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肉球と百合
悲しみは礫となってこめかみと目頭を打った 子供のようにむせび泣き 夜な夜な啜り泣くものだから しょうがない奴だと呆れたあの子 階段の一段一段に別れのシラブルを添えたメッセージ 拭っても浮き出て消えそうもない白い肉球跡 これでいいかな?と問うように それに触れると追憶が連れてきたのは骨を刺すほどの寒い夜々 温みを求め 互いの背を寄せ合わせ眠った夜のこと 真綿のようなあの子 18年の歳月で老いさらばえ 骨と皮になった背 手の平が覚えている 着古したパジャマ代わりのTシャツにくるみ 泣き濡れた思慕を手向けに百合の根元に埋めた クリスマスの日 まだ鈍い陽が射す午后のこと 涙が涸れ悲しみが霧となって漂い始めたころ こちらに無垢の顔を向けて すっくりと立つ白い百合の花 花芯からそこはかとない芳香で月日の流れを伝えてきた 窓越しの陽光 思い出にうつつをぬかしているとあの子と見紛うキジ寅の猫が庭を横切っていった
肉球と百合 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 366.3
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-08-27
コメント日時 2025-08-28
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


猫への愛しさが、ダイレクトに伝わってまいりました。 私が家族の中でいちばん愛したのが猫でした。 とても美しく、こころ痛く、表されておりますね。 そして、百合が素晴らしいです。 弔いに相応しく、目映いほど白く馨り良く。 ふと、思い出したことは、お正月に故郷へとお墓参りに帰ったとき、お墓参りを終えると、昇りきった朝陽に照らされ、ひまわりが真っ直ぐに咲いていたことです。 百合の花に、なんとなく重なりました。 ありがとうございます。
0こちらこそありがとうございます。目映いほど白く…とは。百合の白さをもう少し表現できていたらと思わせてくれました。
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