八月中旬 うちの地元は
祭りの日 いつも雨が降ってた。
都会のいとこと、集まるじっちゃん家
卓を囲んで 夕飯食べてた。
夜になると、近くの公園へ
花火セット じっちゃんが準備してた
どれからあげるか 花火師みたいに
みんなを楽しませようと演出してた
雨の切れ間に 打ち上げる光
キラキラしてた 俺達をみてた。
じっちゃんはそこでニカっと笑って
「祭りいくぞ」って 下駄鳴らしてた
射的 型抜き 金魚すくい
じっちゃんは 生粋のお祭り男
頼めば完璧に こなしてくれた
みんな祭りのじっちゃんが大好きだった。
二カっと笑ってタバコ吸ってた
どこいくかって一緒に燥いだ
ガサガサの手が かっこよかった。
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
早起きしてパンを作ってた
仕事と家族をずっと考えてた
でも今はもう腰を下ろして
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
夏休みも終わりそうな昼間に
一本の電話で またじっちゃん家
じっちゃんは三年くらい前癌になって
入院して頭丸坊主になった。
一度治った 癌は再発して
体中に転移して自宅療養してた。
それでも、一緒に祭り巡った
だから元気だって錯覚してた。
そんなじっちゃんがトイレで首つってた。
泣き崩れる母さん 呆然する俺
あんな強いじっちゃんが死んじゃった
辛い顔見せずに一人で消えちゃった。
警察が家に集まって
よくわからないけどお別れだって気づいた。
涙は出なかったけど寂しかった
もうお祭りでじっちゃんと会えないから
白く塗られて棺桶に入った
どこ行くのって母さんに聞いた
湿った手が 震えてた。
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
灰になって楽になったじっちゃん
みんなじっちゃんが大好きだった
だからもう苦しまなくていいよ
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
パークゴルフを教えてくれて
兄貴と一緒に大会でたんだ
田舎だから三人しか出なくて
俺が一位で兄貴が二位だった
じっちゃんは近くでずっと見てて
俺より手を叩いて喜んでた。
新聞の切り抜きずっと眺めて
会うたび笑顔で頭なでてくれた。
ニカっと笑ってタバコ吸ってた
どこいくかって一緒に燥いだ
ガサガサの手が かっこよかった。
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
早起きしてパンを作ってた
仕事と家族をずっと考えてた
でも今はもう腰を下ろして
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
俺が行くと手を広げて待ってた
しわくちゃに愛がしみ込んでた
今日は一緒に布団の中で
眠ろう じっちゃん
眠ろう じっちゃん
パチンコ一緒に行ってみたかった
一緒に兄貴とマージャン打ちたかった
酒飲みながら話してみたかった
眠ろう じっちゃん
もう眠ろう じっちゃん
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1718.9
お気に入り数: 2
投票数 : 8
ポイント数 : 0
作成日時 2021-05-07
コメント日時 2021-05-08
#現代詩
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#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/07現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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2024/11/07 01時59分21秒現在
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祭りや家族に日々を熱く生きて、それでも肉体は老いることを止めず。健康が崩されて心も追い込まれてしまう、そんな先にじっちゃんは死を選んだのかもしれません。周りが思う以上に辛かったのかもしれませんね。ラップのグルーブでリーディングされた佳い映像作品でした。
2文字の詩を黙読して、次にYouTubeで詩のラップを聞いた。文字の黙読の時は悲しい気持ちが残った。ラップの、声で聴いたときは少し元気さが残った。〈ニカっと笑って〉〈下駄鳴らしてた〉じっちゃんを身近に感じた。〈仕事と家族をずっと考えてた〉じっちゃん、バイバイ。
1古代ローマ人は延命するより自ら食を断って死んでいくのを良しとしたそうですが。 このじっちゃんは同じく弱るのを見せたくなかったのかもしれませんね。 かっこいい姿をみんなに残したかったのかも。 >眠ろう じっちゃん ラップで語られる愛しい人との別れが、素晴らしいの一言です。
1純朴な詩ですね。悲しい詩ですし、動画も視聴しました。最後の行のフェイドアウトするような感じの朗読が偶然生じた効果なのかもしれませんが、意図されたもののようにも思えました。まさにポエトリーリーディング詩だなと。
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