詩の経路

誰のせいでもなく。 https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=15525 azさんの作品のなかでもかなりレベルの低いと思われるこの「誰のせいでもなく。」という作品に私が注目するのは、文章の巧さ、とか日本語の確かさ、とかいう、運営の黒髪がいつものたまっているような、AIにも劣る下らない評価軸にはとどまらない、生々しさにある。いっけん、ソツのない文体のなかに、わずかな乱れや息づかいの揺れが感じられる。あとちょっとで紋切り型になってしまいそうになる、その一歩手前で「すでに意志の余地はなかった」というような、けっして生成AIやワードプロセッサの変換には出てこない表現がくる。。こういうところに、本作における作者の勝負があると思われる。「－－本当に優しい人はね、大事な人を庇ったりしないの。その人すら傷つける覚悟がある人なの－－」ここに漲っている勇気とさりげなさ、それに数％の優しさを私は無条件に支持する...うむ、うまい言い方ではないかもしれない。支持する？もなにも、azさんの作品は、レトリックの巧さにも関わらず、いつも空っぽである。だからこそ、上記で引用した一行の佇まいは、ひねくれていることこのうえない。しかし、この優しさは、たとえば燃え殻の文章のような、頭の軽いやさしさではない。敷金礼金ゼロで入居可能のレオパレスのワンルームのような空虚な粗末さの中で密かに営まれている艶めかしい静けさである。すべて演技でありながら、けっして演技に見えない自然さを持ち、整いと崩れのあわいで真実味がみえる。誰もがazさんに惹きつけられるのは、この漂泊された表層的な言葉以外には何もない世界のほかに、このあーもすーもないなまなましさ、得も言われぬ趣そのものにあるのである。ちなみに、下記は初読時の私の感想である。筆の運びが堂に入っている。頼もしさすら感じさせます。[...]まあ好みなのでしょうが「文脈の海から打ち捨てられた」というほどのもっとはるかに、ごくつまらないセリフがよかった。これだとちと説教くさいのではないかなと思いました。[...]「あなたがもし旅立つその日がいつか来たらそこからふたりで始めよう」とは浜崎あゆみの「Depend on you」ですけど、「旅立った」というのはもちろん、二人の一方なんでしょうが、とにかくどっちでもいいんですけど、ある日突然、なんのまえぶれもなく一方的に関係が解消されるようなことが起きたとする。ようするに「ブロック」されるというこのうえなく哀しい事件が発生し、もはや相手に声を届ける術をもたない。その時「...いつか来たらそこからふたりで始めよう」と、けっしてふざけるでもなく、ほとんど無意識に鼻歌を歌うように、言えるのだとしたら、わたしの言いたかったような精神にかなり近いかなと。平成と寝た女、浜崎あゆみと比べてしまったこの厚かましさをもって、ご挨拶にかえさせていただきます。

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作品データ

コメント数　： 4
Ｐ　Ｖ　数　： 545.8
お気に入り数： 1
投票数　　　： 0
ポイント数　： 0

作成日時 2025-10-05
コメント日時 2025-10-10

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