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すこし むかし はなし
すこしむかしのはなしをしてあげよう。役に立つ確率は、15パーセントくらいかもしれないが、聞いとくれ。 私が若かったころ、みどりが好きだった。今はあかだ。 私が若かったころ、山に登るのが好きだった。今は低い階段でも精いっぱいだ。 私が若かったころ、この世界すべてが美しいと思っていた。今は汚れたところも多分知っている。 私が若かったころ、一人で生きていこうと決めていた。今はひ孫もいる。 私が青かったころ、夢はすべてかなうと信じていた。今はかなわない夢はポケットにしまって、時々取り出して考えている。 私が青かったころ、恋は唯一幸せなことだといわれた。今は恋をしていない。けれどおそらく幸せだ。 私が青かったころ、年を取ったら早く静かに死のうと思っていた。今は、一日でも長く愛する人たちと過ごしたい。彼らは思っていないかもしれない。 私が青かったころ、昔の話をするのは屈辱だと思っていた。今は、こうして笑顔で語っている。 熟したリンゴはおいしい。バナナもマンゴーも柿も。 あることを考え、信じ、好きになることが、早すぎるときもある。 その時は、熟するまで待っていなさい。いつかある晩、季節が変わり、風が吹くころ、頭に光が灯るだろう。 とってもとってもあったかい。とってもとってもあったかい。 お湯が沸いたそうだ。 すこしむかしのおはなしだ。
すこし むかし はなし ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 641.7
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 75
作成日時 2025-07-09
コメント日時 2025-08-07
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 20 | 0 |
| 前衛性 | 5 | 0 |
| 可読性 | 11 | 0 |
| エンタメ | 3 | 0 |
| 技巧 | 11 | 0 |
| 音韻 | 11 | 0 |
| 構成 | 14 | 0 |
| 総合ポイント | 75 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 20 | 20 |
| 前衛性 | 5 | 5 |
| 可読性 | 11 | 11 |
| エンタメ | 3 | 3 |
| 技巧 | 11 | 11 |
| 音韻 | 11 | 11 |
| 構成 | 14 | 14 |
| 総合 | 75 | 75 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


わたしが子どもの頃にはわたし綺麗な爺さんになると思っていた。 それがいまではネギ臭漂うおばさんのおじさんになっていた。 最後は泣けてきました。 人間もほぼ十年毎に人生が動きます。 わたしは70歳でお迎えにくる。 80歳で天国の階段を昇る。もう先は見えてきましたが、あとほんの少しだけ抵抗しましょう。 悲惨な戦争を見ることになるまでは、
1ありがとうございます。 はい。ほんの少しだけ抵抗します。 幸せをよく噛んで、生きていきたいです。
0上手い文章。素敵な文章。熟して美味しい葡萄酒のように官能的です。素晴らしい!
1単なる回想ではないようです。箴言がある。経験がある。単なる昔ばなしではすませられない事情が詩なのでしょう。
0ありがとうございます。嬉しいです。
1ありがとうございます。
0おいしいお茶を飲むために お湯をわかしているあいだに 思った、たくさんのことなのかなと思いました。
0対比のしかたが一辺倒ではなく、時々ひねりがきいていたりしていて、最後まで楽しく明るく読めました >あることを考え、信じ、好きになることが、早すぎるときもある。 これは、本当に長く生きた人にしかわからないことなのかもと思いました。 私もそんなに長生きしたくないけど、長く生きるのも楽しそうです
こんにちは。詩ですね。素晴らしい散文詩です。こういうの自分も書きたいです。
0ありがとうございます。
0ありがとうございます。
0ありがとうございます。
0ありがとうございます。
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