お知らせ

陳さん   

作成日時 2018-02-08
コメント日時 2018-03-10

工場の流れ作業がはね僕らは毎日 眩しい真夏の西日を受けアスファルトの上 目を細めて自転車で駆けていった (あなたが話しかける (何度も僕の名を呼ぶ (すっかり黒くなった (くしゃくしゃの丸顔 (片言でない日本語で 帰路の途中で公園に立ち寄り 木陰のベンチに腰掛けデカビタCを握りごくごく 二人して喉へ流し込んだ そびえたつ大樹の緑がてらてらと風に輝いた 同じ誕生日だった僕ら 陳さん今も あなたと過ごす時が楽しかった。 研修に励んでいた数人の若者たち 同郷であるらしくここぞとばかりに話しかける 皆がニコニコと大きな声で水を得た魚のようになって 姿の見えないあなたはいつしか中心となり 小さかった波紋の輪がつながり大きな輪となり 僕はあなたを羨ましく感じていた。 通訳の仕事を求めて移住し 一人の日本女性と家族を築き暮らしている 男性への求人はなく職を得ることができないでいる そう言ってあなたは嘆いた 小さな目の瞼を閉じ 太陽のような丸い顔が曇り 沈黙となった。 工場での小休止の時間 一人座りこみうなだれたまま震えていた 呼び掛けることができなかった僕は ただ見つめるだけだった。 陳さん 日本は優しい人が多い、 とてもよいこと、 けれど主張をしないではダメ! 中国で病気だよ、 変人扱いされる、 ますます大変だよ、 あなたは言った。 月日が流れこの国のあちらこちらで 雨後の筍のようにあなたの母国や同胞へ向け 毅然と声を上げる人々が現れました あなたは いつか僕に語ってくれた夢を叶うべく 余所へと去ったでしょうか 風が吹き荒れるどこかで 慣れない作業に従事しているでしょうか。 喋り 笑顔が素敵だった 優しかった陳さん。


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2019/09/16 05時33分51秒現在
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コメント数(6)
まりも (2018-02-19):

詩の背景を問われて、その時の思いなどをモロモロ話したら・・・いま、話しているように書いたらよかったのに、と言われたことがありました。 その時のことを思い出しました。 手紙を綴るように書く、語るように、話しかけるように書く。 そのような流れの中で、いつしか、歌うようなリズムが生まれたら、そこで筆を止める・・・。 陳さんに、この詩と思いが、届くといいですね。

藤 一紀 (2018-02-20):

海外の若者を大量に、そして比較的安く雇用するというのは国内外に対して、政治的経済的メリットがあるということで、取り決められたのでしょうが、家族がたくさん故郷にいて、正月も帰れない(帰ったら怒られる)というひともいました。作業を眺めている目の前で「イー、アール、サン、」と手順を追いながら見せてあげると、「中国語しゃべれるか」と驚きつつ、目を大きくしていた。 一方で、難しい試験を受けて、「ファミリー」と国の支援を受けて、留学していた方は、明るく礼儀もよかった。 そういう人々が暮らしやすい社会であれば、と思いました。その点では、優しい語りの中に社会批判をうかがうことができます。

弓巠 (2018-02-22):

 近しい人間に中国系の人間がいるもので、この詩に関しては、ちょっと感傷的になってしまいますね。もちろん、国と国の間に問題はあったりするけども、中国人や韓国人に対して偏見を持っている人たちも、彼らにとっての「陳さん」がいたなら、もっと違うだろうに、と思います。  陳さんと若者たちの交流が、波紋として語られるのが、とても好きです。人間関係は、どこか、波紋に似たものだと、実感として思うからですね。

百均@B-REVIEW ON/ (2018-03-07):

陳さんを通じて読み手に訴えかけてくる物がありますね・・・個人的にはお三方の感想である意味出尽くしてしまったものだと思うのですが、なんというか理不尽という物が描かれる度に、その理不尽がなぜこのような作品になってしまうのかという事を考えてしまいますね。基本的に、理不尽というのは自分の中にある理が効かない所に作用すると思うので、例えば日本の就活はやっぱり他の国から特殊に見える訳ですけれども、日本からすれば他の国のやり方の方があかんのかもしれません。 多分陳さんという人がこの詩の中に立っているからこそ、この詩は成立していると思います。ただの中国人ではダメですね。陳さんだからこそ、意味があるというのか。故に多くを語らなくとも、その背景に思いをはせる事が出来るので、多分僕は考えてしまったように思います。

湯煙 (2018-03-09):

※大変遅くなってしまい申し訳ありません m(__)m ・まりもさん ─いまはなしているように、─なるほど。・・・なかなか気がつかない、気づけないことかもしれません。難しいですね。それでは日記やつぶやきと同じでは?とも思いますし。だから詩は深い表現が可能とも思わされ。 リズムについてはまた様々に考えてみる必要はあるかと。ありがとうございました。 ・藤一記さん 技能研修の名目でその実使い捨てのように扱う、そうしたことが陰に陽にまだまだ多いのでしょう。先進国の名が聞いて呆れますね。私も陳さんから少しばかり言葉や発音についてレクチャーを受けましたが、そうしたことを思い出しました。この工場だけでなく他でも中国から来た人たちがいましたが、しばらくいますとやはり挨拶や笑いなど、自然に生まれるようです。ともに協力し作業なりを行う機会は貴重かなと、そんなことを思います。ありがとうございました。 ・弓巠さん やはり言葉、言語が一番に大きい要素かなと。陳さんは日本語も発音は微妙ですが会話をできるほどに話せる方でしたね。またお国の言葉での会話も可能である、そうした背景がありますが。どうしても会話ができないとなると、なかなか雇用なり付き合いなりを躊躇してしまうのだと思います。身近に存在しており、また出会う機会を得ればそれはそれでかなり大きいことだと、そんなこともまた思いますね。 ありがとうございました。

湯煙 (2018-03-10):

百均@B-REVIEW ON/さん。大変遅くなってしまい申し訳ありません m(__)m そうですね。少しばかり詰め込みすぎたものになってしまった、そんな感じもします。必ずしも陳さんをめぐる情況について云々という、そうしたものでもありませんでしたが、バランスを欠い た作り込みになっているのかなとはあらためて思いました。例えば通訳希望者は女性が雇用されやすいとは仰っていましたね。勿論年齢や能力もあるかとは思いますが。 日本の就活は特殊なんでしょうか。知りませんでした。諸外国はまたおおいに違う部分があるんですかね。 陳さんがいなければ作品も成立しませんし、生まれることもなかったとは思いますね。出会いは大きいです。ちなみに陳さんとは数年後に再び偶然再会しましたが(笑。変わらずお元気そうでしたのでほっとしました。 ありがとうございました。

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