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ドローイング
夜になった 町はすこし遅くまで大きなあかりをつけていて そのあかりのなかを まだ多くのひとびとがランダムな速度で歩いている 前を見ているひと なにかを探しているひと だれかが他のだれかをまっていて また他の誰かは 愛をおわらせようとしている たたずむひと 迷ったふりをするひと わたしとむすびつかないすべてのもの 道路の橋を渡ると ひとびとの音が普段よりもハッキリとした かすれた笑い声 ひとことだけの挨拶 名前の呼ばれかた どれも疾く消えて つぎのひとやこえが重なっていく 朝は同じようにひらいて 夜はそれぞれに閉じていくのだろうか ことばを探していることだけがわかる 子どもたちはなにかに向かって まだ信じ切っている 大河のように流れていく世界のなかで わたしたちは ほとんどなにも持たない 昨日なにを食べたかさえすぐ忘れてしまう だれと会ったかも どんな顔をしていたかも ゆっくりと思い出せなくなりながら 今日もまた あたらしいことばを使ってしまう なにかを意味づけようと 本当は確かめようもないことばかりを 思い出したことがある 二十代のころ 大きな とてもきれいな河の見えるホテルにながくとまっていたときのこと そのときのわたしは なにかをほしがることすら思いつかなかった 焼け跡に生きていて(実際、空襲で焼け野原になった場所だった。)だから 流れる水が とてもうつくしく見えていた
ドローイング ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 635.8
お気に入り数: 2
投票数 : 1
ポイント数 : 19
作成日時 2025-09-05
コメント日時 2025-09-07
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 3 | 3 |
| 前衛性 | 1 | 1 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 2 | 2 |
| 技巧 | 3 | 3 |
| 音韻 | 2 | 2 |
| 構成 | 3 | 3 |
| 総合ポイント | 19 | 19 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 3 | 3 |
| 前衛性 | 1 | 1 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 2 | 2 |
| 技巧 | 3 | 3 |
| 音韻 | 2 | 2 |
| 構成 | 3 | 3 |
| 総合 | 19 | 19 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


最近の完備さんは弛緩している。でもなぜかまわりは褒めている。意味がわからない。
0最近の完備さんは多分疲れているんじゃないかな? だから疲れている人間が読むと沁みるんじゃないかなーと、昨夜「全くどいつもこいつもしょーもねーな(ネットの中の誰かではなくリアルでね)、あれもこれもしょーもねーな(自分に向けて)」って荒みきったメンタルで読んでかなり沁みました。 生きること、人間であること、失われゆく若さとか老いとか、諸行無常感が伝わってくるような作品。凡庸な書き手がこれ書くと作者のナルシズムが漂ってクサイんだけど完備さんの作品は作者の気配が消えついて心地よく入っていけるんです。まぁその大前提として高い技巧ありきですね。
0実験的な仮作なんでしょうけど味はある。 こういうのは成功すれば凄いものが出来上がるのだけど なかなかむつかしいものですね。
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