粒々の憂うつが、
君の肌を爪と一緒になぞる。
割ったオレンジの果肉からは、
何にも染まらない流星群が、
零れ落ちてくる。蛇口から覗いたのは漆黒。
プツリと切れるノイズ音、お腹が空いた?
それとも静かに眠らせてほしい?
僕が妙に優しいのは、狂った野犬が寡黙だからだ。
フィナーレは不意に夜空から落ちてくる。
愛でさえ、顔色一つ変えずに、
僕らの前を通りすぎる。
そんな時、そんな時は、
君が誰でもなければいいのに。
君が誰にもなれなければいいのに。
君が何ものにもならなければいいのに。
まばたき、シック、痙攣、そしてそれ以上の。
僕らは結局20世紀末から一歩も動けずに、
ベッドの片すみでうずくまっている。
ポップシンガーのポスターは焼け落ちて、
焦げた掌と一緒に、墓石に飲み込まれていく。
美女から相手にされない怪人は、
狂気のジョーカーになるしかないなんて、
それも滑稽な話だろ?
君は?君はどうしたい?どうなりたい?
何か言いたいことはないかい?
誰にも口止めなんてされてないよね?
何か抱えてるものがあるなら、
今ここで吐き出してほしい。
ありあまるピザを目一杯食べたあとでもいいから。
僕も、君も、昨日から一睡もしていない。
ずっと興奮していて、目が冴えたまま夜を過ごした。
僕には何もわからない。
僕は何も手に入れない。
僕は何ものにもならない。
ただ一つわかるのは君が必要としているのが、
僕だということ。
光が、素通りしていく、空気のように溶けていく。
墓碑に遺した名前でさえ、
誰にも構われることなく、消えていく。
インターフォンを鳴らすのは、
きっと君が昨日捨てていった君自身だ。
スーパーマーズの夜に降りてくるのは、
途絶え切った音と、歓喜かもしれない。
絶叫や騒ぎ声、あらゆる騒音も、
流れるような旋律も消えたあと、
残るのは、
焼け野原。
作品データ
コメント数 : 13
P V 数 : 1330.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-02-14
コメント日時 2025-03-09
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:1330.8
2025/12/05 22時08分54秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
初めまして。 狂ったように 「愛してる愛してる」と泣いて叫んで抱き締めあいたいひとがいました。 ありがとうございます。
0タイトルが良かったですね。ド・ゴールに「墓は必要不可欠な人々でいっぱいだ」という言葉があって、タイトルはそこからインスパイアされています。詩中に墓という単語も出てきますし。 内容的には男女間の渇望という印象にレモンさんには止まったのかなと思うと、残念でなりません。
1おはようございます。 それは申し訳なかったです。 一応は考えたんですけどね。 「何でド・ゴールの遺言なんだ?」って。 ド・ゴールと言えば、フランス人。 御フランス?ベル薔薇? 私、どう考えてもイギリスの方が好きだし。 と思って。 調べようという気が全く起きなかったです。 もっと「墓、墓」連呼してくれてたら、 「なんでド・ゴールでお墓なんだ?」って、興味を持ったのかもしれませんが。
0そうなんですね。それはどうも。レモンさんてどういう方なのかな?と思ってコメをある程度チェックして行ったんですが、コメ数が多いことに加え、なかなか一癖ある方だな、という印象を覚えました。これは蛇足に過ぎませんが。またこのレスには返信は不要です。あしからず。
1>君が誰でもなければいいのに。 >君が誰にもなれなければいいのに。 >君が何ものにもならなければいいのに。 もう10年くらい前に、けっこう仲が良かった女子高生の女の子がいたのですけど、コロナ過のときにTikTokでフォロアー60万のモンスターアカウントになっちゃって、同時期にフェースブックの交信も途絶えて、ずいぶん遠いところにいってしまって、切なくなったことがあったんですけど(きもいおぢさんですね...)そのことをちょっと思い出しました。 愛の謎そのものに迫ろうとしても、けっきょく始まりもなく終わりもない。謎を解くことは一見、救いにも思えるが、実は恐ろしい虚無や崩壊をもたらす可能性を孕んでいる。逆に、それが解き明かされることで、これまでおしつぶされてきた何かから解放され、新しい何かに辿り着けるかもしれない、そういったなにか緊張感があるように感受しました。闇という闇をぬぐった光の世界。その先になにがあるんだろう?
0言葉の選び方がやっぱり上手だと感じます。それぞれの言葉と言葉が遠かったとしても微かに重なっている、うーん、引力の圏内を回っている惑星の、遠いところを選び取れるセンスといいますか。 これが出来れば、作品のまとまりを保ったまま、どんどん世界を広げられますね。広ければ広いほど差が生まれて快感を生み出せます。でも、繋がりが完全に途切れさせてしまえば、その裂け目で濁った違和感が生まれてしまいます。もちろん、濁りも濁りで楽しいんですけど、読み進めやすさを作るなら繋がりがあった方が読み手は楽ですから。この文章量ならなおさらでしょう。純粋に読む事を楽しめる作品だと思いました。 ただ、言葉選びはセンスなんですよね。真似しようと思ってもなかなか難しいのです。 内容の詳しいところの感想はもっと詩の技術を持った先輩方にお任せしたいですね。色々な方の感想を読んでみたい。 遺言しては妙に生々しいと思ったんですけど、遺言って生きているうちに書く物ですから、それはそうかと今さらながら発見がありました。どれだけ熱を感じたとしても、最期の言葉に変わりはなさそうですけども。 焼け野原。野原かぁ。 2周目、3周目と繰り返すとき、読者として同情が生まれ、想像する世界に色を足してあげよう音を流してあげよう感情を乗せてあげようとして、断片的な言葉を拾い集めたり、時々留まったりするんですけど……ね。焼け野原。最後は走馬灯のようにも感じられました。
1おまるたろうさん、コメントありがとうございます。今回もおまるたろうさんからコメントが入って、読むのが楽しかったですね。知らず知らずに近しかった人がビッグになるってあるあるですよね。ちょっと複雑な気持ちになるのも分かります。愛について深く追及しすぎるのはタブーというか、虚無に陥りさえしなければ良しとするところが僕にはあって、一番僕が嫌悪したいのは芥川龍之介さんみたいに、「愛とは性欲の詩的表現である」みたいな境地になることなんですよ。悪いけどこの点では巨匠さんは間違えましたね笑 闇という闇を拭った光の世界。けいせいさん(stereotype2085)そういうの大好きだよ!闇の果てに残るのはひと粒の光であればよいのですが。パンドラの箱のように。
0千才森さん、コメントありがとうございます。言葉の選び方。自分で言うのもなんですが、本当に僕は言葉に対するセンス、感度というものが子供の頃からあって、一時期はそれにあぐらをかいて失速してしまった時期もあるのですが、磨き続ければ千才森さんのような人にあらためて見出されるということが分かって、とても嬉しかったです。焼け野原。焼け野原なんですよね、なぜか。いや、実は最後「静寂」だったんですよ。それじゃ凡庸だなあと思って、僕がやり尽くしたパターンでもあるし。じゃあ荒れ地で行こうかと思っていたところ、いっそのこと焼け野原にした方が大胆で想像力も膨らむ。そう思って「焼け野原」と実験的にしてみました。美しいのは静寂とか、永遠、なんですけどね。焼け野原、荒廃したその場所にも人間の光る営みの名残があると考えるとなかなか深いんじゃないでしょうか。
1全て言葉で駆け抜けた後に残ったのはただ「焼け野原」、このやり切れなさ、無常感が良いですね。
0秋乃さん、コメントありがとうございます。最後、永遠、とか静寂とか、持ってこようとしたんですよ。それはもう常套的だし、僕がやり尽くしたパターンの締めなので、荒れ地で行くかと思っていたところ、それならばいっそのこと焼け野原が大胆で無常だ、と思い至りました。みなさん、焼け野原に反応してくださいましたね。結果、とてもいい試みだったと満足したいます。
2確かに大胆で無常だと思います。 だからこそ、この詩が生かされ、グッと締まるのでしょうね。
2皆様が寄せて居ります通りに。 結句「焼け野原。」のあられもない(且つ歴史記憶的反復の,)修辞が、 其処へ至りますまでの清冽、且つ最大公約数的な美的修辞の睦言を、翻って収束させます様な効果を生んでおり、上手い、と存じました次第でございます。 美は、美の破壊、毀損、欠落した瞬間にこそ宿るのでしょう。 丁度、諸腕の無いヴィナスの様に。 ド・ゴールと<核>に附いての随想。
1鷹枕可さん、コメントありがとうございます。「焼け野原」。本当によかったですね、舵取りが、選択が。静寂、永遠とか書き記すのはひょっとしたら人間を信じられないから、という点もあるかもしれません。同時に「焼け野原」と創作物に持ってこれたのは、僕がまだまだ人を信じられるからだとも言える。美の破壊、毀損、欠落した瞬間。鷹枕可さんにそうした感慨を抱かせたのも、僕の人への信頼と、ちょっとした冒険の結果だと思うと嬉しいです。
0