地下鉄に乗ると心踊ることもある
今私が読んでいる本と同じ本を読む男性が
私が座る席の目の前に立っている
歳の頃は五十代半ばといったところか
白髪混じりの髪を短く刈り上げ
少しヨレヨレの白シャツと紺色のスラックス
途端に湧き出る嬉しさ
読者仲間に突如巡り会えたような
気づかない時は平坦だった日常が
少しだけ華やぐ
「村上春樹がお好きなんですか?」
声を掛けようとして躊躇う
気難しそうに読む姿から
余計にその顔が怪訝そうになりそうで
鞄からハードカバーの本を取り出して
提示してみたい衝動に駆られるのに
それを制止する私もいる
(余計に不審な目で見られるだけだよ)
そのうち男性は向かいの席に座り
終点の駅で降りようとする私の脇をすり抜け
まるで空気のように足早に降り去って行った
作品データ
コメント数 : 10
P V 数 : 717.9
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-09-05
コメント日時 2025-09-09
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
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| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:717.9
2025/12/05 18時35分10秒現在
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出会いをどこで体験したいか、山田詠美が本屋で男と出会いたい、と語っていたことを思い出しました!映画館デートならぬ、詩集デートなんか楽しいかも。
1湖湖さん、コメントありがとうございます 山田詠美さんは確か、黒人の男性が大好きで、接触しようとするたびに編集者から止められた、というエピソードを思い出しました。
1私も自分が好きな本を読んでいる人に出会うと、似たようなことを思うので、すごく共感しました。話しかけられないところまで同じです。
1電車ならではの出来事ですね。同じ本、という共通点で、結びついてしまう。こんな人と人の関りも、本当にいいものなのかも。
1おとはさん、そうですよね。 同じ趣味で嬉しく感じても話しかけるのはなかなか難しいです。
0黒髪さん、そうですね。 趣味で繋がる人と人との繋がりって素敵ですよね。 ただ、話しかけるのは本当に勇気のいることだけれども。
1まるで映画のワンシーンのようです。 「村上春樹」という固有名詞は出さない方が良かったのでは?
0こんにちは。 まるで、この二人と電車に乗り合わせたような不思議な臨場感がありますね。 共通項を見つけた時のときめきとは不思議なもので、相手の外見よりなにより「それが好きなんだ、わたしと一緒かな?」というような浮つきに心が満たされたりします。 けれどもそれも束の間、 >>「村上春樹がお好きなんですか?」 この問いに対する相手の答えは、かならずしもYESとは限らない。 だから寸前でためらったりするんですよね。 内心、YESだったらいいな、と思いながら尋ねることが、僕は多々あります。 示唆に富む、居心地の良い、地下鉄の風が緩く吹き込むような詩でした。
1紅井ケイさん、そうかもしれませんね。 どんな著者の作品なのか、出来るだけわかりやすくした方が良いと思ったのですが、固有名詞を出さない方が良かったのかもしれません。
0ぼんじゅーるさん、その通りですね。 「それが好きなんだ、わたしと一緒かな?」というような浮つきに心が満たされたりするんですが、相手の答えは、かならずしもYESとは限らないんですよね。 しかし、こちら側としては、内心、YESだったらいいな、と期待してしまう、そのときめきがたまらなかったりしますね。
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