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夜光虫の慟哭
鈍色の心模様に、 踏み入れる足音。 ぐっちゃぐっちゃと、 延髄を混ぜっ返すような。 君になら、また逢いたい。 そう願うのに。暗夜行路。 音がぴたりと止んだ。 記憶の中の君が弾け飛んで、 さらさらと音を立てて躰の輪郭が崩落する。 心の垣根も躰の境界も、 偽りの沼でぐらぐらと煮立つとき。 視界が暗転して、私はただ嗚咽する。 どうしてか、こんなにも浅はかな自分。 どうしてか、また人を裏切った。 川に飛び込んで、溺死体になる。 川に飛び込んで、君に許しを請う。 でもいざ欄干に手を掛けると、 鋼鉄のように躰が動かなくて。 また爆ぜる。 そういう道を選んだ。 夜に生きる私は、 コンクリートの寝床に、 いずれ墜ちるのだろうか。 茹だる宵も凍える暁闇も、 私は夜光虫、 人の意識を彷徨い曇らせるだけの、 ただの生命の残滓。 ああ、いずれ解るだろう。 片隅の虫けらのような私が、 地べたに垂れ流す灰褐色の涙の意味を。 ああ、いずれ解るだろう。 がたがたに崩れた地平線の名残が、 闇と溶け合うさなか、 夜光虫の群れが何故今も君に縋るのかを。 君の欠片で世界はできていると、私は悟った。 もう、何もかも手遅れなのに。
夜光虫の慟哭 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 685.4
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-08-04
コメント日時 2025-08-13
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


最後の方で、詩情がマックスに高まって行き、美しいと思います。こういう言葉が書ける以上、 群青さんは、立派な詩人として存在していると言えると思います。過去や未来に理解を求め、 詩を書き続けるのは、現在における詩人としての筆が走る瞬間ですね。
0過分なお褒めのお言葉、誠に恐縮です。 いつも気にかけてくださり、感謝しかありません。 黒髪様の遠いお背中を追い掛けて、僕も少しずつ頑張ります。 本当にありがとうございます。
1こんばんは、 >>でもいざ欄干に手を掛けると、 >>鋼鉄のように躰が動かなくて。 これは非常にリアルな表現で胸に迫ります。礫と風の音が耳に聴こえてきそうです。
0コメントありがとうございます。 大変恐縮で身が引き締まります。 この部分の表現は、実際場にいるとある種そんなものだと、理解していた気はします。 また頑張ります。
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