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首を絞められた男の肖像
白い壁がゆっくりと血に染まる その血は呼吸の形をしていた 舌は石膏のように固まり 目は天井のひび割れを数える 締めるものは死に 締められるものも死ぬ 肛門が開く それは千人の青年の肛門 一斉に開いた肛門から 内密にされている告白が 弾き出される ヘルベルトは二十五歳の誕生日に 赤い縄を買った 彼の首は白く細かった 「僕は、 チョコレートが好きですよ」 愛の名を呼ぶことはできない 声は指の圧力のなかで折れ 彼の喉からは無数の蛞蝓の死骸が滴り落ちる 白目を剥いたままで移動する 白目を剥いたままで食事する 白目を剥いたままで眠りに落ちる 時間は首輪になる 丸く濃い影は 彼の膝に座り 欲望は 花瓶のなかで腐りはじめる 裸体で四つん這いになる 千人の青年が陰茎を硬くする 切断された四肢が喜びに痙攣する 切断された生首が絶叫する 押し寄せる真紅の濁流 麻痺した脳みそ 臭そうな足 臭そうな肉体 絞められた瞬間 世界は彼の内部で裏返り 痛みは 蜜のように甘く 蜜は 死のように静かだった 静かな部屋 感覚の部屋 灯りはつけない 咀嚼の音が聞こえる 「あなたは、 チョコレートは好きですか?」 彼の頬を伝う涙は もはや涙ではなかった 存在そのものが自らの重さに溶けた跡だった 締めるものは震える 締められるものも震える 声なき絶叫の連鎖 痙攣と静止 この肖像を見つめる者よ おまえの喉もまた 見えない手によって ゆっくりと閉じられている
首を絞められた男の肖像 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 347.9
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-10-27
コメント日時 2025-10-28
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


こんばんは。 硬質な文だなと 目を通した瞬間に感じました。 この詩の持つ雰囲気に引き込まれてしまいましたね。 そして、どうしてでしょう。 >>「あなたは、 チョコレートは好きですか?」 の一文が 読み終えたあと一番瞳の奥に残りました。
0何か悟りの書のような。しかし決して説教臭くないところが、ストロングポイントだと思いました。滑らかなチョコレートを食べているようなそんな感じがこの詩にはふさわしい印象なのかもしれません。
0諦めるのものは死に、諦められるものも死ぬ。あなたはチョコレートが好きですかと言う問いかけ。答えが先に有ったような気がする詩。この肖像が、あの肖像が世界で、詩になって居るのかもしれません。
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