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偽夏の瓶詰め
至らずの眠りに水を注いで、 名前も知らない花になろうとした。 窓に腰掛けて光の混じる黒髪を、 風の櫛で梳かして煌めく砂粒を落としてた。 寝具からは満潮の香りが、 積み上げた小説には見慣れない題名が記されていた。 「海渡りは簡単なもんじゃない。夜は星屑を拾って食べなければならんし、朝になれば独りにならなくちゃだめだ。濁らずに、純粋でなければ夏には帰れん」 紙片に綴られた文字の群れが、 偽物の夏を伝えてきた。 「往くよ。僕には海が必要だ。ちっとも大きくなれなかった、青い心と渡りにいくよ」 裸足で今すぐ駆け出して、 波打ち際で瓶に詰めた。 曲がりくねる白い泡が揺らめいて、 綺麗な貝殻をさらっていった。 水平線に残る影はなく、 朝の残りが踵を濡らした。
偽夏の瓶詰め ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 684.7
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-09-22
コメント日時 2025-10-03
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


「偽夏の瓶詰め」とは、きっと読み手のことを指しているのだろう。だとすれば、それをどう開封するか――連ごとのまとまりや空行の含みが、さざなみのように浮かんでは消え、泡のような記憶からふんだんなポエジーが言葉として現れ、美しさを魅せる作品。読み手はそれらをどう捉えようかと足を止め、鑑賞(感傷)してしまうような。 >積み上げた小説には見慣れない題名が記されていた。 >「海渡りは簡単なもんじゃない。夜は星屑を拾って食べなければならんし、朝になれば独りにならなくちゃだめだ。濁らずに、純粋でなければ夏には帰れん」 初読。長い題名が続くことで読みが止まり、もう一箇所ある括弧も不要に感じられた。そういった、誰が、何を、と字面通りに思わせない仕組みを意図するなら、括弧に頼らず行替えや空白で処理したほうが、自然に言葉の流れが浮かび上がる。連の長さや文末、句読点など細部まで気を配ることで、書かれている内容だけでなく、視覚的・呼吸的な読みのリズムが立ち上がり、詩の姿がより美しく見えるのではないかと思った。
1コメントありがとうございます。 私自身はなにか、詩について学んでいるわけでは一切ないので分からない部分もありながら成程となりました。 この作品についても去年のもので正直記憶があやふやで、気分で書いたものだと思ってます。しかし私個人としてはただ書ければ、その場の瞬間的な感情が溶けてしまう前に思いを形にできればなということが大切で、作品に合理や理論、理屈を込めるのはまたこの子とは全く別物になって窮屈なのかなと。足りない頭によぎったり、なんて。 改めて真剣にコメントして下さり大変光栄です。
0至らずの眠りに水を注いで、 名前も知らない花になろうとした。 冒頭の二行にはやられた感がありあたまをそそられます。 ただいま。おかえりなさい。 しりゅう(天才2)くん、黒髪くん、やあ、門を開いてくれたのですね。こちらの詩を拝見すると光明が差してきます。ナンセンスじゃなくて、有無やはり少し違う味のする。何本かの本線、作品ですね。 というわけで、閉ざされた理由もわからずまた開閉されたわけですが、 こちらの作品は少しおもしろいな、と。 今年のような狂暑が続くならば、もはや偽夏どころか偽の季節になったと感じてしまいますね。 ~裸足で今すぐ駆け出して、~曲がりくねる~貝殻をさらっていった。 偽の夏ならばこの辺りの行間で否定の否定とか捻りもほしいかな、との感じを持ちましたが、 ああ今年は小さな蟻が多くて困ります。
1「海渡りは簡単なもんじゃない。夜は星屑を拾って食べなければならんし、朝になれば独りにならなくちゃだめだ。濁らずに、純粋でなければ夏には帰れん」 こんな紙片の文字が印象的です。星屑を拾って食べるとは?濁らずに純粋でなければ夏には帰れん?と真摯にどういうことなのかと考えたくなります。 「往くよ。僕には海が必要だ。ちっとも大きくなれなかった、青い心と渡りにいくよ」 そしてこんな偽物の夏?青い心とは何か。海が必要な僕の内実は?「往く」の意味。「行く」でもなく「逝く」でもなく「征く」でもなく。「往くよ」の本当の意味。 タイトルも謎めいて居て。新旧聖?新しい旧約聖書の意味だろうか。それならイエスキリストの意義を認めない主義なのかもしれない。ヘブライ語、紀元前のユダ国、イスラエル国の世界しか認めない原理主義気なのだろうかと、この詩を読みながら考えてみました。
1コメントありがとうございます。 その通りで、私たちの知る夏は置き去りになってしまった感覚がありますね。 街がまだ町であった頃、田園に走る子供たちであった日は昨今の猛暑では無かったと記憶しています。 猛暑ではなく猛夏と呼んだら少しは日本らしさが出てきたりするのでしょうかね。 成程捻り。私の学の無い頭でも精一杯、理解できるように努めます。
0コメントありがとうございます。 やはり考えることは私も貴方も両者共にしなければいけない大切なことで、片方だけでは成立し得ないというのが人間の面白いところ。そうやって私たちの手を離れた作品は、知らない花を咲かせるものです。きっと… 私個人としては新約の方に頑張ってもらいたいと思っています。旧約も勿論素敵です。ただ何方の天秤が片方に強く傾く、というのは世界的に見ても好ましくはないと、そう思うのです。 少しばかり西洋史、歴史の勉強なんてどうでしょうか?あちらの世界にはキリスト教は欠かせませんから、きっと今まで聞いた事のないような面白い西洋的思想が分かるはずです。
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