日付の違う紙たちが
一つの袋に収まらず
私の手の中で
かさ、と鳴る
これは
説明のためではない
忘れないためでもない
ただ
ここまで来た
という証明
からだの兆し
胸の奥が
早足になる
息が
自分のものではなくなる
昼間なのに
夜の影が
肩にのしかかる
そんなとき
小さな白い形が
体内で
風向きを変える
世界は
少しだけ
私を待つ
受け取った知らせ
ある日
薄い通知の向こうから
名前を呼ばれた
まだ
役割も
形も
はっきりしない
けれど
夕方の空が
次の場所へ
私を押し出す
仕事終わり
知らない廊下
知らない呼吸
知らない時間
そこに
循環が
始まる気配
休んだ日のこと
休みをもらった
理由は
部屋と
機械と
生活の整備
けれど
別の場所で
誰かの意識が
途切れ
遠くのサイレンが
記憶を
引きずり出す
昔
目の前で
崩れた身体
床の冷たさ
人の重さ
思い出すことは
選べない
書くという行為
迷って
鞄に入れた
薄い冊子
仕事の合間
帰り道
細切れに
書かれた文字
正直
書かないと
崩れていた
書き終えたあと
胸の奥で
別の声が言う
――使える
その声に
私は
自分を嫌う
朝
番号を押す
現実に
戻るための
小さな儀式
手渡すもの
褒められた
だから
持ってきた
誇りではなく
確認
これは
確かに
私の手を
通ってきた
少しずつ戻る
数日後
夜の息苦しさが
後退する
昼の時間が
広がる
頭の霧が
薄れ
明日の予定が
紙の上に
乗る
「次」が
存在する
視界について
見える日と
にじむ日
その差が
激しい
そろそろ
一緒に
白い部屋へ
行かなければ
支える仕組みを
調べている
これは
諦めではなく
構造の話
部屋は
順調に
空気を取り戻す
ある接触
半分だけ
取り入れた夜
そのあと
昼の道で
意識が
沈む
止まっていた車
近づく距離
緩む足
軽い音
連絡
交換
謝罪
その瞬間
思う
私は
運転席に
いない方が
いいかもしれない
昼と
相性が悪い
成分がある
書類と役割
一定以上
休むなら
紙が要る
今日は
その話
同時に
あれも
これも
迫ってくる
遠くの都市
名前だけ関わる会合
大きな集まり
迫る準備
誰かが
調整してくれる
かもしれない
それでも
私の手は
空かない
原稿の重さ
締切
数字
行数
それらが
私を
立たせている
破られた頁
繰り返された行為
捕まった人
戻された日常
思想
歴史
自由
実在の出来事を
扱う手が
震える
これは
机上の話ではない
だから
身体が
重くなる
それでも
壊された本を
書きながら
私は
壊れないように
呼吸を整え
部屋を片付け
文字を編み
ここに来る
これは
報告ではない
診察室に
置かれた
声
今日
話したいことは
この
余白に
あります
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 491.1
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-12-15
コメント日時 2025-12-26
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2026/01/28現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:491.1
2026/01/28 18時55分03秒現在
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“行間を読む”というのは、こういうことなのでしょうね…
1わたしが単語で空間を儲け行間で仕切るとき、 それは読み手に対して自由な発想(イメージ)を促す目的にも置かれます。 なので、文としては繋がりを持たせない。 この短く仕様された文節、改行、行間の目的は違うと思う。 上記の方が行間を読む。と、 コメントされている。 確かに行間を伴う詩はイメージを誘発してくる。 しかしこの詩自体は通読して読める文章に置かれていて、 ただ改行と行間の大きなスタイルだけが目に焼きついてくる。 では、このスタイルの目的は、 意味もなく漠然とした記憶を意図したものだろうか。 僕はこの空間で、逆にイメージを起こさせないような試みだと読んでみた。 これだけ短く区切られ、空けられてくれば、 言葉のひとつひとつが重くのしかかる。 そのことで、語り手(筆者)自らが強く立ち上がるのです。 「診察室に持ち込まれたもの」とは何か これは過去の記憶ではなく 現実の語り手(筆者)なのである。 つまり、これは語り手によって筆者自らが現実の自分と向き合うという。 診察室に持ち込まれたもの、 或いは、持ち込んだものは、 現在進行形の筆者自らで、 それらを覆う余白は錯覚に過ぎず、 そのことで読み手は撹乱されてくる。 考えられた形式だな、と惑わされました。
1久々利さん、コメントありがとうございます! この返信が遅くなりすみません? 確かに、この作品は、行間を意識しています。 そのご指摘が嬉しいです。
1メルモsアラガイsさん、コメントありがとうございます! 返信遅くなりすみません。 行間や余白の扱いについて、ここまで深く読み取っていただけたこと自体が、書き手としてとても印象的でした。 ご指摘の通り、この詩における改行や空白は、「行間を読む」ことを積極的に促すための装置というよりも、むしろ言葉を一つずつ現前させ、逃げ場を失わせるような配置として意識していました。イメージが広がる余地を残すというより、言葉そのものの重さや硬さが、読む行為の中で立ち上がってくることを期待していたように思います。 「診察室に持ち込まれたもの」が過去の記憶ではなく、現在進行形の語り手そのものである、という読みも非常に示唆的でした。余白が静けさや回想を象徴するのではなく、むしろ錯覚として作用し、読み手をわずかに攪乱するその点を指摘していただいたことで、形式そのものが語りの一部として機能していることを、改めて自覚させられました。 意味が曖昧なまま残る感触や、はっきりと像を結ばない読後感も含めて、受け取っていただけたのであれば嬉しく思います。 思考を促すような読みを共有していただき、ありがとうございました。
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