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「心外区」
陽の輝きには歓びがなかった。 この廻る世界で色彩豊かに君が消えていく。 閉じた瞼の裏側で光彩が静かに薄まっていく。 それは潮解しつつある宝石のように。 突き抜けた夕空を、現実に絆された青白い星が今日も落ちている。 境界線を超え、水平線のその手前で一人で寂しく彷徨っている。 残光が風を渡している。数フィートの草木が香っている。ジェードの大地は音も無く笑っている。 沈黙が過ぎ去っていく。 こう囁いてくる、 また仄めかしてくる、 そして唆してくる、 君の輪廻の車が壊れ始めていると。 ギルモアは片の手で顔を覆い隠していた。 影の落ちた顔が誰にもわからぬようにと。 加速度的に頬を伝う雫を落とすまいと。 補足: 沈黙を言葉にしたとき、それはどのように流れるのか。 その問いのもとに、本作は構成されています。 冒頭では、視覚的な情緒を淡々と積み重ねることで、輪郭を静かに象り、 詩行全体には律動と伸縮性を持たせました。 終盤では、固有名の唐突な出現によって構造に緩急を与え、 意味ではなく構造が感情を帯びていく展開を意図しています。
「心外区」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 642.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-05-14
コメント日時 2025-05-14
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


初めまして。 意図を拝読したのですが、 あまり良く分からなかったので、 勝手に解釈させていただきます。悪しからず。 ギルモアと言う名前が出る前に、 ジェードの大地とありましたので、 日本ではないな、と思いました。 何となく、イギリスを連想しました。 「沈黙」を意識づけたいなら、 >君が消えていく の箇所は、余計な記述かと思います。 緩急は、「ギルモア」という名前以前に、 >こう囁いてくる この連が変調子になっており、 この連が緩急のスパイスになっていると思います。 構造が感情を帯びていく。 >こう囁いてくる この連は、構造でもあるのですが、 「輪廻」と言うひとことを、意味として見逃す訳にはいかず、 実験は、半分成功、半分失敗といったところでしょうか。 ただ、とても勿体ないのが、この補足。 この補足がなければ、一票間違いなく入れたいのに、補足が邪魔をしています。 勿体ない作品です。 ありがとうございます。
1コメントありがとうございます。 まず、 舞台となる場所はタイトルにあるように「心外区」です。 僭越ながら、造語のタイトルを付けさせていただきました。意味としましては読んで字のとおりで、心の外側の世界、自分の許容(内心)を超えた、 いわば法治外の区画にて、 中盤までとおして意味消失している語り手が淡々と文体をなぞっていくという構成です。 そしてこの詩で表したかったことは沈黙であり、 唐突に出現したギルモアという固有名詞のその本質は、ただの空白、括弧のようなもので、読み手を一気に俯瞰のまた俯瞰へと誘導するためのピンとして機能させています。故にラストの文頭の走りは別にギルモアという固有名詞でなくともよいのです。 次に >君が消えていく の部分のご指摘ありがとうございます。私自身の > 色彩豊かに君が消えていく。 の文に対しての見解は後述の瞼の裏側で光彩(記憶であったり、今まで自分が過ごしてきた絶対的な時間、真実)が静かに薄まっていく様子への相反する散文であり、文体のリズムやテンポを刻む上での踏ん張りの役割を果たしていると考えています。つまり冒頭で視覚的に躍動させ、以下で徐々に色が薄まる、溶けていく表現を入れることで、そこに滑らかな音律を組み込ませようという意図がありました。 ですが、レモンさんのコメントのとおり沈黙というサブタイトルを確固として枠取るならばややこの文は余計であったと思います。 >こう囁いてくる の部分ですが、レモンさんの洞察力には感服いたします。私が意図したことをこうも的確に看破されるのは私自身とても喜ばしいことです。 > 「輪廻」と言うひとことを、意味として見逃す訳にはいかず 輪廻の車というフィリップKディックの短編があります。そこからの引用として「輪廻の車」という語句を使用させていただきました。 補足に関してですが私自身うまくまとめきれないまま投稿の方をしてしまいました。補足によってよりわかりにくくしてしまったことは反省し次に活かしたいと考えます。 この場を借りて補足の改正をさせていただきたいと思います。 まずこの詩のキーワードは > 沈黙が過ぎ去っていく。 の部分になります。この文章こそ、 この詩の消失点であり、文全体の表現の収束地、そして転換点でもあるのです。 そこから続いて >こう囁いてくる に繋がるわけです。 そして囁いてくるものの正体こそ、心外区(心の外側)で沈黙を貫こうとしている者に対して、内心(欲、記憶)などが囁き、仄めかし、唆してくるのです。 最後にレモンさんにアドバイスをいただきたい部分があります。 > 残光が風を渡している。 私はこの文を気に入っています。この少し難解な世界観において視覚、触覚、に触れることで共感覚的で連鎖的なニュアンスで叙情的に仕上げることができたと思っています。(残光=過去の名残、記憶。風=流れていく今)しかし詩を客観的に通して読んでみると上記の部分の影が薄く感じてしまいます。ここにもう少しだけインパクトを持たせたいのですが、どのようにすれば良いでしょうか。
1なるほど。 意図は大変良く分かりましたので、 一票入れさせていただきます。 >残光が風を渡している 詩的で美しく、佳い表現です。 ただ、際立たせたい1文なら、 私でしたら、手っ取り早く改行し、その1文を浮き上がらせます。 改行しないのでしたら、もっと盛り上げます。 例えば、 >切り立った残光が風を渡している という風に、でも。 これは、面白いので、 機会があれば、他の方々にも伺ってみて下さいね。 ありがとうございます。
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