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子牛 和牛
朝 子牛たちを見回る。 肉になる 子牛の瞳 輝きて 「ミルクくれ」 股間に頭突き 激痛よ じっと見つめてくる。 毎日何度も出会うのに。匂いを嗅ぎ、舌を伸ばし、知らない世界を知ろうとする。 舐め回す ツナギの味は 何度目だ 舐め回す 外とツナギし 知らぬ味 世界広げし 牛舎の中 生後三か月から七か月は、この牛舎と近くの牛舎だけが世界だ。 二年後、大体肉になる。 走り出す 壁に阻まれ 引き返し 息を弾ませ 走りくるう 不幸なのかどうかはわからない。ただ安らかに眠り、食べては、走り出す。 飛び掛かる 体重100キロ やめてくれ 脱走だ 人員集合 血眼に 逃げた本牛 草をはむはむ 牛どつき 作業中 またどつき 根性据えて ヤジ牛来たり 柔らかい コラーゲン鼻 押し付けて 肺炎で 暴れ逃げて また走る 投げ縄投げても 逃げ走る 走り出せ。 肉になる、その日までは。 この子牛 いつか死なす だけど今 「安楽で」 「安穏で」 「幸せであれ」 体重が増え、肉が付き、いずれ別な牛舎へ行って、この手から離れる。 幸せに、そこで眠れ。 何であれ 苦難は越えて 牛たちへ 今日明日 その後もまた 肉にする 肉になる その日まで その日まで その日まで
子牛 和牛 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1701.2
お気に入り数: 2
投票数 : 3
ポイント数 : 9
作成日時 2021-04-12
コメント日時 2021-04-27
項目 | 全期間(2024/12/10現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 9 | 6 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.7 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.7 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
何かとても深いですね 子牛達の躍動感がまた何かの切なさを感じさせます
0実は今の仕事の様子になります。 今は肉牛(和牛)の子供を世話しています。 同じ敷地の牧場で生まれて、三か月から七か月の子牛が相手です。 それ以上は基本的に、また同じ牧場の別な牛舎に移され、その後肥育の系列牧場に行くことになります。 子牛の成長は早く七か月で大きいのは200キロ超えますね。 で、七五調の部分はその子牛とのやりとりほぼそのままになります。 いつかは死なせてしまう、自分が食べてしまうかもしれない牛を最大限幸せにしようとする日々です。
1確かに「肉になる」ために生まれた牛は人間にとって必要な存在なのですが、当の牛たちの意思は無視なので私に出来ることは食事の前に「いただきます」食事の後に「ごちそうさま」は言うようにしています。
0確かにできる事はそれくらいになりますね。 そして当の牛にそれを聞いたところで答えてくれませんし。 「いただきます」「ごちそうさま」せめてそう言いましょうか。
0羽田さんの「肉になる」フレーズは本当に強いなぁと思います。 >朝 子牛たちを見回る。 のなんてことの無い一言から >肉になる 子牛の瞳 輝きて の唐突な七五調が「ただ事じゃない」感をだしていて、自然と崩していた足を正座に直しました。どつかれたり、逃げられたりしてとても大変そうなのに、愛情を感じるのは「草をはむはむ」とか「柔らかい コラーゲン鼻」の「柔らかい」とかそういう筆者の感覚や眼差しのためなのだろうと思い居ました。 私も日々感謝して、いただきます。
0>自然と崩していた足を正座に直しました。 まさかそのように読んでいただけるとは。 書いた甲斐がありました。 どつかれたり捕まえたりで大変ですがなんだかんだ楽しくやっています。 では感謝しましょう。 「いただきます」「ごちそうさま」
1実際、これでもかと言うほど子牛と戯れ、どつきどつかれ、餌をやって、治療し続ける毎日です。 こんな日々だからこそこの詩が書けました。 ちなみに牛の鼻は本当に柔らかいです。 最早、自分の構成要素の一つが牛なのかもしれないので、自分とこういった作品は切り離せないかもしれないです。
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