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スペランカーとアイツ   

作成日時 2019-03-14
コメント日時 2019-03-25

アイツの二階部屋にはスペランカーがいつもファミコンに刺さったままで、何で?と聞くと、抜き差し面倒だから、といつも沢山のカセットを両手で払いのけて俺の席を作ってくれた。アイツは夜にスペランカーを差し替えてくれていた。アイツはやらずに俺のプレーばかり見て、すぐ死ぬな、と笑っていた。そんなアイツが俺より先に死んだ。 少しの段差で死ぬスペランカーのようにあっけなく死んだ。自殺だった。 アイツの二階部屋は、子供の頃しか行ってない。俺は何年も会ってなく久しぶりに会ったのは同窓会の時だった。ハゲたな、離婚したよ、スペランカー懐かしいな、すぐ死んだな、また会おうな、アイツは昔のまま笑って、そして居なくなった。アイツの通夜も、葬式も知らなかった。一ヶ月後、同じ仕事仲間の同僚からアイツが自殺した。と聞いた。朝のラジオ体操の時だった。青空だった。アイツは俺より先に迷宮に旅立っていった。アイツはいつも夜に俺より先に迷宮をクリアしていた。アイツはいつも、俺の先に行くのがすきだった。すぐ死ぬな、そういって笑い、攻略の仕方を俺に教えてくれた。そういう奴だった。アイツは俺の先に行き、俺に追いつかれるのが嫌だった。スペランカーをクリアした時、アイツは余韻を楽しむまでもなく、カセットを無動作に引き抜き新しいゲームをいれた。次はコレな、そういって俺にやらせようとした、俺は、そろそろ帰るよ、と立ち上がって帰ろうとした。また明日な、そういって俺は手を振った。スペランカーが終わったら次は違う奴の家にあるカセットをやろうと思っていた。アイツは気づいていたのかわからないが、何も言わず手を振ってゲームを始めた。それが最後だった。 アイツはもういない。そんなに仲良しでもなかったが友達で、幼馴染で、ゲーム仲間だった。いや仲良しだった。 アイツは憎たらしかった、何十年も忘れていたが、会ったら懐かしかった。 そんな、スペランカーの思い出。


項目全期間(2019/09/16現在)投稿後10日間
叙情性1919
前衛性00
可読性77
エンタメ11
技巧55
音韻00
構成66
総合ポイント3838
 平均値  中央値 
叙情性3.84
前衛性00
可読性1.41
 エンタメ0.20
技巧10
音韻00
構成1.20
総合7.64
閲覧指数:606.3
2019/09/16 05時31分01秒現在
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コメント数(2)
ふじりゅう (2019-03-18):

拝見しました。 なんだか懐かしさを覚えます。題材がゲーム史上でトップクラスに弱い主人公を有する、スペランカーというのが良いと感じました。

沙一 (2019-03-25):

文章の悉くが過去形でありながら、最終行だけが・・・気づいた瞬間、打ちのめされるような叙情性を覚えました。過去形にはならない、思い出。

投稿作品数: 1