台風の目に見放されて
今にもナットが外れそうな鉄骨に
指一本で引っかかる風の子
寂れた渡場で船がひとりでに動いて
私は自ずとざわめいたりする
許されない歌を口ずさんで
ちょっと罪人の味を楽しんだりする
そして今ついに強風が吹いて
あの子は塵になってしまった
片道切符すら使えなかった
あのボサボサ頭を思い出して泣いた
凍える魚がここにいる
そういう魚がいる
怖くもないのに鱗を逆立てて
逆らえない流れに自らを刺すの
死んだも同然と言われたのなら
余計に生きやすいと笑ったね君は
よちよち歩きで粉乳すら咽せて
何を言っているんだろう
私は笑ったよ咳の際に血を吐いたけれど
パラボラが折れてしまった
よくわからないタンクも飛んでいった
この世界はそれほどの価値がある?
そう思ってもまだままなる私
適当な映画を観て適当に没入して
口ずさんだセリフが妙に合ってて
あの子をふと思い出してまた泣いた
凍える魚がここにいる
そういう魚がいる
綺麗な鱗を全て差し出してまで
自らを大切する人
おかしな話、と笑った際にまた咳をして
真っ赤な手のひらは夕暮れだった
ああそんな魚でいたい
凍える魚でありたい
身体震えばポタポタ落ちてゆく
無数の虹の光とあの子の塵としての、
おおきないのち
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 533.8
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2025-04-01
コメント日時 2025-04-21
#現代詩
#縦書き
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| 可読性 | 0 | 0 |
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2025/12/06 03時51分08秒現在
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もう! あなたも出歯亀ですか! >片道切符 >咳の際に血を吐いたけれど この部分に見覚えがあります。 ただし、書いた本人としては、 詩を読むときに「自分ごと」と錯覚して読んでしまいます。 その上での感想ですが、 嬉しくて泣きそうになりました。
0凍える魚はアウトローな生き方をする者を表現しているのかもしれないなと思いました。 少しだけ寂しくて悲しくて、それでも追い風に体をさらしながらも生きてゆく姿が思い浮かびました。
0レモンさん、コメントありがとうございます。
0自分の適正体温を求める詩なのかもしれない。 「私」は、「許されない歌」を口ずさんだり、映画の台詞を適当に口ずさんだりするが、それが自分の口に合わないからか、繰り返し血痰を吐いてしまっている。「君」を「笑う」ことについても、本当は身体が拒絶しているものなのかもしれないが、自然と笑ってしまう癖が染み付いていそうです。 その場の流れや風に流されないような(台風の目に攫われないような)、海の温度に異を唱えるように鱗を逆立てるような、「凍える魚」への憧憬。「みずからを大切する人」というのはダブルミーニングで、自分を大切にして、かつ、身を削るような抵抗を表していそうです。
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