目覚めて 灰の光
心が止まる
印象が からだをこする
言葉と比べて 扉が閉まる
息をしている 消去法として
突き詰めて言えば 繰り返す 私を
例えば 白い天井を見上げて
地平線の先の檸檬に 爪を刺し込む
砂に埋もれたあなたの腕を きつく掴む
柔らかな小石が 喉元にこみあげる
心は 繰り返す 心を
暗闇の隙間に 落とされた雫
例えば ぬかるんだ背中に触れる 凍えた掌
繰り返すほどに あなたは生きていて
粉となり減っていく 私は 理由を失くして
隕石が 大気圏で燃え尽きる
映像が流れる 音を殺して
私は 絶え間なく 震える
ひとりで 声を合わせて
錆びた鉄橋の 涸れ川のほとりで
夕陽が熔ける 影のない海辺で
力の限り叫ぶ 我を忘れて
人ごみで 立ち尽くす
雲の切れた 空を見上げる
しかし正確に言えば 繰り返さない あなたは
許されない 時間を 潜って
檸檬から立ち昇る香りに
わたしの掠れた声の響きに
部屋に染みた肌の色合いに
ゆらぎながら生きていて あなたは
逃げて
ゆれて
わたしと
ぶれて
目覚めて 水の光
心が動く
生きながら死んでいく 私は
噛みしめる 幸せを
何一つ 繰り返さない
それだけの 私を
ゆっくりと
噛んで
砕いて
作品データ
コメント数 : 16
P V 数 : 1780.8
お気に入り数: 0
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2024-11-09
コメント日時 2024-12-17
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1780.8
2025/12/05 17時43分11秒現在
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例えば、目覚めた朝の朦朧とした時間は、その日邂逅に歩み寄る期待と不安を私たちに与えてしまいます。 なんという曖昧におかれた詩の作りでしょうか。この詩も佐々木ポエムの代名詞でもある、対象として語られる(あなた)との関係性が曖昧な位置に置かれてあります。わたしの中のもう一人の別なわたしなのか。それとも実在としての思いを打ち明ける他者なのか。明確には示されていません。ほとんど場合私は前者だとおもいますけれど。 しかし不思議に浮遊する快感がある。これはできるだけ同類語や間接語、また助詞などの繰り返しに細心の注意が向けられている。その文体の影響も多分に有ると思われます。 作りが曖昧に向けられているので置かれてある単語もこれでなくてもいい。いくらでも当て嵌めることはできるとおもいます。が、しかし何度か読んで気づきました。 この六連からなる詩の作りは五連~六連以外全て文節のあたまに、例えば、~が付随されても読めてくる。 特にこの終わりに向かう五連から六連に流れる朦朧さよ。 朝は脳内を目覚めさせてくれるミント。草花や樹木の葉の香り。柑橘系ならば檸檬でしょうか。 タイトルだけが、例えば、朝で必須になる。 そのような複雑な応えも策略も何もない。力の抜けた作りの詩だと思われるので、ポエムとしてもやはり優を印象付けられてきます。
1灰の光とか柔らかな小石とか涸れ川とか…言葉の選び方や組み合わせ方が独特なのかなー浮遊感のあるそれでいてそんなに不安にはならない不思議な詩だなーと思いましたよーうまく例えられないけど…
1この作品を読んでかつて自分も持っていた『別れ』の後の心の揺れ、自身の揺らぎ、痛み、喪失感、そういった感情が呼び起こされました。(昨夜寝る前に読んだせいか何年も前に別れた恋人が夢に出て来ました。なんかむちゃくちゃな設定で笑えたけど。笑) そういった感情を作品に出来るのはすごいと思う。作品化して昇華出来るのか、はたまた苦しみに浸ってしまうのか、私は後者になってしまうので書かないし考えても無駄なことはその感情ごと消去してしまうのだけど。でもこういう作品を読んで呼び起こされる感覚や感情は嫌いではなくて、何かとても懐かしく大切な感覚として呼び起こされます。それによって自分を見つめ直す機会になるような作品でした。
1あ、上手いなぁ、というのは言うまでもなく。 特に持って行かれたのは >灰の光 >水の光 >隕石が 大気圏で燃え尽きる >映像が流れる 音を殺して あらゆるところ(表現)が素敵です。
1三明十種さん、コメントありがとうございます。 >浮遊感のあるそれでいてそんなに不安にはならない不思議な詩 ふわふわした気持ちで書いたのでそうなったんだろうと思います。不安でもなかったです。それがそのまま出たのならよかったです。読んでいただきありがとうございました。
0メルモさん、ありがとうございます。 仰る通り朝の不思議なこの世界に何も起きていないような気持ちを、あとはいつもみたいに言葉を続けるのではなく、短い言葉で、少ない言葉で書いてみたらどうなるだろうと思ってできたものです。 言い難い浮遊感や快感は自分の感じていて表現したかったものなので、それを感じていただけてよかったです。 >作りが曖昧に向けられているので置かれてある単語もこれでなくてもいい。いくらでも当て嵌めることはできるとおもいます。 そうなんですよね。特に決め手がないので、いつも以上に感覚で言葉を置いていきました。なので、成功しているかどうかの自信はありません(自分ではたぶんこれしかないと思っていますが、読んでる方に伝わるかの自信がないというか)。 書いているうちに、最後は言葉がとけて自分もとけていくような感じだったので、特に朦朧とした感じになったのだと思います。 丁寧に読んでいただきありがとうございます。
0ronaさん、コメントありがとうございます。普段何もないフリして生活しててもそれってやっぱりフリでしかなくてそれまでにいろいろ揺らいできてることの延長線上にいるんだろうと思ってます。 でもまぁそのゆらゆらふわふわしてるのって別に悪いことじゃなくて逆にそれが当たり前と言うか。 夜中に真剣に考えたりするとむむってなるところを朝起きたてだとこのまま寝てていいんじゃないかみたいな感じでまぁいっかって思えるんじゃないかなと思いました。 そういう目覚めって何も起きてないけど幸せだよなって気がします。 > でもこういう作品を読んで呼び起こされる感覚や感情は嫌いではなくて、何かとても懐かしく大切な感覚として呼び起こされます。それによって自分を見つめ直す機会になるような作品でした。 夢まで見ていただく機会もなかなかないですし、その上でそう感じていただけたなは、とても嬉しいです。
0繰り返されるフレーズが波のように美しい旋律となって流れていきました。そして、ゆっくりとした空気感がこちらを包んでくれるようです。近代詩の雰囲気もあるように思いました。素敵。
1きょこちさん、読んでいただきありがとうございます。ゆっくりとした空気感を感じていただけて嬉しいです。
0お手本にしたいような詩だと思ったのですが、中身のない批評なのかもしれません。しかし票を入れて行って、偶然ですが10票目(10作目)にこの作品に出会えてよかったと思います。イメージがそぎ落とされて、簡潔化して行く過程がこの詩には隠れているのかもしれません。
1エイクピアさん、コメントありがとうございます。 中身も見た目も凝った感じがないので、たぶんつまらないと思う方にはつまらないのかもなと思いながら、実は自分の中でかなり好きな作品だったりするので、そう言っていただいてうれしいです!
0評価を言語化するのが難しい不思議な作品です。最大の特徴は、「これだ」と引きつけられるような目立ったフックが存在しない点にあると思います。物語が単線的に進行し、リニアな時間軸に沿って展開されているため、ダイナミズムがあまりない。この構造が、作品全体に掴みどころのなさを感じさせる要因となっているのかもしれません。読者は「とっかかり」を求めて彷徨いながら読み進めますが、その間に物語がすっと終わってしまう。佐々木春さんの特徴の一つですね。 一見すると、これはままならない現実を生きる話者の物語ですよね。話者の視線の先には、詩的に抽象化された「あなた」が存在している。その「あなた」こそが心の拠り所でありながら、その拠り所が徐々に失われていく様が、作品のコアになっている。その喪失の過程で、目覚めにも似た実存性を越えた「時間」が紡ぎ出されていく。 「檸檬」は何を象徴しているのか? そこに込められた強い思いだけが、信用できると思いました。また、佐々木春さんの作品に共通する「疎外感」も健在?であり、この要素が作品の核を支える一つの特徴となっていると思います。
1>そこに込められた強い思いだけが、信用できると思いました。 →そこに込められた強い思いは本気で信用できると思いました。 ...です。いそいで書いて変なコメントになって申し訳ないです。
1おまるたろうさん、コメントいただきありがとうございます。 「これだ」と引きつけられるような目立ったフックが存在しないというご指摘、その通りだと思います。これの前の「ホイール」で少し長くて構造的なものを書いたので(意識して書いたというよりは結果としてそうなっただけではあるのですが)、思いっきり企みのない感覚的なものを書こうと思ってできたものです。 自分としてもこれはコメントしずらい作品になったなと思っていたのですが、案の定、あまり多くの方にはコメントいただけなかったです笑 わたしとしてはかなり気に入っているのですが、いつも以上に「何もない」ことは否定できません… そうですね、檸檬だけが手にとれる「何か」ですよね。すべてがぼやけている中で一つだけ輪郭を持っているというか、そういう企みのない何かを求めているのかもしれませんね、自分でも他人でもない何かを。 >話者の視線の先には、詩的に抽象化された「あなた」が存在している。その「あなた」こそが心の拠り所でありながら、その拠り所が徐々に失われていく様が、作品のコアになっている。その喪失の過程で、目覚めにも似た実存性を越えた「時間」が紡ぎ出されていく。 このように読んでいただけてうれしいです。自分でもあまり気が付かなかったですが、確かに「時間」が結構大切な意味を持っているように思いました。 丁寧に読んでいただきありがとうございます。
0本当に美しいですね 恋愛の詩だと思って読んだのですが 静謐なエキサイトメントとでも言うべき 調律された情念が丁寧に配されていて さすがはポエム巧者の春さんと言ったところ なにより書かれてるイメージが澄明で読んでいて 夢の世界に連れて行かれてしまうような感じがします けっして言いすぎてないのでシブい雰囲気なんですがやっぱり全体見渡しても 端正でかっこいいです
1天才詩人2さん、ありがとうございます。こういうキチンとしたコメントいただいたのなんだか初めてな気がします笑 いつもの長いやつと違って、目覚めたときの光の感じがふと浮かんで、そこから書き進めたらこういう感じになりました。 あまり自分らしくないというか、自分でもこういうの書けるのかと思って気に入ってます。 とか言いながら今月の作品はまた長いやつをつらつら書いたりしてるわけですが笑 静謐なエキサイトメント、夢の世界に連れて行かれてしまう、そんな風に読んでいただけてとてもうれしいです!
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