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歩道の葡萄
見慣れたゼブラ模様 青信号を傍目に無表情な通行人は 足元の宝物に気付かない 首筋伝る涙 青を待つしかないだけの 視界をひとつ持て余したわたしは 青空に浮かぶ叢雲を見た 一日が終わる そんな気だけしていて あの日見た蝶紋は わたしだけの、宝物 惹かれていく 白に 美しい雲を縫うカラスに 「あなたも大変だね」 足元を忘れ叫ぶ 見飽きたダイヤマーク 一瞬の優しさすら捨てる運転手は 信号のない横断歩道に気付かないふりをして 目尻滲む汗 優しさを待つしかないだけの 視界をひとつ忘れてきたわたしは 足元に眠った蝶を見た 一日が始まる そんな気だけしていて あの日見た小さな事故は わたしもきみも、共犯者 轢かれていく 黒に 淑やかな色を纏う蝶に 「お悔やみ申し上げます」 大空を抱え託つ ┌┘暗転└┐ 青になった信号はまた わたしを自由に突き放して どうせなら縛っていて欲しいのよって ないものねだり . . ひたと轢き殺された彼女のあと 置き土産のように転がるのは 季節外れのぶどうひと粒 まだみずみずしいそれは きっとそこに鎮座して間もない 「ただいま」 先ほど冷蔵庫の奥の方に ぶどうを一房、仕舞い込んだばかりの孫は 玄関に立ち尽くすおばあちゃんを見るなり ずいぶんと取り乱した様子で 「急に食べたくなってねぇ」 窶れた孫をつぶらな瞳で見つめるおばあちゃんは いつもの手提げ袋から黄緑のぶどうをチラつかせながら それはもう鷹揚に、 笑った彼女の側頭部 縫い目は赤黒くて グロかった
歩道の葡萄 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 482.4
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-08-27
コメント日時 2025-08-29
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


あ、「車道の蝶」を下敷きに新たに書かれたのですね。 物凄いホラー作品になっていますが。 >「ただいま」 以前と以降で作品が切り離されたように感じました。 というのも、 >暗転 から >「ただいま」 までの間の「彼女殺し」から広げたのでしょうが、 どうも、孫がおばあちゃんを殺したように感じます。 おそらくね、 >グロかった で、シメたから纏まりのないホラーになってしまったけれど、 更にまとめる一文、例えば、 色んな死がある とでも書き加えれば、纏まるのではないかな?と思いました。 詩に説明的表現は必要なく、 纏まる必要もなく、 この終わり方には爆発力もあると思うのですが、 私の好みとして。 ありがとうございます。
1コメントありがとうございます。 実はこれも実話なんです笑。蝶を見たのは結構前だったのですが、先日、例の車道のそばにある歩道に、まんまるぶどうが一粒だけ落ちてました。 しかも潰れていないし、猛暑の中まだ拾い食いできそうなほどには新鮮そうなものだったので。この交差点、なかなか面白いなと思い…笑 仰る通り、締まりのない文章だと思います。私自身、文章の締めを書くのは下手だし苦手なので、レモンさんのアイデアとても参考になりました。 ありがとうございます。
0返信先間違えてしまい、二重コメになっております…。 失礼しましたm(__)m コメントありがとうございます。 実はこれも実話なんです笑。蝶を見たのは結構前だったのですが、先日、例の車道のそばにある歩道に、まんまるぶどうが一粒だけ落ちてました。 しかも潰れていないし、猛暑の中まだ拾い食いできそうなほどには新鮮そうなものだったので。この交差点、なかなか面白いなと思い…笑 仰る通り、締まりのない文章だと思います。私自身、文章の締めを書くのは下手だし苦手なので、レモンさんのアイデアとても参考になりました。 ありがとうございます。
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