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邂逅
遠く掠める情欲の漣、 数限りなく連なる記憶の鎖。 夏空が過ぎゆく。 移り変わる季節に恋の端を乗せて、 気紛れな潮。 心の乱、それでも、 まだ君を求めるか。 風は北向き、雲の流れ速し。 時々惑う。 今生の焼け付くような、 この焦がれた恋慕に、 エンドロールは舞い降りるのか、と。 雑念を振り払い、肩で風を切るとき、 いつか見た景色が瞼の裏で消えずに、 走馬灯のように現れては残る、残る。 そこにもやはり君がいたからーー。 君になら、跪こう。 君となら、時を紡ごう。 たとえこの身が朽ちようとも、 君の笑顔があればいいから。 だから僕は君を娶る。 どう言えばいいか、 あるいはこんなチャンス、 二度とはないってことを、 ちゃんとちゃんと、知ったから。 風が潤みだす。 雷鳴が轟く。 君の心変わりを怖れて、僕は走る。 一刻も早く、君を抱き締めたくて。 この想い、星の海だって越える。 きっとまだ、 僕の心の淵に天使の影の残像が、 くっきりと見えているから。 俄にひっくり返る気紛れな曇天模様、 君の心のうちにも何処か似ていて、 でもその痛みさえもう知っていたから、 あますところなく愛している。 嫌と言うほどに、思い知った。 たとえそれが脆くも崩れ去っても、 まだこの出逢いの意味なら残っていると、 遠巻きな我儘に想いの端を乗せて、 この生に一縷の望みを託した。 ひと足早い凍てつくような夜、 がらんとした部屋の片隅で星を眺めても、 這い蹲ってでも、君の前では笑う、 そう決めたから。 もう一度、巡り会う時にしじまの淵を重ねて、 今度こそ底を打つ、そういう覚悟で。 世界が笑うように祈りながら、 僕もまた笑ってみせた。 君の瞬きに、世界が色づくのを、 息を呑むように、 僕はその時とともに、永遠に残した。 木々のざわめきが、 遠くでしいんと響いていた。 カラカラと喉が鳴るようで、 不意に脚が重くなった。
邂逅 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 368.9
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-09-14
コメント日時 2025-09-15
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


「君」詩ですね。 小細工なしの、男らしい、 いい文章です。タイトルもストレートで、 深読みしようがない。 新機軸の映画をはじめてみたときのような 情緒的にとらえきれない部分がほとんどなく、 新鮮さは薄いですが。 「君」が好き、とにかく好きなのであり、 その思いを言葉にぶつけているのが伝わってくる。 全体的に破綻もなく、ずっしりしている。
0お読みくださいまして、誠にありがとうございます。 お褒めにあずかり、とても感激しております! 失礼いたします。
0相変わらず、形容にセンスがありますね。つぎに、どんな展開を見せるのだろうと、期待を裏切らないで展開していく詩。だんだんと、世界が豊穣になってきていると思います。
0お読みくださいまして、誠にありがとうございます。 コメント、いつも心より感謝しております! 失礼いたします。
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