ダンスを忘れたペテン師さえ、踊り出したくなるように、
狐の面をかぶった男が、隠された美貌をさらして。
東風は時間を盗む、南風は僕らを刺す、
西から吹いてくる風は僕らの痴情をくすねる。
電子音が鳴り響き、リズムを刻めば今すぐ僕らはアウトローと化す。
目に見えない世界の扉を開くのか。
名前は忘れて失われたままで久しい。
光の水溜りのある方へ、呼び寄せられては、裏切られて泣く。
希望なんて言葉は脆くて、壊れやすいように、
あっちもこっちも涙と欲望の、
釣り糸が垂らされて。皮肉な言葉さえ消費される時代。
そのまま放っとけない、蒼い顔色をしたあの娘とあの街に、
問いつめて突き詰めるのは、あなたはどうする、どうする、どうしたいんだ?
僕は世界が首つりする方に賭けていく。
愛の水を含んだままのグラスを飲み干すならば、
溺れるぐらいの媚薬の効果にどうか気をつけて、何度も。
ジョン・レノンの神話には、誰もが騙されたままの、
仕掛けが幾つも張りめぐらされて、僕らは途方にくれてる。
何度もそそのかされては売られ、幾度も落ちぶれては掴む。
その繰り返しの中で目に見えたものが揺らがない「光」。
彼らが飲、みこんだ、まま、の鍵を、奪い取る方法をあなたが見つけるために、僕は深緑の魔術めいた息を吐く。
優しさも甘みもはねつける狐の面の男は、
僕らが口に残している傷跡にも似ていて、
少しくらい分かりあえたかと思えば、
すぐさま舞台をくつがえすアルレッキーノ紛いの策士だ。
そいつは、僕とあなたの嘘と隠しごとも相まって、
オペラの劇場で撃ち抜く弾丸のように、僕ら自身も締めつける。
このまま無駄に過ごせない、残り少ない時間と暗闇を、
そこでうずくまるもう一人の自分に捧げて、救済するため、血を流し、
僕は世界が討ち死にする方に賭けていく。
反抗するだけの水を、たらふく喉に流し込んで、
傷ついたままで部屋から一歩も出られないのなら、脅えず。
一つ一つのトリックと、がんじがらめの罠の中、
ガラとダリの神話にも偽りがあると、気づいて今すぐ光りだせ。
何度も乗せられては誘惑に売られ、幾度も気狂いしては見い出す。
その涙と後悔の日々で手にしたものが揺らがない「剣」。
彼らが隠、しこんだ、まま、の答えを、奪い去る方法をあなたが見つけるために、僕は新緑に乗る風を呼ぶ。
いつまでも子供じゃいられないのに、正気になるか狂気になるかを、あどけ
ない女王に訊かれれば、僕はアウトサイドでのたうち、幽閉から抜け出す王
になる。
愛の水を注いだままのグラスを飲み干すならば、
どうかレノンの神話に嘘があることにも気づいて、どうか行き先にお気をつけて。
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 556.3
お気に入り数: 0
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ポイント数 : 0
作成日時 2025-05-08
コメント日時 2025-05-09
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
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| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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| 総合ポイント | 0 | 0 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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2025/12/06 02時18分50秒現在
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何を言いたいのだろう。 と考えました。 偽りからの脱出、でしょうか。 いつも、とても出来が佳く、知らない予備知識が必要であり、コメントするのはとても難しいのです。 狐の舞踏会を、偽りの世界とし、 そこから脱出をする“僕たち”が、強い言葉で、力強く、雄弁に語られているのだと思います。 佳いフレーズが、たくさんあるだけに、どれかを抜き出すことが難しいです。 結局は、シメに使われている >どうかレノンの神話に嘘があることにも気づいて、どうか行き先にお気をつけて。 ここが特に佳いと思います。 (個人的には、調べた中で、ガラとダリの話が面白かったです。ただし、ガラだけでは検索にヒットせず、ガラ ダリと入力する必要がありましたが。) いつもながら、 力ある作品で、お見事です。
0レモンさん、コメントありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。興奮しています。先日誕生日を迎えて、年齢的にも大台に乗ったのですが、その時、考え思ったのは、もう人生半分生きてきたのだから、誰かに気を使うような作品を作るのはやめよう、自分が好きな作品だけ書こう、ということでした。 狐の舞踏会。狐がばかしあう世界、舞台、というニュアンスで書いていたので、偽りの世界からの脱出、というのはかなり近いと思います。ここで描かれているのは、もしあなたが苦しい想いをしているのなら、間違っているのはあなたではなくて世界の方ではないかという観点です。僕は幼い頃から物質的なことよりも、精神的な事柄が好きだったので、その気質がかなり反映されていると思います。 だがそれよりも何よりもこの詩は一切妥協しない作品だったので、お見事とまで言われて嬉しいです。めっちゃ気持ちいい。ありがとうございます。
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