空港線沿いの砂利道を歩く。
君を感知するパラボラアンテナは、
振り続ける雨のせいでゆがんでしまったし、
不都合を誰のせいにするわけでもないのに、
世の中なんてけったいなものへ、
妙に悪口の一つでも言いたくなる。
僕は、母が幼い頃観たサーカス小屋で、
転落死した軽業師と似ていて、
仲間が泣いてはくれるが、
死ななきゃ誰も泣いてはくれない、
そんな無機質な造形物だ。
運命通路は真っすぐでも、
優しいフリさえ見せずに、
涙も流させはしないのは、
まるでずいぶん冷たい顔をした太陽みたいだ。
凍る陽射しを憎んでも、
肌が焦げていくのはさけられないから、
僕は砕ける石の上に無防備に立っている。
声も立てず、音も立てず。
昨日の夜の出来事が、
僕を煙に巻くだけの幻ならば、
朝方考え込むこともなかったのに。
カラカラの喉に流し込んだ、
慣れないスクリュードライバーが、
今も僕の胸を焼いている。
青空を踏みにじる、飛行機雲。
兜町で右へ左へ動く数字に、
トレイダーが夢中になっている間、
僕の背中にまた一つ黒い斑点が増えてしまった。
生ゴミをついばむカラス、
四六時中灯りをつけっぱなしの隣人、
雨風で今にも倒れそうな管制塔、
70を過ぎたブルース・ウィルスは、
自分が映画スターだったことも忘れてしまった。
幸せと不幸せを秤にかけて、
不幸せなフィクション作家になんて、
なるつもりが最初からないのなら、
皮肉な物言いなんかとさよならをして、
僕は笑ってみようか。
作品データ
コメント数 : 16
P V 数 : 841.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-07-28
コメント日時 2025-08-01
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:841.4
2025/12/06 02時19分35秒現在
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また改めてコメントさせていただきますが、とても佳い詩を読んだ喜びを感じたので、初読の感想を。 シャンパンの読み心地です。 ドンペリしか知らないのですが。笑 惜しいのは、 初読でキラーフレーズが目に焼き付かなかったこと。 まんべんなく素晴らしいので、 キラーフレーズのインパクトが薄くなってしまうのは、仕方がないのかもしれませんが。 取り急ぎ、 ありがとうございます。 とても美味しかったです。ご馳走さま。
1んー、箕輪厚介の方がずっとロックでポエムしてるな、っていうのが感想です。 不倫すると男の方だけが価値が爆上するっていうアレ、あれこそがロックです。 箕輪厚介はその事を啓蒙しているのですね。 ステロさんも再受験して早稲田に入りましょう。
0あっ、そういえば、乙武洋匡も早稲田でしたね。早稲田=乙武マインド。
0おまるたろうさん、コメントありがとうございます。この詩は投稿するかどうか最後まで悩んだんですよ。この詩で一部表現されている寂寥感と今の僕はかなり遠く、とても幸せなんです。詩と僕の現状が離れている。僕は今「I always wanna be a happy man!」という気分なんです。だから斜視なんです。なかなかいい具合なんじゃないでしょうか。
0レモンさん、コメントありがとうございます。ちょっと返信前後しました。この詩を作った前日、実は会社の飲み会だったのですが、とても幸せな気分になれたんですよ。これ以上ないくらいの絶好なシチュエーションが生まれまして。ただその翌朝、少し足りない、何かが物足りないという欠損感も生まれてしまって、朝方5時ごろから職場で書いていったのです。しかし帰宅して、途中まで書き上げていた作品を見ると、やはりこの詩で描いているほどの欠損感はない、では締めは、ということで最後の一連が出来上がったのです。シャンパン。素晴らしい賛辞、本当にありがとうございます。
1イエース。どんどん不倫しましょ!
0こんにちは。 うまいですね。巧くて、上手い。 過不足なく、丁度な感じ。 クールな印象です。 熱量で圧倒するというより、知的。冷静。 これが持ち味や個性ならば、 少し改行などの空間に気を配ってみても良いかもしれません。 もっと効果的に文字の余韻が響くように思います。 >声も立てず、音も立てず。 >青空を踏みにじる、飛行機雲。 この二行は、とりわけ、上手いな、狡いなと思いました。ピタリとハマっていて、うぅーん、と唸ったというか。 そして、 >僕は笑ってみようか。 ここ。絶妙に力が抜けてて、あざといほど見事です。 欲を言えば、句読点がうるさい感じなので、書くとき句読点がないとスースーする頼りなさがあるのは解るのですが(私も句読点を振る派だったので)、 是非、句読点無しに挑戦してみて欲しいと思いました。 とても佳い詩だと思います。 ありがとうございます。
1こんばんは。 >>四六時中灯りをつけっぱなしの隣人、 こういうさりげない日常描写は詩に取り込むのが難しいのですが、何かが少し不穏、あるなーと共感しました。 >>幸せと不幸せを秤にかけて、 このラストの連が映画のエンドロールのような形で心に残りました。
0レモンさん、再度コメントありがとうございます。べた褒めじゃないですか、嬉しいです。句読点は、ビーレビューの誰かに影響を受けて、始めたんですが、やはりもう少し整理した方がよさそうですね。不要な句読点は味わいももたらすが、読みづらさも増す。はい、次回は句読点多用を封印します。青空を踏みにじる、飛行機雲 は人をロマンティックにさせる飛行機雲が、青空を踏みにじったと話者が感じていることで、この詩の乾いた一面を描く支えになってますね。僕も上手く行ったな、と感じています。 それと最後の一行というより最終連てすね、ここがいい具合に完成しなかったら公にしないつもりだったんてす。でも希望が芽生えた。この詩はサバイブしたんてしょう。
1ぼんじゅーるさん、コメントありがとうございます。不穏な兆しを表すものとして、カラス、隣人、管制塔と置いたのですが、四六時中という言葉が出てきた時点で、隣人が表現として勝ったし不穏さや悲しみが増えましたね。 ところで僕は仕事の都合上朝5時には出掛けるのですが、朝方からついてる2階の部屋はポツポツとあるんですよ。僕はそこに悲しみを見ますね。僕の体感、経験が活きた作品でした。
えーと、関係ないですが、 X(Twitter)、「律」でフォローしたので宜しく。 ビーレビからは脱出した方が良いかもしれません。 ここが現在のままであれば、私はもう書き込みを止めようと思います。 既に力ある多くの詩人さんが去りました。 自浄作用なく、サイトが私物化されれば、そのサイトは腐ります。 ビーレビは、もうお仕舞いだと思います。
0テンポのいい詩だと思いました。淀みなく、回想シーンが有っても店舗によどみがない。 僕は、母が幼い頃観たサーカス小屋で、 転落死した軽業師と似ていて、 仲間が泣いてはくれるが、 死ななきゃ誰も泣いてはくれない、 そんな無機質な造形物だ。 こんな五行にハッとしました。しばし立ち止まります。無機質な造形物とは何か。そんな自己規定にも、この詩の魅力が詰まっているのかもしれません。
0レモンさん、またまたコメントありがとうございます。Xの方、返させてもらいましたので確認お願いします。
1エイクピアさん、コメントありがとうございます。エイクピアさんに引用もらった箇所、強烈ですよね。ちょっと悩んだんですよ、やっぱり。こういう自嘲、というか冷たい自己認識、を既成事実の一つであるかのように書いてしまうのは抵抗もあったのです。しかし流れ上という。いろいろ、悩んだ作品でしたが、今は次へ次へ、という気持ちでいっぱいです。
0「凍る陽射し」「青空を踏みにじる、飛行機雲」 タイトル「不幸せな斜視」(斜に構える様子?)を体現する言葉の取り合わせが巧みで勉強になりました。
0カステラリウムさん、コメントありがとうございます。斜視を斜に構える様子、と捉えるのもいいですね。ちょっと違う意味合いで使っているのですが、その話は置いておいて、カステラさんの解釈も入っているかもしれません。ダブルミーニングですね。
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