ひきだして喉をとじる 螺子 さまよいつづける
もう意味はこわくてさわれない
呼吸器がまわる天蓋 ふくむと、やあらかい織りめ
窓辺に。天井裏に。唇の影に。
仮止めされたショーケースに並ぶはすず。
萌芽だった「わたし」と、しめりけ
凝視している。溜息、……ただし、ひかりのむこうで。
残るのはからっぽの部屋と、開かれた扉だけが、正しい
それでもいま、ここに破水したのは空のほうだった
みっつ折りのまま寝返りを打つ網のあいだで骨が増え
うしろむきにあったような子宮の根を張っている
むしろ、ぬるい風は、すでに古びてしまった
なかったほうの干潟が吸い込むたび滲み出ていく
「それなら永遠にとじたまま」と鍵穴が笑う。
「あけなくてもいいの」と砂嚢が答える。
「あけてもいいの」と朝焼けが囁く。
急に、なにもかもが語彙になりすぎた
百の瞳が埋め込まれた夜の内側で、
ユスリカ!ユリイカ!って言ったの
しぃ、というかけらがぱちんと立てた
指先で拾いあげるinlay
覗き込めば未了であることについて。
微笑をつくるたびに《みずかさ》を注ぐよう
ことばと、
ことばと、
とけあわず、むしろうえていた あれは刺し貫く
まだ気圧に跳ねる花器にこびりついた
埠頭のくさび
いまも触れようとするたび、そこからおちていく
含まれる。前に ぐず、と崩れた
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 691.8
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-07-16
コメント日時 2025-07-18
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:691.8
2025/12/05 19時00分22秒現在
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たくさん言葉を知っていらっしゃいますね。攻める感じの詩だと思いますが、象徴の多い、独自性 のある詩だと思いました。もう少しメッセージを明確にしてもいいかもしれない。
0こんばんは。 >>急に、なにもかもが語彙になりすぎた 百の瞳が埋め込まれた夜の内側で、 ここがサクッと転調を感じて良いなと感じました。
0“もう少しメッセージを明確にしてもいいかもしれない” と書かれていましたが、その“微弱なもの”として感じられたメッセージがあれば、どのように届いたのか、またなぜそう感じられたのか、教えていただけると嬉しいです
1“サクッと転調”って言葉がぴったりだなと思いました。「意味」「語彙」「ことば」みたいな語を詩のなかで暗喩として散らすばあい、どこまでしずませるか。そのまま使う主張も込で、むしろ“決めてしまう”ことを壊したくて使っているのかもしれません
0失礼しました。明確なメッセージがありましたね。赤ちゃんの誕生です。しかし、やはり迂遠なところはあり、でも全く厭味はないです→「いまも触れようとするたび、そこからおちていく 含まれる。前に ぐず、と崩れた」 ちなみに、タイトルの意味を教えてくれませんか。
0あー、すいません、タイトルですね。読めませんでしたか。「しおなめくじ」です。 たとえば、“汐蛞蝓”と“赤ちゃんの誕生”を踏まえて考えていくと、この詩がどういう感覚のなかで書かれていたか、もっと見えてくるところもあるかもしれませんね。 汐とは、月や太陽の引力で海水が満ち引きする現象。さし引きする海水。ある事をするのに適した時。よいころあい。潮時。 じゃあ、蛞蝓とはなんだろう。暗喩かな……海にいる蛞蝓のようなものだろうか。などなど、ひとつひとつ考えていくと、おもしろい。 黒髪さんにとっては、明確な一つの定まりがあって、見えた“赤ちゃんの誕生”が、読み手としての心のなかで、かたちになっていった。それが「さわれるようになること」だったのかもしれません。作者としては、読み手が受け取ったものこそが、その詩の中に“実在”しているものだとおもっています。
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