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ピピ(十二歳の犬へ)
朝はトーストに薄焼き卵をのせて食べる そんな俺の朝食におまえは異常な興味をしめす あんまり見つめないでくれ というわけで俺のトーストの三分の一を食べてしまう リンゴもしゃりしゃりする おまえは十二歳 犬の年齢ではもう老犬になるのだろうか 大きな手術をして今は回復期だ お尻の毛は刈られ縫い後も痛々しい でも、日一日とよくなってゆくね 抱き上げればトクトクと早い鼓動を感じる 小さくて温かくて耳のあたりが少し臭い 茶と白のぶちの毛むくじゃら 俺の腕から逃げ出そうともがく 俺はおまえに首輪をかけたが 芸は教え込まなかった 五九歳の俺と十二歳のおまえはいいコンビかい おれも少しくたびれたが おまえも眠っていることが多くなった いいよ、お眠り 俺のベッドに飛びのり 熱い一杯のスープのように なみなみに注がれた夢のなかで すーすーといびきをかき 腹が上下する ときおり足を動かす おまえの眠りがまろやかで 絹のようでありますように おまえは十二歳 巡る季節の中を走り抜けてきた 点灯する街の灯の其処此処を二人で歩いた 朝の月の下 夕陽の坂道 小刻みに揺れる尻尾があった 雪の日だって冷たい空の底を歩いた また春が来る 夜明け 俺たちは布団から這い出し散歩に出かけよう 春風の礫は鼻先で弾けろ おまえは十三度目の春を行く 川沿いの桜並木の下を
作成日時 2018-11-14
コメント日時 2018-11-16
ピピ(十二歳の犬へ) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 902.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
項目 | 全期間(2023/02/09現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
拝読しました。片時人生の相棒のような、短いときを駆ける犬。そんな犬を想う気持ちの暖かさが、「絹のよう」に伝わってきました。この詩からは、表現は多様で繊細でありながらも、希望に満ちみちていて、力強い印象を受けました。
0拝見しました。 愛犬との日常。そのかけがえのなさを、高い技術を持って書かれています。 「熱い一杯のスープのように/なみなみに注がれた夢の中で」この一文は中々生み出せるものでは無いように思います。 本作の愛犬が12歳、である所にまた、いつ失われるか分からない、そんな切なさを覚えました。
0じゅう様 はじめまして。お読みいただき、コメントを感謝いたします。 こちらのサイトには初投稿となります。そして最初にレスポンスいただきました、ありがとうございます。 <希望に満ちみちていて、力強い印象を受けました。>とのこと、最終連に向けてまさにそのような印象になるよう気をつけましたので、嬉しい感想でした。 ふじりゅう様 コメントをありがとうございます。 好意的に読んでいただき、またお褒めくださった部分もあり、胸がほかほかいたします。 犬の12歳は人間に換算すると65歳くらいでしょうか。いずれにせよピピは私よりは早くに亡くなりそうです。そのような思いも含めて書きましたが、こまかなところまで読み取っていただきました。
012歳の犬。 顔が白くなり、脚が震え始める頃でしょうか。 実家で飼っていた17年の天寿を全うした犬を思い出してしまいました。 >俺たちは布団から這い出し散歩に出かけよう >春風の礫は鼻先で弾けろ 今を全力で生きている作者と老犬のコンビが生き生きと思い浮かびます。 なかなか良い作品だと感じました。
0羽田恭さま お読みいただき、コメントを感謝いたします。 犬は髭等が白くなり、片目は白内障になりました。私も持病がありますが、一人と一匹、同じ部屋に寝起きしてなんとか元気に過ごしております。元気に過ごしてゆくぞーと、から元気も込めてこの詩をかきました。 <実家で飼っていた17年の天寿を全うした犬を思い出してしまいました。>とのことですが、なにかしら伝わるものがあったとしたら、嬉しいです。
0おはようございます。諸感覚でとらえた描写が丁寧に配置されていて、良いなあと思いました。語りかける語り口も、関係の親密さを感じさせます。夢をスープに、眠りを絹に喩えるのも新鮮ですし、この部分が描写を詩作品へ高めているように思いました。(ただ、私だったら《熱い一杯の~/夢のなかで》は一行にしたなあ。あー、でもそうしたら「なみなみに」が弱くなるから、ウーン、悩む) 《春風の礫は鼻先で弾けろ》なんてのもね、ゆっくりとしたリズム、なにげない言葉のなかに急に差し挟んで破調しつつ、「なにげなくない」イメージを想起させるのも見事です。 犬と生活している方は沢山いるでしょうけど、こんなふうに愛情や祈りにも似た「想い」を「詩作品」として成立させるのは難しいと思う。しばしば味わう「幸福な読者」感を堪能しました。
0とても暖かい詩だと感じました。 galapaさんが眠っているピピくんを優しいまなざしで眺めている情景が浮かび、読んでいるこちらがあたたかさに包まれます。 「 いいよ、お眠り 俺のベッドに飛びのり 熱い一杯のスープのように なみなみに注がれた夢のなかで 」 この部分がとても好きです。 そして、この優しい気持ちが詰まっている詩の中に、ピピくんとの別れを憂う気持ちを感じました。出会いがあれば別れがあるのは必然で、ピピくんがこれから何度春を迎えられるのかは私にはわかりませんが、galapaさんとピピくんが幸せにあふれる時間をたくさん過ごせることを祈っています。 ありがとうございました。
0藤 一紀さま お読みいただき、コメントを感謝いたします。また、好意的に読んでいただき、過大なお褒めの言葉……恐縮です。 <しばしば味わう「幸福な読者」感を堪能しました。>なんて殺し文句です。もう私、地に足が付いておりません。いただいたお言葉に恥じないように次の作品を作りたいと思いました。
0alice1017さま お読みいただき、コメントを感謝いたします。 夢をスープにたとえたのは、結構効いたのでしょうか、何人かの指摘がありました。Aliceさまもその部分、好きだと言っていただき嬉しいです。詩を読む楽しみの中の一つに、比喩の楽しみがありますね。そういうところ大事にしてゆきたいです。 ピピのこともお気遣いいただき、ありがとうございます。
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