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フィラデルフィアの夜に 58
フィラデルフィアの夜に、稲妻が落ちます。 何も見えない夜の事です。 酷く静まり、いつもある喧噪さえ聞こえてきません。 じっとりと湿った空気が重りとして圧し掛かってきます。 光。 突如として。 光。轟音。 稲光が落ちた。 雷。 突如として大雨が降り注ぎ、稲妻もまた爆弾の如く着弾する。 雷 何かが、煌めいた。 雷。 何かが、うねり、歪み、この地の土の中から出てくる。光を帯びて。 雷。 輝く細長い何かが稲妻の弾着のたびに、見える。 雷。 蛇の、蛞蝓の、蚯蚓の、蛭の、その如くのたうち、這いずり。 雷。 蛇の、蛞蝓の、蚯蚓の、蛭の、その如くのたうち、這いずり回り蠢き犇き。 雷。 這いずり周り蠢き犇き、何かを形作ろうとしている。 稲光が雷光が、白銀に反射させる。 這いずり回り蠢き、細い細い銀色の針金が何かの意思に従い、動く。 それは、十本の棒を作り。 十本の棒の土台を作り上げ。 合掌した。 大きな雷鳴。雷光。稲光。轟音。 合掌する、祈りを捧げる手の形が、ぬかるんだ土の上に作り上げられています。 その向こうには人の顔に見える汚れが、壁に描かれていました。 煤と汚れとカビによって、まるで誰かが描写したかのような、悲しそうな、微笑んでいるかのような、御顔が。 大雨が涙として、全てを流し去ろうとするかのようです。 大きな雷、稲妻が漆黒の中、照らし続けました。 光。 朝日が、一筋入り込みます。 澄んだ空気の中、祈る何者かの顔と手がそこにはありました。 誰もまだ見つけていない、祈りが。
フィラデルフィアの夜に 58 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 433.3
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-09-15
コメント日時 2025-09-17
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


フィラデルフィアシリーズは、いつも雰囲気がありますね。作品によって、色んな文体を使い分けられる羽田さんは、実力者だと思います。単純に割り切れない生。雷と祈りの情景に、こころ感じるところがありました。
0なかなか業物だとはおもうのだが、最初と最後の空白は不要とおもいました。
0気が付いたらここで58作品も書いてしまっているこのシリーズですが。(合計85作品目) しつこく書き続けるうちに色々やれるようになったようです。 このシリーズ特有の不可思議な世界観が上手く出せたました。
1空白は状況変化と時間経過を現すのによいかと思いましたが。 余分でしたかね。
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