蜘蛛は買い物がやめられない
殺意を慈悲に作り替えては売り込んで
やっと手にした札束で
性懲りもなく衝動を買い漁る
糖分の巣には蜜と買い物袋
ミルクに濡れた流行り物
それでも蜘蛛は嘆いていた
腹ペコなんだと愚痴を吐いた
ある日友達がこう言った
「あたし、歌舞伎役者を買ったのよ」
キラキラした目で言っていた
ある日ライバルがこう言った
「あんたも歌舞伎役者が欲しいんでしょ?」
意地悪そうにこう言った
歌舞伎役者は高級品
国家予算を積まないと
到底買えない代物だ
蜘蛛は友達を羨んで歌舞伎役者を欲しがった
蜘蛛はライバルに負けまいと歌舞伎役者を欲しがった
だけど買い物はやめられない
手当たり次第に札束はたいて
止まらない衝動を買い漁る
綺麗なものは安いから
可愛いものは甘いから
意味もなくかごに詰めていく
札束はガラクタに化けていく
電子の街を歩けばいつの間にやら
ダイオードの連中が歌舞伎役者を連れ歩き
気前よく多幸感を振りまいていた
友達やライバルは歌舞伎役者にヘコヘコしては
日本酒注いでご機嫌取り
歌舞伎役者は気難しい
上手くご機嫌取らないと
踊ってくれない代物だ
友達が買った鷺娘は最高級なんだとさ
ライバルが買ったお初さんもバカにならないお値段だとさ
ぼーっと眺める蜘蛛の後ろを
大蛇がギロリと睨んできた
歩く連中を掻き分けて潤んだ街を走っていると
狐の大群が追いかけた
駆け込んだ店のディスプレイにはセール品のダンボール
右には驢馬、左には歌舞伎役者
どちらのタトゥーも駄菓子の値段
蜘蛛は歌舞伎役者を買おうとしたが
大蛇と狐が掻っ攫い、残ったのは驢馬だけだった
蜘蛛は追いかけようとしたのだが足がすくんで動かない
仕方なく驢馬を買い取って項垂れながら帰っていった
糖分の巣には蜜と買い物袋
ミルクに濡れた流行り物
そこに驢馬が加わっただけ
後は変わらずに日が暮れていく
変わらずに時は過ぎていく
変わらずに蜘蛛は嘆いていた
腹ペコなんだと泣き叫んだ
驢馬はそれを見て笑っていた
大蛇と狐も笑っていた
蜘蛛は今日も買い物がやめられない
歌舞伎役者はまだ買えない………………
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 566.2
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-07-01
コメント日時 2025-07-14
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:566.2
2025/12/05 19時01分27秒現在
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シュールですね。 一瞬、エイクピアさんの作品かと思いました。 蜘蛛と歌舞伎役者を象徴するものとは……うーん、お手上げです!
1不思議な組み合わせが妙を生んで、新しさにつながっている気がしますね。 蜘蛛と歌舞伎役者と、大蛇それに驢馬。狐。心理学や霊話など、この組み合わせはベタな繋がりとして中々読めない気がします。一つの話の中にこれが出たらこれと、ありきたりな連想で繋がる登場人物のパターンを壊して、新しさにつなげていますね。舞台も変わってます。デパートで、お買い物ですか。頭追いつかないわ、これ。どうやって考えついたんだろうと興味深い。 全体を通して、一連なりの変わった歌絵巻みたいになってると思いました。朗読してみると面白さがより伝わってきそうだ。あまり人気は今のところないが、この作品音として頭の中で読み鳴らすと中々味わいがある!
1私もガラクタ買い込んでるかも、と思うと恐ろしくなりました。
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