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ちがう星
別れと出会いが渦を巻いている。あたらしく旅立つ人や引力に寄せられてやって来る人。こんな小さなわたしにも、驚くような出会いがあったりして、やがてまた、たったひとりに還っていく。 おともだちがちがう星に行って、みえなくなった。 おいかけるつもりはなかったけれども、暫くしたら空をみあげたくなった。 いつもどうでもいい話ばかりしたり、読むはずもない本を勝手に何冊も送りつけてきたり、夜中に家のちかくのコンビニエンスストアで待たれたり、なんという非常識な人間だろうとたくさん笑ったけれども、ずっときらいにはならなかった。もらった下手な文字の手紙はたぶんどこかにしまってあるし、それにいまも、ちがう星で頑張っていてねって思う。 詩を書くようになってから、もうじき4年になる。 時々ふらりと現れるいろいろな人達のおかげで、わたしはいまもこうして詩を書き続けているのだけれども、そのおともだちはわたしの「ありがとう」がもっとも似合う人のうちのひとりで、離れてからも変わらなかった。 生きることにとってどうでもいい、それなのにやっぱり見過ごせない、すごくくだらないわたしたちという人間の、愚かしくて、見ようによってはとても詰まらない、でもそれだけじゃないこと、どうしようもなく滑稽で、とにかく小さくて、でもなぜかこんな命だからこそ、よけいにいじらしく思える日々のこと、なのに今日も変わっていくこと、わたしのこの小ささすらも、見失いそうになること、 そういうあれこれを考えるとき、なぜか頭をかすめたりして、 一日に何度もかけた電話、 例えようのない、かといって取るにたらない、なんかもうただただ通過するだけの時間、けれどわたしの存在は許されていて、だからかけがえがなかったはずなのに、なぜかふっと手放した。 わたしは公転をしないとならないので、距離はどんどん離れていくし、あらゆる通信だってもうずっと届かなくなってしまうのだけれども、今もときどき、ほんとうは空をみあげている。
作成日時 2020-12-11
コメント日時 2021-01-12
ちがう星 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2585.7
お気に入り数: 4
投票数 : 6
ポイント数 : 34
項目 | 全期間(2022/05/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 11 | 6 |
前衛性 | 3 | 0 |
可読性 | 7 | 3 |
エンタメ | 3 | 0 |
技巧 | 5 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 2 |
総合ポイント | 34 | 12 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3.7 | 3 |
前衛性 | 1 | 0 |
可読性 | 2.3 | 3 |
エンタメ | 1 | 0 |
技巧 | 1.7 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.7 | 2 |
総合 | 11.3 | 7 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
会っているのに離れている心もあれば、離れていても想っている心もあるなと感じます。 ちがう星に行く、という表現に、死んでほかの世界に生まれ変わることをはじめは思いうかべていたのですけど、おなじ時代にいるのに生きている世界がちがうんだなと感じることも現実にはありますね。でもそれも、太陽系のなかをまわる星のように、離れてはいてもやはりおなじ宇宙に生きていて、みえない引力に影響されあっているのかもしれません。 夜中に家のちかくのコンビニで待たれたり、一日に何度もかけた電話など、非常識だけど人間味のあるエピソードが、実感あっていいなと思いました。
1書ききれず、反省点が多いです。 人間味のあるエピソードがよかったと言って頂き、うれしく思いました。地に足のついた表現を絶対に忘れずに、自分なりの世界を書きたいと思っています。コメントありがとうございます。
0二連の自然さ、全体の抑えた表現、いいと思います。悲しさ、寂しさ、あったかさも溶け合ってるような印象は、かなの使い方も効いてるかもしれません。
1あげて頂いた点、自分の書きたいものだと思います。 きちんと心に留めて、今後も精進いたします。読んで下さってありがとうございました。
0自分にもこんなおともだちがいたと思います。そして今いるおともだちにも、いずれ違う星へ行ってしまうであろう人も。 わたしは公転をしなければならない、というところがズシンと来ました。
1急に速度の上がる5連にこそ、しんじつはあり、たとえ雑で拙い表現でも、あるいは拙い表現だからこそ、嘘のない、ひとの心を震わせる何かがあるのかもしれない。 そんな事を思いました。
1共感して頂き、ありがとうございました。 コメントを読んで、自分は公転をしなければならないと思い込んでいたのかなと、 そんなことを感じていました。
0なかなかどうして拙い表現しかできませんが、それでもだれかの心を震わせることができるよう、自分らしくがんばって行きたいと思っています。どうか見守っていてくださいね。コメントありがとうございます。
0この詩は…何気ない日常的な回想から徐々に、ちがう星に行ってしまった人を想う気持ちが昂っていくところが見せ場になっている。しかもその様子が過度に饒舌にならず偏った恋愛話にもならず、あくまで「別れと出会いが渦を巻く」という視座の延長線上で描かれているところが絶妙である。そう、この詩の話者は今はちがう星に行ってしまった人のことを想うのがとにかく楽しくて仕方ないのだ。この詩を読んでいると、話者が朝紅茶を飲むように、トーストを頬張るように、あるいは出掛ける前の準備をする時のように、ごく当たり前の日常の1ページとして、コロコロと彼?のことを想い出しているのが目に浮かぶ。それこそ仕事中についうっかり彼のことをにこやかに話し出しても本人は気づかない、そんな息遣いを感じる。それほど彼が話者の一部になっているのが読み手に伝わる。これは技術を超えたレベルでの伝播と言ってもいいだろう。今はちがう星にいる人に想いをつのらせて空を見上げるだなんて最高に、しかし読み手との距離が出来ないほどにロマンティックではないか。頬がつい緩んでしまう。この詩は例え一人きりに見えても例え孤立しているように見えても、確かに大切な人とあるいは世の中の諸々の事象とすべての人が繋がっていると感じさせるエッセンスに満ちている。メッセージ性を持たせるのでもなく技巧で仄めかすのでもなく、ただ彼のことを心楽しく、心地良くつい夢中になって回想するというだけでそれを成し得ているのは、ひとえに筆者の生への向き合い方がひたむきであるからだろう。押し付けがましくなく大上段に構えるのでもなく、この世界の登場人物の一人を描き切り大きなテーマを感じさせた今作は文章表現の原点の一つだと、そう私には思えるのだ。
1技術を超えたところでの伝播、文章表現の原点の一つ、諸々の事象とすべての人が繋がっている、 そんな風に読んでくださり、ありがたいです。またがんばって書きます。 わたしは空を見るのがすきです。コメントがうれしかったから、今から空を見てきます。
0好きですねえ
0好きをありがとうございます。またがんばります。
0何万光年も離れたところにある星も人にとっては大きな意味がありますね。 悲しみは理屈にすると常識に吸われてしまうけど、うまく逃げ切るとそのまま文字になりますね。
0こんばんは。 読んでいただきありがとうございます。 悲しみはうまく逃げ切ると文字になるんですね。 よく考えて、理解したいです。 そういえば今日は新月みたいです。そこにあるのにみえないお月さまもすきです。おやすみなさい。
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