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水際の正体
ならの薪から香りたつ甘さを含んだ風が まとわりつくことなく滑るように去っていく 無数の粒子の配列が 眼前を行進しながら通り過ぎていく いくら踏んでも跡のつかないアスファルトの熱を 透明な靴底が吸い上げる 飲み込んだ音は泡となって空に消えて 掌に刻まれた無数の線が、 爪痕か皺か見分けもつかない 横隔膜を 風船のようにどこまでも膨らませていったら いつかすっぽりと収まるのだろうか 内臓が音を立てて漂いながら 船底にゆっくり沈んでいくのを 水面から手を伸ばして ゆっくりと引き上げることを試みる 水の冷たさと、 体温が交わるラインを、 世界の内と外と呼ぶのなら ずしりとしたこの内臓は どこに属するというのだろう 一口で飲み込んで、 喉を内側から押し広げながら、 それはまるでなぞっているかのようで 息の苦しさに寄りかかる 雨打つ音が細胞の間で歌っている 無数の色を映した雫が毛先を沿うように、 流れて、 落ちて、 そして跳ねた
水際の正体 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 451.5
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-07-01
コメント日時 2025-07-06
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


感覚的にみて高度な比喩使いの方ですね。 時間ないのでまた後でコメント寄せてみます。 (表現方法が佐々木春さんに似ておられる印象を持つのだけれど、まあ、それはそれとして、) また後に
0~滑るように去っていく ~通り過ぎていく ~見分けもつかない 冒頭から事象を辿るようにイメージにおかれた言葉たちが記憶を呼び覚まそうと試みられていますが、 一度忘れ去ろうとした記憶はなかなか甦りません。 この重圧はまるで無酸素症状に苦しむ登山への挑戦からなのか、それとも深海へ潜り込むあまりその気圧に肺も押し潰されそうな潜水病か。 この苦しみを嘲笑うかのように、 ~雨打つ音が細胞の間で歌ってる ~無数の色を映した雫が毛先を沿うように 、と終息に結ばれていきますね。 『水際の正体』とは一体何でしょうか。 水際立つ、なんて、目立つときや引き立つときに使う比喩もある。 この詩もそうでしょうか? いや、違いますね。むしろ引き立てることで話者は苦しむのです。言葉たちを引き立てようとして。 ということは水際の正体とは、逆に瀬戸際のことではないのか、とわたしは解釈してみました。 つまり、言葉を表現するという行為を瀬戸際(分岐点)に見立てて話者は作者の苦しみを代弁しているのです。 事象から心象を映し出す比喩という操作を駆使して そのためには冒頭~ならの薪から香りたつ甘さを含んだ風が~ この、ならの薪から~という具体的な事象の一文が立ち上がればいいのです。 佐々木春さんですね。どう読んでもこの言葉たち比喩使い。笑。違いますでしょうか?失礼しました。 奥行きのある作品というのは二度三度読んでから、意味的にもじわりと立ち上がるものがあります。 この詩もそうですね。 たち止まり、流れつくもの沈むもの。 際に立たなければわからないこともある。 よい作品でした。
0作品を読んでくださって、ありがとうございます。 とても嬉しい感想をありがとうございます。 おっしゃる通り、「瀬戸際」について語りたかったのです。 ただ、なんの「瀬戸際」なのかは読んでくださった方が それぞれ思い浮かべるものがあって欲しい、と思いその広がりを言葉の中に含ませたい、と思っています。 本当にありがとうございます。 最後に、佐々木春さんではございません・・・。
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