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紙の塔
読みかけの本ばかり転がっている 開きっぱなしで 床にもベッドにもキッチンにも 栞の代わりに切符を挟んだ 映画のチケット、商店街の福引券、 水分を抜いたら永遠になりそうなものを 最後に読んだページに挟んだ 途中で読み飛ばさず 最後まで読み切って書棚に仕舞うことが これほど難しいだなんて 幼い頃には夢にも思わなかった ちゃんと完読出来た物語は 一体いくつあるだろう あらすじだけ読んで心躍らせ きっと結末はこうだろう、とか 勝手に妄想を膨らませて いざ書店で手に取り表紙を見ると それだけで満足してしまって なんだかいちごの先っぽだけ齧ったような気分だ 鞄の中に厚みと硬さを感じながら家路に就くのは気分がいい 未読の本が綺麗に積み上がっているのを見ると心が満たされる いちごの全部が、先っぽと同じ味だと 勘違いしている時が1番幸せだ いつか鋭い酸味に頬を叩かれる日が来ることも知らずに 口に含んだ言葉を咀嚼し味わうには この肉体は未だ若すぎる 苦味を旨味に変えるには もう少し時間がかかりそうだ 下手に引っこ抜けば一気に崩れてしまいそうな 眼前に聳え立つ積読の山は 歯抜けのジェンガのように傾いて 幼い味覚は 今にも倒れそうに揺れるバベルの塔を 苦々しそうに見上げている
紙の塔 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 618.0
お気に入り数: 2
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2025-10-17
コメント日時 2025-10-24
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


溌溂とした精神の輝きが感じられました。積読は、部屋を埋め尽くすほどだと問題がありますが、興味関心の広さと旺盛さを思わせますので、好ましいものですね。
1積読について書かれてる...!?私の出番のようです。 じつは、その人が厨二病かどうかの見極め方 →ヒント:大量の積読、 というのがかねてよりの持論なのです。 まあ私の事を話してますけどね。 >いちごの全部が、先っぽと同じ味だと >勘違いしている時が1番幸せだ なんだろう、わかりみの海。 それも深海である。 厨二こじらせてもうちょい先にいくのか、 それとも踏みとどまるのか、、 そんなモラトリ特有のとっても大事なことが書かれてあるような気がしました。
1わかりみが凄すぎるし、これを題材にした大胆な発想力がいい。積み重ねるは罪重ねると読む。読まないか。とにかく傑作だ。私はいつも本を読むときはオチを読み、冒頭から読み始める。どう繋がるのかなって。オチよりも接続の仕方や構成に大変興味がある。それはショートケーキの苺を最初に食べるようなもので、実は幼い行為なんだなと思い知らされた。
1この詩は積読の一部には決してできない、最後まで味わってしまう作品でした… 最高です!
1味覚が重要な意味を持つ詩でしょうか。幼い味覚と言う比喩的な表現。苦味を旨味に変えるには。口に含んだ言葉と言う言い方から、そもそも実際の食べ物では無い味覚。積読の本が印象的です。バベルの塔と言う言い方も出て来ます。総じて詩の構築に傾注した詩だと思いました。
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