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2898 猫が瞬きをして、雲が晴れの隙間を作る。欠伸の音が蝉声で聞こえない。カーテンの隙間、白い光は頬を温める。伸び切った脊髄は縮むことを嫌がる。玄関のチェーンは、肘を付いて客を待つ。晴れの日の電線は、いつもより垂れている。踏切を待つ袖に風が吹いたら、見知らぬ人に歩み寄る。地下鉄の駅、僕の待つ電車は向かいのホームの人とは解を持たない。階段を登る、また蝉が鳴く。湿気を含んだ風は僕に肩をかけてくる。雨が降り出す。浮き足立った人達はそっと地に沈む。目線が合う。澄んだ空は他人を気にしない。雨は隣で涙を流す。雨粒は僕のまつ毛をすり抜け、何も言わずに過去を濡らしていく。人が足音で鳴らすドラム、歪なBPM、一瞬のまとまり。夜と昼の繋ぎ目。乾いた風にはもう肩を貸さない。目に悪そうな通りを歩いて、暖色の横道に入る。喧騒は意外にも僕を受け入れる。机に置かれた紙はグラスの汗で滲んでいる。靴は段々軽くなる。僕は夢から醒める。目を開ける、地下鉄のホームの大家は騒がしい住人に寛容だ。正負の異なる電車に乗って夢と現実の隙間を進む。壁の凹凸を這う指は、部屋に灯りを灯せない。ベッドに沈む背中、暗闇を割く風。昨日の雨は、カーテンの外で乾かない。キャンバスに青が混ざり始める、雲が輪郭を帯びる。乾いた空気を吸って、世界の始まりを許す。
2896 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 403.5
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-07-24
コメント日時 2025-07-24
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


冒頭から詩的な情景が空にぱぁっと広がっていくような感覚をおぼえます。 猫の瞬き、蝉声という表現、玄関のチェーンが肘を付く。 >>踏切を待つ袖に風が吹いたら、見知らぬ人に歩み寄る。 この連も良いですね。 >>正負の異なる電車に乗って夢と現実の隙間を進む。 ここなんかも、印象に残りました。
1最近、詩からイメージを得ることを課題にしているので、この詩も、多彩な画像を思い浮かべながら読みました。様々な光景を楽しみました。あとは、それらの間の連続を求められるようになりたい、と個人的な課題を持っております。
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