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作成日時 2018-02-07
コメント日時 2018-02-27

もう帰ることはない そう思っていた人の影がひたすらに伸びているのを そこの曲がり角で女は見つけた ここからあまり遠くない日 もの悲しいたたずまいで その復員を果たす男の目がひたむきに探ったのは あの船底から見えない未来 この私へ流れる今だ 天気雨、止む前に軒先から走り出した子どもの 高い声も群れる残像も遠く伸びてあの彼方へと かき消える幾筋もの運命線をほころびた靴で踏みたどり ばたばたと人の倒れゆく音を立てながらはためく旗、あるいは おまえの手のひらに包まれたそのなかをいっぱいに満たす沈黙の零度を 一心に暖めようとする、冬の殺戮の時代がふたたび


項目全期間(2019/12/12現在)投稿後10日間
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2019/12/12 08時46分57秒現在
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コメント数(4)
miyastorage (2018-02-10):

荒地派、鮎川信夫。アホでもここまで分かる。鮎川の根底にあったのは言葉、思想、民主主義、戦前の価値や戦後のそれ、または、愛情。そういったものへの不信であったらしい。彼が信頼していたのは死者との友情だけである、とも。人のブログの受け売りだけど。 作者や僕らの意識は、70余年前から育まれている精神性や物質性みたいなのと地続きであるかもしれない。この作品には、日々起きていること、起きてしまっていることに対するコミットメントがあるのだろう。 >この私へ流れる今だ 「今」、この後の2連で示されているイメージは不吉だ。70余年前とは形も意義も様変わりさせて、僕らの時代の境目となる出来事を予見しているように思える。ただ、この予見する目を、作者は呪っているのかもしれない。今更何を、と。世界は変わらない。少なくとも「いい方」には。僕はどうするべきか、死ぬまで決められない。露悪に生きるか、己の無謬を疑わない白痴となるか。最後のは独白。あるいは飽和。申し訳ない。

完備 (2018-02-10):

特に3、4連目の音がとても良いと感じました。ただそのほかには取り立てて褒めるべき点を見出せませんでした。「ここからあまり遠くない日」「今」「未来」などの語彙はよほどうまく使わない限り、そしてこの作品においても例にもれず、私の感性では端的に「ダサい」のですが、あまり共有されていない感覚なのでしょうか。

原口昇平 (2018-02-11):

■miyastorageさん 戦後詩の終焉という言葉が現代詩手帖とその周辺で流行したころに内心で反発していた私は、ご指摘いただいたようなことをいまだに詩作中にしばしば意識します。 これからの状況は悪くなるか、より速く悪くなるかのいずれかしかない。私は3.11以来そう考えるようになりました。できればその速度を少しでも遅くするための努力をしようとしてきましたが、やはりあまりにもささやかなこの私の力ではどうしようもないどころか、別の場所では私自身が食べていくためにその流れに力を貸してしまってさえいるのです。そこに嫌気が差していますが、また一方ではわが祖父母もそのように生き延びたのだから人はどんな時代であれなるべく善く生きるしかないと根本的に開き直ってもいて、矛盾するばかりです。 ■完備さん ご指摘の点については、それはそうでしょうとしか申し上げられません。私はもともと内容と形式の両面から第1・2連と第3・4連目のあいだに明確な境を置いてコントラストを生み出すことを意識していたものですから、ありふれた表現が第1・2連に散見されることをご指摘いただいても「だってそれは最初からそういうつもりで書いたのですからそうでしょう」と苦笑するほかありません。

蛾兆ボルカ (2018-02-27):

今晩は。 緊密な詩行、無駄のない言葉、注意深い構成といった、詩のボディが好ましく、ストレスなく愉しく拝読しました。 選語については、作者自身のコメントに反するかも知れませんが、私はこの詩の選語はスタンザを超えて統一感があると思いました。 例えば「距離」と「時間」の入れ替えを、あざとくなくやっていたり、「あまり」「ひたすら」など、詩語を意識するテクニシャンが避けるであろう言葉を、あえて無造作に使う(それによってわざとらしさを避ける)ところとか、色彩をイメージさせる言葉を限定的に用いてモノクロームな場面をつくり、「女」と「旗」そして血の2箇所のみでパーツカラーのように赤を表現しているところなど、(私の勝手な受容ですが)心地よく愉しみました。 表現で私が面白く思ったのは、手への意識の指向性です。 運命線、という言葉が、深く伏線となっていると思いました。 また手が繋ぐものであったり、何かを手渡す器官であることも、先人から我々の子どもたち世代への眼差しも、統一感のある表現となって主題を表していると思いました。 そんなふうに読んで感じたのは、共感ですね。 どんなに悪い時代になっても、誰かの家に集まって、小さな朗読会を開いたりすることはできると思います。 そうやって生き延びることが、来るべきときのレジスタンスか、または破壊後の再生につながるのではないでしょうか。 そんなことを思いました。

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