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変身
久しぶりに一と数えると、僕ではない何かが二と言った。振り返ると、肘と脇腹の隙に裏路地が敷かれていた。遠のくにつれ、メインストリートへ膨張するそこでは車が乱舞している。クラクションをけたたましく、決まって二度、鳴りちらしながら。 驚きで唾を呑むこともできないのは、こわばった喉から唾液が逃げていくからだ。体表に滲み出て、べとべとになった皮膚は、排気ガスとタバコの煙を交互に舐める。すっかり乾いてアスファルトになりきった喉の上で、無数の靴底が、左、右と二拍子のリズムを刻んでいる。 都市は、というより僕は、白地にでかでかと直立した二本の黒線を描いた、メビウスの輪の形をした、ビルボードである。 地下に張り巡らされたパイプが、かん、かん、と脈打つ日常を、とつじょ上空高くの轟音が遮った。ジェット機の音ぐらいひとつづきであってもいいだろと、土管の沈澱に光が差すが、それも所詮、写真にかたどられたきりの明暗にすぎない。 床屋の片隅にその写真はいまでも貼られている。まったく消え去った同然に、ポスターで上塗りされ。
変身 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 851.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-03-23
コメント日時 2025-04-08
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


おはようございます。 やっと、読み方が解ったので。 (とても難しくて何度も考え込みました) タイトル「変身」に添って読むと、 僕→車→アスファルト→ビルボード→写真→ポスター なるほど、ずいぶん「変身」してますね。 しかも、詩の設計図がきちんと創られているのに、ちゃんとイメージがついていってます。 >久しぶりに一と数えると、僕ではない何かが二と言った。 冒頭のこの一文が、とても印象的で、 離れがたい余韻があります。 ありがとうございます。
1読んでくれてありがとう。 僕の描きたかった変身は、単線的で離散的なものではなく、多重的で連続的なものでした。いや、これも正しくない。ただ、都市に住む「僕」が抱く独特の感覚を伝えたかった。日常は即物的にあるのだが、日常を一気に短時間で駆け抜けるようにかえりみると、それはメタファーにしか見えない、という感覚。「変身」はメタファーが自ずと介した手段に過ぎない。だから、僕はそれに境界をつけたりはしない。したくなかった。しかし、文章というものに起こしてみると、ある程度は整えないと、と読み手を僕は意識してしまった。だから、こんな中途半端になった。 ともかく、僕の駄文に感想くれたことを感謝するよ。
1おはようございます。 書き込みができる程度には、回復したので。 まずは「駄文」。 この一言は、ずっと気になっていました。 夫が自分の詩を「駄文、駄文」と言う度に、私はウンザリします。 「それは読者に対して失礼だよ!駄文か名作かを決めるのは、書き手じゃなくて、読者なんだから!」 と、毎回言ってますので、 あなたにも、同じことを言いたいです。 次にメタファー。 「暗喩」とだけ聞いて、分かったような気になっておりましたが、 やっぱり解らない。 ビーレビに書き込みする以上は専門用語を全て心得ている必要があるのでしょうが、どうか私を詩を知らない読者と思って、 この際、メタファーがどうゆうものなのか、説明していただけませんか? どうか、宜しくお願い申し上げます。
0返信ありがとうございます。 駄文について。 以前このサイトで自分の書いたテキストを詩と呼んだことで、こんなものは詩じゃない、と怒号を浴びせられた経験がありました。別に私は、「詩」を書いたという確固たる意識はなかったので、こうやって勝手にキレる人がいるのなら、今後はこの言葉を控えようと決めました。作品と呼ぼう、と。しかし、作品と呼ぶとこれもまた額縁にはまったようなかしこまった雰囲気がするので、今では文章や駄文と呼ぶことにしています。ですが、ご指摘通り、駄文はあまりにも卑下が強くてズルいですね。こちらのほうも気に触れることがあるのならば、今後は文章、テキストと呼ぶことにします。 メタファーについて。 暗喩(メタファー)は何かを喩えて、しかし喩えていることを明示しない。どこかの哲学者がいうように、我々が見ている世界はあくまで、何かの現象の影(?)である。厳密かは分かりませんが、ポエティックに言い換えるとしたら、生活は明かされることのない暗喩だ。 たとえば、なんかの神話で太陽が神を乗せた馬車であると信じられていたならば、すなわち物質としてのそれは神の暗喩でしかないという解釈ができます。自然科学の発展とともに、私たちは正しい解釈を行えるようになったと思っていますが、その裏にも何かがあり、我々の解釈は暗喩でしかないとも言いきれません。これは文明の発展とともに変容する暗喩ですが、もっと個人的な一生涯においても同様なことが起こっています。子どものときのアニミズムを思い起こすと、あの時なぜこう考えたのだろう、と疑問に思う。ある程度の年齢(中学生くらい?)を越せば、世界の解釈というのはそう激しくは変容しませんが、それでも失望や歓喜や退屈を経験するたびに小さい変化はあるはずです。なかには性行為とか、お金とか、友人関係とか、ガラッと見え方が変わるものもあります。あるいは、この究極の形として、精神に異常をきたす(逆は必ずしも真ではない)というのもあります。とくに顕著にこのような暗喩の上塗りが起こるのは、反復的な都市生活においてです。そのような、世界の解釈、それにともなう自己の解釈が二転三転四転……した様子を甚だ誇張して書いてみたというわけです。 コメントに書きとめると長ったらしくなりましたが、私が文章で伝えかったのは上記のような世界観や哲学ではなく、感覚そのものです。
1詳しく丁寧に説明していただき、 ありがとうございます。 暗喩。 あなたの詩は暗喩なのだなと思いました。 この頃、詩を感覚で読むことも多くなり、 とても楽しいです。 ありがとうございます。
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