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夏の記し(三編)   

作成日時 2019-07-14
コメント日時 2019-07-21

1 夏雨 梅雨の長雨にうたれていますのも 窓辺で黙って日々を記すものも ガラス瓶の中で酒に浸かる青い果実も 皆んな夏でございます あの雨のなか傘を忘れてかけてゆく 子ども、あれも夏、皆んな夏、 皆んな皆んないつかの夏でございます そろそろ夏は梅雨をまき終えて 蛍の光を探して野原を歩いております *** 2 夏の鶏冠 紫陽花寺の紫陽花が枯れてゆき 昼か夜か、ゆるりと池の蓮子はひらく いつだろうと息を吐くようにひらく 白雨に囚われた人から漏れるため息のよう しかし、それは曇天を燃やしてやって来た 色褪せてゆく庭を 歩き時に奔放にかけ 地を啄ばみ曇天を燃やす 焔のような鶏冠を頂き 枯れゆくものを見送り 咲きくるものを迎える 使者のように ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、の鶏が 梅雨を啄ばながらその鶏冠で 終わらない夏に火をともす いつのまにか蓮子がひらき 続いてゆく夏の小径を私の足は 軽やかに歩き白雨を突き抜けて 入道雲を呼びつけ使者になる *** 3 黄昏れる怪談 夏の放埓な草はらの彼方に 白く靡くのは子どもたちが言いますに 一反木綿だそうなのです また海に迎えば落ちてきそうな入道雲 あれが見越し入道だと笑っています 片目を閉じて一つ目小僧、物置きの 番傘は穴開きのからかさ小僧、はてさて では子どもたち君たちはなんの小僧か あゝ、楽しくてこの怪談はちっとも 涼しくないのです、子どもたちは 手を繋ぎ私の周りを周ります 夏の夕べに誰彼と行き交う人が笑います 後ろのしょうめんだぁれ?と 聞くなかに見知った子どもはいないので ひとつも名前を呼べません


項目全期間(2020/02/22現在)投稿後10日間
叙情性2626
前衛性33
可読性2020
エンタメ1313
技巧1515
音韻66
構成2323
総合ポイント106106
 平均値  中央値 
叙情性6.56.5
前衛性0.80
可読性55
 エンタメ3.31.5
技巧3.83
音韻1.50
構成5.86.5
総合26.531.5
閲覧指数:1201.0
2020/02/22 17時24分18秒現在
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コメント数(13)
帆場 蔵人 (2019-07-18):

タカンタ 様 コメントありがとうございます。三連詩、みたいな形式は初めてでしたがみて頂く所があったようで嬉しく思います。 二連目が少々、言葉の流れが良くなかったと推敲しているのですが、全体的には小品をうまく納められたのではないかと思っています。 ※2の四連目、二行目、脱字。 啄ばながら→啄ばみながら

藤 一紀 (2019-07-18):

こんばんは。 夏の匂いや温度や眩しさが(そこはかとない寂しさも含めて)甦るように感じます。もしかしたら、これからもこんなふうに体験しちゃうんじゃないかなあ、と。そのくらい共通の感覚にかかってくる作品だと思いました。

帆場 蔵人 (2019-07-19):

藤 一紀 様 どこにでもありそうな風景やいつかどこかで体験したような人の情景を平凡かもしれないですが今作では夏を主題に書いてみました。夏の匂いや温度などが甦るというお言葉、非常に嬉しいです。ありがとうございます。

田中修子 (2019-07-19):

梅酒のにおいがしました。蒸し暑い夏の景色がありありと見えました。そして、怪談ではヒヤリとしました。 くーっ、夏だぜ! 最高だな。 あ~面白かった。 ただ、私、帆場さんの、かっこいい系の作品が結構好きなんですよね。 大地のオード? 台所が廃墟? キャベツを掻っ切る? (うろ覚えでごめんなさい) ああいうのもまた拝読したいな~と思いました。

山咋カワズ山咋カワズ (2019-07-19):

帆場蔵人様、こんばんは。 「夏」という季節に覚える感傷が排除されていて、より肉感的な季節そのものが感じられました。 過去というよりは、現在もどこかに在る夏。蝉の鳴き声が、今にも窓越しに聞こえてくるような……そんな感覚を覚えました。面白かったです!

帆場 蔵人 (2019-07-19):

田中修子様 主題の夏を楽しんで貰えたようで。梅酒のくだりを拾って貰えたのも嬉しいですね。キャベツを掻っ切る 笑、いや間違ってない的確です。 ああいった作風の詩もまた書きますので宜しければ読んでやってください。ありがとうございます。

帆場 蔵人 (2019-07-19):

山咋カワズ様 ありがとうございます。そうですね、僕の個人の感傷よりは外にあるものをどんな風に捉えて自分なりの意味を込めるということを意識してみたので、お言葉嬉しいです。

survof (2019-07-20):

夏は特別で不思議な季節ですね。夏が深くなればなるほど、日常の膜が一枚一枚、皮膚の呼吸を裏切りながら時間を窒息させていくようで、私の場合、自分の存在までもが陽炎になったような感覚の襲われたりするものですが、この作品においても「語り手」の存在は暑さで蒸発してしまったかのようにやはり希薄で、夏の湿度がそのまま語りかけてくるような、そうした錯覚を覚えます。そしてこの作品のもつ感触は、私が夏という季節において日々覚える感覚、つまり自分自身の存在の希薄さ、曖昧さ、もしかしたら蜃気楼なのではないか、という浮遊するような感覚にとても近く、この作品の一つ一つの巧みな表現が私のなかの様々な夏を記憶の断片として丁寧に映写し始めるような気がいたします。

千才森 万葉千才森 万葉 (2019-07-21):

読ませていただきました。 夏ですね~。異なる感覚を刺激されて、色んな夏を楽しめました。 みんながイメージしやすいものから挙げていってもらえると、作品に入りやすくて良いですね。 >皆んな夏でございます この一行で、すっかり詩の中に飲み込まれた感じがしました。 2の夏の鶏冠に、作者さんの感性が目一杯溶け込んでいて惹かれます。 夏雨と黄昏れる怪談では、みんなが知っている、もしくは辿ったことがある記憶を呼び起こしているように感じました。 一方、夏の鶏冠は、景色の中に潜む心理を、独自の感性で拾いあげて描写されてますね。 曇天を燃やしてやってきた。この文には凄く惹き付けられました。 ただ、1と2に比べて書こうとしているテーマというか、情景というか、そういうのがぼんやりしちゃってるのかなって感じたのです。 1と2では、名詞が強く前面に出てくるから、余計そう感じるのかもしれませんけど。 わたしは描写が好きでして。わたしの好きに弄るならという話になりますけども。 もっと盛り上がるような描写にしてみたらどうだろうか、と思ったんですよ。名詞に代わる鋭い強さを描写に持たせる。でも、あまり「人魂」とか「火を掲げた行列」の様に幻想的な感じで書いてしまうと、その後に続く妖怪と被っちゃうんですね。 んー。もっと静々とした雰囲気を作り、お盆に寄せた描写も面白そう? 舞台がお寺では無くて神社だったら、わたしならお祭りに書きたいところです。火を持って振り回すような勇壮なお祭りですね。全体の雰囲気が壊れるかな。 妖怪も、こう書くと黄昏の雰囲気に良く合いますね~。 てか、黄昏れる怪談っていう響きが好きです。「黄昏れる」も「怪談」も、広がりや伸びを持った言葉っぽくて、端っこから溶けて消えていくような世界観を覚えます。 この感覚が、作品の終わり方によく似合うんですよ。 この時期にピッタリの、五感で夏を感じられる作品でした。

藤 一紀 (2019-07-21):

再レス(補足)になりますが。 私が「甦る」と書いたのには理由があって、実際に経験している夏っていうのは、かなり散文的で、まったくもって平々凡々なんだけども、ここに書かれた「言葉の夏」に触れて、ああ、きちんと意識したことがないけど、夏ってもしかしたらこんな感じなんじゃないかな、と感じたんです。そんなふうに潜在的には感じてはいたかもしれないけれど意識化(言語化)されていない部分に、この作品の言葉が触れてきたように思う。だから、言い直せば、経験していない夏を経験させてくれるような「言葉の夏」であって、初めてなのに甦ってくる感覚、ということです。その意味で、多くの人の内部に「共通」してある未だ言語化されていない感覚にひっかかってくるのでは、と書いたのでした。

帆場 蔵人 (2019-07-21):

survof 様 >夏の湿度がそのまま語りかけてくるような、そうした錯覚を覚えます もうこの感想をいただけただけでありがたい、です。詩で描かれた夏、というものが読み手の中に響いてその人が感じている、若しくは夏とはこうであるかもしれないと浮かび上がってくる。 茹だるような夏に外にいて自分を遠くから見ると陽炎のように揺れているような、溶けこんでただの風景になったような、不思議な気分になる、瞬間ぎ夏にはある気がします。 コメントありがとうございます。

帆場 蔵人 (2019-07-21):

千才森 万葉 様 お祭りや縁日の屋台なんかも夏らしくていいですね。火のイメージを様々に広げていくとまた違った作品に繋がっていきそうですね。夏の記し、と題うって何十編と連ねていくのも良いかもしれないですね。ありがとうございました。

帆場 蔵人 (2019-07-21):

藤 一紀 様 補足、ありがとうございます。甦る、なるほど。普段、意識していないが潜在的に感じている夏というものへの感覚。普遍というと違うのかもしれないですが、経験していない夏を経験させてくれる言葉の夏、そのように書いて頂けて嬉しいですね。自分が目指しているところでもあるので。

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