデンティティの空洞化を暗喩で表現しているところが面白いです。 空っぽな部屋を埋めれば埋めるほど、自分自身が消えていくの痛烈さ。 障子の向こうの知った顔が行き交う。けれど彼らはこちらを覗き見るだけで、助けない。 つまり「他者は存在するのに、繋がれない」。この断絶感が空虚の正体なのかもしれないと思いました。 喪失を通じてしか、新しい身体=新しい自分はつくれない、破壊と再生のストーリーとしてとても印象に残りました。