かなわない
幾つか熟れたトマトをもいだ
万願寺とうがらしが
風に手を引かれて
畑の畝が陽炎に波打つ夏のなか
私たちはすべてなにかのなかで
でていくことはかなわないんだ
夏は飽和して蝉が溢れだすけれど
蝉を飲み干して蝉になったとして
近い未来に腹を上に果てる、蝉だ
手紙を書いたメールでもLINEでもなく
手書きで伝えることが誠意だと
勘違いしていた、デカくなり過ぎた
キュウリみたいに機会を逃してしまった
そういって彼は熟れすぎたトマトに
突き立ててしまった指を舐めて
僕は大きくなった胡瓜をもぎ籠におさめる
どうしたら どういえば正解になるのかな
蝉でもいいよ どうせ食われるんだ
大きくなり過ぎた胡瓜なら
硬くなった皮を剥いて、
一口サイズに切り分けてたっぷりの
かつお節で煮込んでやればいい
冷蔵庫で冷やして皿に盛りつければ
暑くなり過ぎた身体を冷やしてくれる
一緒に食べよう、食べられよう
蝉も、人も、でていくことはかなわない
そんな夏の畑で、かもしれない、から
陽炎にゆれる彼の背中をみながら
考えている、いつか共に死ぬ蝉の声と
一緒、不確かな気持ちがいつか
形になれば、とまるで祈るようにシに向かう
作品データ
コメント数 : 2
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作成日時 2025-08-10
コメント日時 2025-08-12
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 平均値 | 中央値 |
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| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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2025/12/05 19時00分20秒現在
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こんばんは、 >>蝉が溢れだす、 >>蝉を飲み干して蝉になったとして この表現が印象的です。 手書きの良さ、温かさ、いいんですけれどね。僕は手書きも好きです。
0私も手書き好きですよ。癖があって。
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