「わたしの・ぬすまれた・バックは・あかかった」
アメリカのドラマが好きな母が
Google翻訳に向かって何度も尋ねる
英語学習の一貫で、
母は考えたことや思いついたフレーズをこうやって翻訳している。
「わたしの・ぬすまれた・バックは・あかかった」
どうもGoogle翻訳は上手く変換してくれないらしい。
母はいら立ってどんどん声を大きくしていく。
「わたしの!ぬすまれた!バックは!あかかった!」
母のブランドもののカバンが盗まれたのは半年前のことだ。
警察に母は「大したものではないんです」と言った。
フリマアプリで検索したら1,000円で売られていたらしい。
だから被害額は窓ガラス数万円分と1,000円になった。
「わたしの!!」
「ぬすまれた!!」
「バックは!!!!」
「赤かった!!!!!」
母がカバンがないと騒いだ時
家族は勘違いだと思っていた。
なにしろ机の上に乱暴に置いてあった三千円すら
盗まれてなかったものだから
使い込まれたくすんだカバンなど
誰も盗まないだろうと笑っていた。
発覚したのは犯人が捕まったからだった。
・家族には何もなかった、良かった
・犯人も何か事情があったのだろう
(なぜうちを選んだのかを聞く)
・反省したら幸せになってほしい、です
・私のバックは戻らないのですか
(戻らない場合は、どうなるのか)
警察が事実確認に来るといったとき
母が書いたメモだった
「バックじゃなくてバッグじゃないの」
そう教えるとき、喉の奥がズクズクと痛んで少し泣きそうだった。
Google翻訳よ、頼むから母に正しい英語を教えてやってくれと
世界平和を祈るような気持ちで息を吐いた。
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 2566.1
お気に入り数: 5
投票数 : 0
ポイント数 : 17
作成日時 2020-04-22
コメント日時 2020-05-05
#現代詩
#縦書き
#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/14現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 0 |
エンタメ | 5 | 3 |
技巧 | 3 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 3 |
総合ポイント | 17 | 9 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0.8 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.3 | 0 |
エンタメ | 1.3 | 1 |
技巧 | 0.8 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.3 | 1 |
総合 | 4.3 | 3 |
閲覧指数:2566.1
2024/11/14 16時10分27秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
わーすみませんタイトル「私の盗まれたバックは赤かった」です 何度も修正しているうちにチェック甘くなってました…。
2バックとバッグ、それは、ベットとベッド、みたいな…… Google翻訳って、それくらいの程度のものにとどまっているのですね。 ユーモラスで良いけれど、読んだ感じ、軽い情報が長く記述された記事を読んでいるような感じがしました。最後まで「バック」を「カバン」と言って伏せておかなければならなかった作者さんの苦心も見られます。 我々はどうしたらこの作品をもっと奥行きのあるものにできるかを考えないといけないと思う。 同じ内容で、もっときびきびとした詩文にする案は、読者の頭に浮かぶのではないかと思う。 もっとも、作者さんはこの作品を、掌編小説的なものとして出したのかもしれませんね。英語学習と犯罪が一緒になった物語。 「わたしの・ぬすまれた・バックは・あかかった」が繰り返されて、音量も大きくなっていくし、物語の進行感もある。終わりの方、母が書いたメモのところからは、引き締まっている感じがしました。
2南雲さんのコメント、鋭いなあと思いつつも、じつは僕は結構テンポよく読めました。場面転換がてきぱきしているからかな。むしろメモのところは少し?となり、目が前後をうろうろして失速しました。が、エンディングに向けてブレーキをかけるためのトリックなのかもしれません。 音声入力というのもいいですね。フリック入力ができない。英語ができないという背景に、さり気なく膨らみを持たせていて面白いと思います。 タイトルの誤字はむしろ良いんじゃないでしょうか。これは演出であって、グーグル翻訳が聞き取っていたのがこの一文だったのかな、とはじめは思いました。
1>Google翻訳よ、頼むから母に正しい英語を教えてやってくれと >世界平和を祈るような気持ちで息を吐いた。 これぞこれ、安寧を心から求める気持ち。 いすきさんの意見も南雲さんの意見もとても興味深いです!自分は素直に本作品が好きです。全編を通して。 と言うのは、本作品のように小説チック、あるいは物語風な作品は読者側に読み続けることを強要するケースが多いです。 作業みたいになってしまうんですね。こうなった時に作品の奥深さや面白さを感受する力はなかなか発揮出来ず、なんだか長い作品でよく分からなかったなぁ。。。となることがままあります。 一方本作品、そんなことは一切ないと私は感じました。 伝えたいこと、主題はまさしく最終連、何だかやるせない気持ちを吐き出すように願う世界平和。 そしてここに向けた作者(或いは登場人物)への同情を生み出すような文構成。 これは正しく読める作品だと思います。素敵〜!
1感想ありがとうございます!! 教材的に他の人ならどう描くかみてみたかったりもしますね! 私はどうも、まっすぐに見えた事柄を書く方が性に合っているようで。 深かったり鋭かったりするものを作ると、 ゴテゴテに飾り付けたうえに何も面白味のない文章になってしまうのです。 それはともかくとしても、 さらりとしすぎているのは良くないですよね! 何か鋭角から飛び出すものをひとつ、工夫していきたいと思います。
0感想ありがとうございました! メモ、のところはおっしゃる通り、終わりに向けてスピードを緩め、 最後の二列をゆっくり読んでほしかった工夫です。 考えるに、 おそらくここが一番詩として工夫すべきところで、 この文に何か鋭角から飛び出してくるものを入れ込めるのが「詩人」なのかなあ。 と思っております!
1わあい二回ともコメントありがとうございます! わかりやすい文章で、世界平和とか仲良くなりたいとかそういうことを書くのが好きです。 私個人が、こういう散文ちっくなものをどっしりと読めないタイプなので、 ライトで軽く、でもなんかちょっと感じるものがあるなあ。 的なものを目指しました。 ちゃんと伝わったみたいで安心しました。
0平和を祈りたいですね。なんというか、世界の不条理とか言っちゃうと言葉がでかすぎますけど、はい。
0だんだんと強まる母の声、そのリフレインは非常に映像的で、映画にしたら映えそうだ
1母親にとってそのバッグが大切だったことや母親がバッグを「バック」と言っていたことを語り手は知っていたのかもしれないですね。でもGoogle翻訳という世界的基準には通用しないことも知っている。国際的には英語が覇権を握っているわけだけど、母親はそれは違うと激しく抗議して向かって行っているわけだから、同情を寄せつつもたじろぐのは無理もないよね。正しさの衝突から戦争が起こるとしたら、世界平和を祈りたくなるのも不思議ではない。それがよくでている作品だと思う。
0