「渋谷は
火球がふっているから行きたくありません。」
シーン1
小学生の格好で言った。
朝、剃ったはずの髭がうつりこんでいた。
「若さ」の猶予がどうしても短い。
地べたを這いずり回り
四足で走る事を覚える時間が長い。
という事実に異論があるぞ。
と、強がれるくらい
いつまでも「若々しい」くせに。
シーン2
渋谷のホテル街
命がけのプロポーズのシチュエーションで
言う。
監督以下、スタッフ15名に
トマトを投げつけられる。
もちろん僕があとで全部、
おいしくいただきました。
きみの投げたトマトだけ、腐っている。
かじった。かじると、
「火球?」と、
はじめて煙草を買いに行かされた時の、
銘柄を店員さんに聞き返す、
あの顔と間で固まった。
食べきった。
おなかはちゃんと、こわれた。
シーン3
深夜アニメの美少女の設定で言った。
今度、正式にデビューする事になりました。
同時期にデビューする
きみが「おめでとう。」と言って
毒リンゴだと思われる
果物の詰め合わせを差し入れてきた。
おいしくたべられるだろうか。
なにを ためされているのだろうか
なにかを いつもためされているな、
ためされている事だけは確実だ。
エンディングテーマが流れる。
これ、ぼくがうたうの?
地獄の夏合宿を通過しても
なじまない僕のテーマソングって
いったい、なんだ?
適当にしゃべり続け、
適当に勘定を済ませ続け、
適当にながれ続ける僕たちの口から
「優勝」の二文字が刻みつけられたサイコロ
が転がりだす日がくるのだろうか、と
夜中、考える
僕の器官に、誠実さがなかったら、なかった
としたら
どうしよう。
胃袋は鳴り続けるだけで、ここに「誠実さ」
があるとは思えない。
腹が減れば鳴り続ける器官に
僕たちの欲する「秘密」が
隠されていなかったら
どうすればいい。
そういえば
流れ火球は、流れ星や花火のように
なんていうか、きれいというか、こころが晴
れるような、爽快なものではないのですね。
たとえるなら
小学生が習字で「APOCALYPSE NOW」と書
く、そんな刹那の辻斬りばしりきったイノセ
ンス、これ以上イノセンスさを醸し出す事が
できないような凄みのあるルサンチマンが頬
をスローモーションで、かすっていくような。
その気になればいつでも殺せたんだというよ
うな、そんな残業のついでのような、でも、
だからこそ一番の殺傷力をもっている、浅黄
色の、まちがった正義の匂いがするのです。
「すべて、あなたのためで、
わたしは、
ワトソン君をやればいいの?
私の手記では
あなたを「正確」に
「歴史」にはめていけるか
自信はないけれど。
報酬は高くつくよ。
他人の時間を、
ただ、だと勘違いしている為政者が
「生きている間」ずっと、玉座に座り続けて
いられないように
「報酬」は高いよ。
で、どこにふりそそげばいいの?」
あなたの「中身」を押し出す穴を
押し出す時、
あなたの「アウトプット」から
ぬるとぽ、ぬるとぽ、出てくるサイコロは
7や15などの
ちゃんと予測がつかないよう、
悲しいくらいに一貫性のない数字を示す
あなたの根っこに
水を、あまりきれいでない水をかけるのか
煮沸はする、煮沸はする
その下ごしらえが、
細菌しか、とりのぞけないその行為が
あなたのこころにふれるのだろうか
煮沸はする、煮沸はする
そして、あまりきれいでない部分、
(が、を、に、)(かける。かかる。)
「そこまで、裸になるとは思わな。」
「(わなわな。)」
「そこまで裸になれとは言ってないっっ。」
「つつつっっっ。」
「逆に、どこにふりそそげばいいと思う?」
火球は、ふっていて、あたりそうであたって
いて、ぼくはきみをまもろうと
きみのほうを ふりかえるけど
電光掲示板に映る僕は、
将棋であまり見る事のない
一番弱い駒の動き、だな、と思う。
「いつまでも
死ぬまで他人事になってしまったものはある
でも いつまでも他人事にしていたら
自分の時にセリフを言えない」
たぶん
あの「渋谷」というのは
渋谷区の中には収まっていないんじゃない
だろうか
住所の話を、今、していない
だって「渋谷」と口に出す時の
人の首に浮かび上がる動脈は、少しだけ
血液が血の量が わだかまるよね
なにか 得心いかないなにかが「渋谷」には
あって、
「渋谷」は呪詛のひとつだから、っていうの
もそりゃああるんだろうけど、
「火球?」に出会った時のように
凝り固まる
「YOUNG」の綴りを変えてしまえば
ただ老いていくだけだと
信じているサイコロは単純明快、明朗会計、
1から6までを出し続ける
その安心感を抱く。
その安心感が乖離しないように
ぼくらはそれ用の「契約」を結ぶ、むすぶ、
結ぶ
ほころびをごまかすために
あくまでも
「契約」がしっかり甘くなるように
蜂や、ホテルや、「契約」や、麻酔を
しぼったものと、混ぜる
利他的にみせたのに、
バレる傲慢さを、焼却するように
「で、どこにふりそそげばいいの?」
と、口をひらきそうになるから
ぼくは、かたまりきったコンクリートのよう
な冷たい温度、
人として
(人という文字の支えない方の)
人としての適当なつめたさで、
きみの口をふさぐのだろう。
僕が きみの行方を追えなくなるように
(わざとだ。)
君が想い出のように僕のつき続ける嘘の
とても、つまらない一部になってしまうように
「いいわけ」をしながら
コーティングをほどこす
死んでしまう何歩か前に気づいてしまう前に
肉汁があふれて、
(苦そうに見える。甘いわけがないのだ。
歴史の改竄ごときで、それを甘くしようだなんて。
歩けば、足の裏が汚れていく事を、
知らないわけないじゃないか。)
垂れ目の君の潤んだ部分たちから、君の中身
が肉汁になって、したたり落ちる
次の次の次の夜。
「REST」と「STAY」の意味を片言で聞く。
「約束か、秘密、守れるの?」
片言て聞き返される。
からい。からすぎる。
赤いサイコロが、どろり、どろり、落ちる。
500ミリリットルのペットボトルが足元に
落ちれば
逃走するには、ぎりぎりの
動きづらい靴を履いている事に気づく。
本を閉じるように耳を閉じる事もたやすい
閉じたまま
「きみをあいしている。」と言ってみる
うたうように、言えない言葉など
酸素に遮断されるほどに脆弱きわまりない。
耳を閉じている と
普段、言葉を記号として発さない下半身が
しゃべる事に気づく。
それを絞った時に
「誠実さ」をどれだけにじませるのか
それはわからない
わかりたくない
しらないほうがいい
ためすのか、ほんとうに
まちがえてはいけないものを
うたえるだろうか?
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 807.5
お気に入り数: 0
投票数 : 8
ポイント数 : 0
作成日時 2025-10-22
コメント日時 2025-11-20
#現代詩
#縦書き
#受賞作
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:807.5
2025/12/05 20時19分23秒現在
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うむむ、火球とは何を意味するのだろう。 一瞬で発火してしまう厄介なモノ。 渋谷。 地方暮らしなので、 なかなか巧妙な言葉も出てこない。 内容なんかどうでもいいさ。と、 言わんばかりの力技ですね。 リズミカルに躍動するメリハリのある独特の文体。 なかなか一朝一夕には書けません。 縦書きでよかった。 これが横書きならば、チョッチうんざりとするかも。 役者が感想をこじつけるように、 内容的にはすっからかんとわかりませんが、 この気合いには唸ります。
1おはようございます。 長い文章の作品、読んでいただきまして ありがとうございました。 内容として、まとまったのか、どうなのか 書いた僕ですら、見失いがちになりそうですが、気合いだけでも伝わったのは いい事だと、思いたい、だなんて思いました。 意味合いといいますか、抽象表現でありますし、説明するのは無粋ではあるのですが、 実際、渋谷のホテル街を歩いていて、 そこの散らかった、空気やら、 漏れ聞こえてくるものを 僕なりに活写したい、と ぼんやり思ったところから イメージして、作っていきました。 だから、僕自身、この作品に対しては 時間をおくにつれて、印象が多少、違ってきたりします。 (書いて、半年しか経っていませんが。) 自分が後々、楽しむために、わざと 情報量の多い、乱雑なものを書き散らすところがあるのかもしれません。 なんか、妙な事を書いてすいません。 ただただ、読んでいただきまして ありがとうございました。
0失われた渋谷…を求めて。ひと昔前まで、私は渋谷によく出没するのですが、歩いている姿を見た目撃者たちの証言を整理すると、ウヒョウヒョ笑って「死ね!」「ブス!」などの暴言を吐いているか、顔を真っ赤にしてキレてるか、あるいは突然走り出すかの3パターンらしいです。 と、個人的な話はさておき、重層的な内容ですけど、案外、シンプルに「渋谷」の話なのかもなと思ったり。肌感ってやつですね。 ともあれ、重要な作品なのは確かです。
0おはようございます。 なんだか、渋谷、緊張するんですよね。 僕も。 昔、渋谷のセンター街で働いていた事もあるのに、遊びに行くにしても、 なんだか、自分は「住民」ではないものな とか、なんとか思ったりして。 「住む」というよりは「異人」として 街と、人々の蠢きというのを 文章にしたのかもしれません。 長い文章、 読んでいただきましてありがとうございます。
0火球と契約。特に火球は全編にわたって出て来るので、注目しました。私事ですが、夢の中で、火の玉が出て来て「鈍いよ」と、「呪いよ」だったのかもしれませんが、言われたことがあって。言われたというか漂っていたワードなのかもしれませんが、何か何とも言えない雰囲気が四月の雰囲気と相俟って漂って居た様な気がするのです。常識的に考えれば、火球と来れば、逃げるみたいなワードが浮かんでくるのですが、火球の火球たるゆえんを考えたくなりました。あとほかには渋谷やアポカリプスですかね。渋谷のホテル街とか詳しく調べたくなりました。
0こんばんは。 ワードが漂う夢。 「鈍いよ」と「呪いよ」 どういった心持ちで漂っていたのだろうなあ、などと考えていくと これを起点に作品が出来そうですね。 渋谷のホテル街が、今、どんな感じに なっているかは、わかりませんが やはり遊園地然としているのでしょうか。 何事にも、詩情を見いだしていきたい、 今日この頃。 今年も残るところ、あとわずかですが 精進していきたいものです。 作品、読んでいただきまして ありがとうございます。
0とても面白いと思いました。 途中から難しい内容で戸惑ったけど、大満足です‼︎ 頑張ってください
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