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「ラーメン道」   

作成日時 2019-10-15
コメント日時 2019-10-22

人が何かを決めるとき、そして、何か変化を求めるとき、その臓腑を充足させる食べ物があるとすれば、それはラーメンである。 近代、中華そばと命名され、しなちくとかん水の芳香が界隈を漂い暖簾に染み付いている。 笑顔のない、高圧的な店主の声は、互いのこれからの戦いの前の効果的な精神戦である。 洋食がテーマパークなら、ラーメンは自分で作り上げる私小説である。 スープの表面に適度が脂液が漂い、トッピングはその沼を彩る食欲の蓮である。 麺は小麦臭を残し、歯の圧力を俄かに跳ね返す弾力ではなく、ほどよく包み込む肉布団のような性格を保っている。 スープをすすり、麺を噛み締め、胃に落とし込んだとき、頭の切っ先に一つの光りのようなものが浮かび上がり、その瞬間、店主は教祖となり、あなたは信者となる。 * 秘密の食材を混沌と混ぜ合わせ、火力との逢瀬を繰り返し、光るスープが出来上がったのか。 胡散臭そうな紳士達が食券を買い、店員に渡す。 ここのラーメンが食いたいのだ、一心不乱にそう思い込んでいる客、そう、その中の一人でもある、私は。 新しい具材が鍋の中で出会い、互いの良さを引き出しながら別の味に変る。 店主の混沌とした思考と吐息のから編み出された味。 それは店主の主張である。 かん水がほどよく香り、ねっとりと絡んだ麺は自らの存在を鼓舞するわけではない。 シナチクも焼き豚も、それらそのものが独立して物事を主張していない。 とてつもない、奈落を彷彿とさせる、やるせなく切ない食い物、それがラーメンだ。 客は誰でもラーメン炎を燃やしている。 めらめらと立ち上がる炎は、備え付けの雑誌やコミックで誤魔化すのだ。 誰にも悟られたくないこの熱きラーメン炎は人には見られたくない。 だから、目で追うことしかしないコミックを見るふりをして、喉が嗚咽する。 ラーメンが臓腑の収まるべき所に収まるその安定と密着、その達成感に血流は落ち着くのだ。 ティッシュで洟水を拭き、ゴミ箱に捨て外に出ると心地よい、風を感じる。


項目全期間(2019/12/14現在)投稿後10日間
叙情性44
前衛性11
可読性44
エンタメ66
技巧55
音韻11
構成44
総合ポイント2525
 平均値  中央値 
叙情性1.31
前衛性0.30
可読性1.31
 エンタメ22
技巧1.71
音韻0.30
構成1.31
総合8.37
閲覧指数:1077.2
2019/12/14 17時54分58秒現在
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コメント数(11)
yamabito (2019-10-15):

前回は蕎麦、今回はラーメンで行ってみます。 うーん、まぁしかし・・、既視感と言えば既視感なのですが。

帆場 蔵人 (2019-10-15):

ラーメン好きとしては楽しく読ませて頂きました。ラーメンが私小説、洋食がテーマパーク、解るのですがジャンルを揃えても良かったのかと思いました。後、かん水の臭いもやや古き時代のイメージがあります。しかし、誰にも見られたくないラーメン炎、これはわかるような。本来、独りで食うものだという気持ちが何故かありまして、店主と相対して切りむすぶように勝負しているような気になります。洟水を拭くからのくだりが何かすがすぎしいですね

蕪城一花 (2019-10-15):

ラーメンを食べたくなりました。

survof (2019-10-15):

ラーメンをお題にしてみんながラーメンにまつわる文章を書くという企画があっても面白いと思う。おそらく文章力や表現力はむき出しになる。基礎訓練としてこうした基本的な生活にかかわる衣食住の描写をやってみるというのはもしかしたら絵画でいうところのデッサンのような役目があったりするのかもしれない、と思った。 最初の一文は名言だ。最初の一文と同じくらいの濃度でラーメンと人生(?)をもっと絡めてほしかった。文章力を感じさせるだけに読者としては物足りないのだ。せっかくラーメンについて書くのだ。惰性で書いたようになってしまうのではカップヌードルのようで勿体無い。最初の一文が書けた作者ならもっといけるはずだと思った。 あと改行の多さは可読性を重視してのものだろうか。PCでみたときの投稿欄の横幅は広過ぎて改行なしの散文にはちょっと不利だし、改行をなくすとスマホでは文章の塊がガッツリしてしまって、それを嫌う読者もいるのかもしれない。それでも、個人的には改行なく繋がっていた方が、文章にリズムが生まれるので好きである。

yamabito (2019-10-17):

帆場さん、おはようございます。 ラーメンも時代とともに様変わりしてまして、私のような年代になると今流行りのストレート麺や、かん水無しの麺など食えたものではありません。 麻薬の様な、後ろめたい気持ちで食べるからこそラーメンであると私は思っています。 御批評、ありがとうございました。

yamabito (2019-10-17):

蕪城一花さん、おはようございます。 良い御評価、恐縮です。

yamabito (2019-10-17):

survof さん、おはようございます。 そうですね、いてみれば既定路線という感じもしなくはないです。 これはずいぶん前に書き残していたものを投稿してみたのですが、今回は蕎麦とラーメンという食べ物路線に拘って投稿してみた次第です。 ちょっと、私としてはイマイチの評価だったな、という感じです。 もっと精進する所存です。 ありがとうございました。

南雲 安晴 (2019-10-18):

 詩など、作品は、かっこいいのが良いと思っています。それで、この作品にはタイトルの『「ラーメン道」』からして、あまりかっこよくないなという印象を受けて、長いこと読まなかったのですが、せっかく印刷してあったので、今日読んでみました。すると、私のこの印象は砕かれました。  読み始めて数秒、 >洋食がテーマパークなら、ラーメンは自分で作り上げる私小説である。  あたりから、断定的表現にぐっと引き寄せられ、また、頷かざるを得なくなりました。  最後まで途切れない気の利いた表現、意想外な語の使用、それから断定的調子に心を奪われました。  yamabitoさんはどんなものもこのように芸術作品に落とし込むことができるのではないかと感じました。

yamabito (2019-10-19):

南雲さん、おはようございます。 お褒めくださり、なんか恐縮です。(^^ゞ  南雲さんのように、内面からポエジーが湧きたつような文体も好きですが、このように派手に断定し切ってしまうというスタイルも捨てきれないのです。 ただ、読み手によってこれが痛く感じてしまう部分もあるので、多用すると怪我の元という事なのでしょう。 いろいろとありがとうございました。

千才森 万葉千才森 万葉 (2019-10-22):

お邪魔します。 わたしは断然こちらが好きですね。作者さんが持っている独特の旨味がしっかりと出ている気がします。 >洋食がテーマパークなら、ラーメンは自分で作り上げる私小説である。 >店主の混沌とした思考と吐息のから編み出された味。 >めらめらと立ち上がる炎は、備え付けの雑誌やコミックで誤魔化すのだ。 >誰にも悟られたくないこの熱きラーメン炎は人には見られたくない。 これらの表現がずっしりとした満足感を与えてくれます。 1行目も、もちろん好きなのですが、この行を書くのであれば、裏付ける文章が欲しかったかなと思いました。詳しく書かないのも詩らしくていいですが、散文の形を取るのなら、より強調させてもいいのかなと。 実のところ、視覚や行動の描写については、多分yamabitoさんが持っていない書き方を、わたしは持っているなと見ました。なので、結構読んでいてもどかしかったですね。ここはこうした方が……みたいに。 ただ、そういった単純な描写は身につきやすいと思っています。数をこなせば、書けるようになりますし、料理系のマンガなんかでも見た目や触感の描写はよく見ます。一方、なかなか書けないのが、今作品でyamabitoさんが書かれたような思考、思想を伴う描写ですね。これはセンスや経験が大きく関わってきますから、どれだけ考えながら生きてきたかが問われるんだと思います。誰にも真似できない武器になるのでしょう。学ばなければ。 最後の行の心地良さはよくわかります。この共感を伴いながら、去って行く感じがたまらない。やっぱり強い旨味が間違いなくありますね。

yamabito (2019-10-22):

千才森さん、こんばんは。 そうですね、私も調理人みたいな仕事も少しやりますので、そういった食に関するものは割と書いております。 現実的な話をすれば、手打ちそば職人時代もあったのです。 なので、私の作風は何方かもおっしゃっていましたが、どこか既視感があるという風なものは感じとれてしまうのかもしれませんね。 私も実は、詩小説的なものをこちらでも少し書いています。 千才森さんの様な繊細で肌理の細かい描写はまだまだ私にはできませんが、いろんな物を読み(・・といってもネットでしか物を読みませんが苦笑)心に留まるようなものを書いていければと思っております。  この度は、いろいろと御批評いただきましてありがとうございました。

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