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4625kHz
高架橋を潜ると光が収差した 重金属が生成するチャフの回廊のなか 僕以外の生命体がひとつ揺れていた ぼやけたそいつは歪んだ足取りで距離を詰めてきては 世界を震わせたのだ 天気はどうかね。 揮発性フェノールとカドミウムのせせらぎが聞こえる おおよそ3241.729メートルほど先のそこではなにかが溺れている 暗く狭い共同溝をぞろぞろと逃げ出した向こう側は ステルス加工の施された虹の橋へとつながっているのだろう そうだ、パンがあるぞ。 老人の手のなかの黴のないそれには傀儡の印がなかった ポケットのなかのラジオは東欧訛りがひどい とくにそれは濁った雨が降りはじめるとき 質量欠損により熱エネルギーが放出されるとき 堕落しきった殺意を向けられたとき 裏切りのない善意を向けられたとき ‘R’を震わせるのだ この先にいくのかね。 杏子のジャムは どろっとしていた 瞳孔、認可。虹彩、認可。水晶体、不全。硝子体、寛解。網膜、検閲中。 異常屈折か未観測波長か塩分で滲む老人は、激しく明滅する電波反射体のなかで笑っている とんでもない光の、暴力だ 世界中の光をかき集めたとしても足りないだろう この暗く澱んだ橋の底が天国だったとしても、僕は疑わない 僕は委ねよう 僕は救われよう 僕は、正しかったのだ 128.59メートル先のフランス趣味の椅子 パイプを嗜んだままの骸骨を蹴り飛ばした 僕はそこに腰を落として文を結ぶ 言い忘れていたことがあったから 上空725.982キロメートルに位置する電離層を反射して明日の夜には届くだろう アンテナは南南東に、仰角は36.5661度に 周波数は君が好きだったピザ屋の電話番号の末尾4つ 東の空が眩い 道端ではカミツレの花が初夏の風に揺れている 時間があまりないのだろう 連鎖反応のぬくもりのなか あれの花言葉は、和解 僕は 不完全となった
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4625kHz ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 279.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-12-26
コメント日時 2025-12-27
| 項目 | 全期間(2026/01/12現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


作者さまには失礼かもしれませんが、 この詩の内容というよりはこの詩を解釈していく 過程がわたしには案外おもしろかったです。 一言で言うと 情報の解像度は高いが、情緒の解像度が低い、定型的な アニメ的セカイの構造を垣間見せてくれたという点では なかなかの力作というか、セカイ系アニメの教科書のよ うな詩でした。 最初「4625kHz」というタイトルを目にして、 (「どうしょう? こんな難解なもの読めるかな?」) と少し尻込みしました。中卒ですからね、 実際、わたしには苦手な科学系の精密な描写がつづきました。 例えば、 質量欠損により熱エネルギーが放出されるとき というのは、これは核爆発の過程そのものです。精密です。 なにか悪魔の化身か、父性の象徴かわかりませんが、老人 が出てきて、 老人がポケットに入れたラジオが東欧訛の‘R’を震わせるのだ という描写も正確です。ロシア語など東欧語の特徴はRの巻き舌に ありますからね。まあ、最初から精密です。「4625kHz」と いうタイトルもロシア語放送のひとつですが、ふだんは 雑音ばかりですがときたま何やら暗号らしきものを放つらしい。 なにやら意味ありげです。 そういった精密な距離を測って語る僕がアンドロイドかも しれませんが、そういうことはともかく、これだけ情報が 精密なのにカミツレの花言葉を間違えている。 カミツレの花言葉は「忍耐、我慢」です。「交際」と いう意味もあるらしい。しかしそれが「和解」と解釈できる だろうか。できるかもしれないしできないかもしれない。 そこは曖昧だ。つまり冒頭から順次末尾にゆくに従い、 だんだん情報が人間的なものになるほど不安定で曖昧になる。 そのせいかどうか知りませんが、りラスト、 僕は 不完全となった のですが、えー、──どうなんでしょう。 この結末の定型的なセカイ系アニメ風の収束は。なにか とってつけたような面白さを感じたのですが。 そう考えると、ロシアの侵略的な国家姿勢が世界を危機に 陥れていることを批判するような文言も定型的に思えて くるのです。 おそらく老人とのパンのやりとりがこのセカイ系詩物語の ミソなのでしょうけど、アニメの一風景としては面白い。 いろいろな解釈が出来るし、意味もこめられているのでしょう けども、それはあくまでもセカイ系アニメ物語の一篇としてで あって、思想や批評としては残念ながらあまりこちらに 届く質量が不足しているような気がしました。 こういうの、これからどうなるのでしょうね、いろいろ気に もまされる詩でした。
0さらに精査してわかったのですがカミツレの花言葉の中には 「和解」もありました! わたしのミスです。 作者様には伏してお詫びもうしあげます。 そうするとこの感想は全部、差し戻しということになりますね。 とほほです。申し訳ありませんでした。
0いえいえとんでもないです。 なにぶんこういうのを書きたい年頃で。あとから見返して、きっと枕に叫ぶんでしょう。右手を押さえながら。 ありがとうございました。
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