骨折した青色の羽音
別枠表示
でもわたし、かわいい
わたしは3匹の子犬を連れたシチリアのおばあさんみたいなおばあさんになりたい おばさんじゃなくて、おばあさん おばさんを通り越していきなりおばあさんになる カール・マルクスを変わったお菓子の名前だと思い込んで、第二次世界大戦をちょっとややこしい花火大会みたいに勘違いする もちろんコロナはビールの名前 そんな太ったシチリアのおばあさん 圧倒的な無知と偏見だけで生きてきたおばあさん そんなおばあさんになりたい、っていうけど、わたし17歳 年齢とかじゃなくて、まるごと17歳 いろんな男から無償の愛を捧げられるけど全部ぶっ壊す 理由は特にない 単に全部ペロッと否定してみたいだけ あなたの愛するもの全部否定して死ぬほど意地悪して致命的に傷つけて裸足で逃げ去る でもわたし、かわいい すごく、かわいい もう、天才的に、かわいい 趣味はたった一つだけ 夜の首都高を世界で一番高い車でグルグル回る すっごい高級車の後部座席にすっごいかわいいわたし 運転手は日本語の喋れないゲイのタイ人 世界中の全ての占いとマッサージをマスターしたゲイのタイ人 ときどき退屈になったら、ホームレスに100万円ドサっと配る 信じがたい偽善者だけど、そんなこと気がつかない 相手のこととかいっさい考えない だってわたし、かわいい すごく、かわいい もう、天才的に、かわいい 年齢とかじゃなくて17歳 何から何までまるごと17歳 後部座席に座って首都高のオレンジ色の街灯の数をひとつひとつ数える 窓ガラスに反射する死ぬほどかわいい自分の顔をたまにチラッと見る(かわいい) 首都高をグルグル回りながら田舎に置いてきた可哀想で貧乏なシチリアの弟のことを考える わけあって弟とは一生会えないの 弟は天才児で数学オリンピックとかに出るんだけど、情緒に問題があって、学校で問題をよく起こすの そしてすっごく貧乏なの だから私は学費だけせっせと送ってるの わたしが助けないとマフィアになっちゃう の でもそれは真っ赤なうそ ほんとは弟なんていない 全部嘘で塗り固められた死ぬほど自分勝手なセンチメンタルな空想 でもわたし、かわいい すごく、かわいい もう、天才的に、かわいい
でもわたし、かわいい ポイントセクション
作品データ
Ｐ Ｖ 数 ： 1357.6
お気に入り数： 4
投票数 ： 0
ポイント数 ： 19
作成日時 2021-05-20
コメント日時 2021-05-21
| 項目 | 全期間(2024/04/24現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 1 | 1 |
| 前衛性 | 2 | 2 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 6 | 6 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 1 | 1 |
| 構成 | 4 | 4 |
| 総合ポイント | 19 | 19 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0.3 | 0 |
| 前衛性 | 0.5 | 0 |
| 可読性 | 1.3 | 1 |
| エンタメ | 1.5 | 1 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0.3 | 0 |
| 構成 | 1 | 1 |
| 総合 | 4.8 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
かわいい‼️
1世界を見る目がもう曖昧になっちゃってるけど、でも微笑ましいおばあさんになりたい女の子の詩かな？みたいな程度の覚悟で読んだら、いきなりぐいんと足元の機械が加速したみたいで楽しかったです。 かわいい、天才的にかわいい、という言葉が自分自身を破壊的に洗脳するための言葉でありながら、自己を守っている言葉でもあるような…祈りは繰り返されないと意味がないように、この子の中ではそれが歪んだお守りになっている（しまっている？）というか…うまく言えないけど、エネルギーを感じました。 悪を自覚して突っ切って悪をやっているんだけど、なにもかもぶっちぎるくらいかわいいんだけど、やっぱり悪を抱えるにはなにかしらの支えが必要なのかもしれません。個人的な感想に過ぎないのですが。だから世界の認識が曖昧になっちゃっているおばあさんにジャンプしてしまわないと、これは抱えきれない、みたいな切実な予感も持っているのかな…書いている途中で出てきた勝手な想像ですが。 楽しく読ませていただきました。
1みなさま お読みいただき、ほんとうにありがとうございます。 コメントも嬉しいです。 厳しいことでもいいのでアドバイスも欲しいです。
0おー、岡崎京子さんの世界観がチラッとみえるって感じで最後まで読めたんですが、 これ作者がどんな人かで印象変わるとおもいますね。つまり、あやしい•いかがわしい、キワモノ作品って印象のほうが濃ゆくあって、選語のアイデアどまりという感じ。アイデアがセンスにまで到達してない感じですね。17歳があざと過ぎて余計だだ感じ。ただ、作者さんがホントの10代だたらこの作品は悪魔的な悪意が宿っていて、評価はガラリと変わって、作者さんは天才の匂いがする。
1