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パッチワークライフ   

なかたつ 
作成日時 2017-11-26
コメント日時 2017-11-29

 

(きみが今ここに生きている以上、その過去があるはずだ。少しだけ覗かせて欲しい) 母の体から生まれた少女に、名前が与えられた。偏見にとらわれず、いろいろな世界を見て欲しいという願いが込められた名前だ。少女は、与えられた肉体をもって、走れば苦しくなること、疲れれば眠たくなること、眩しければ目を細めること、そうしたことを自然に覚えていった。 ところが、両親の別れが終わりの始まりだった。母方の実家に引き取られた少女。そこはまるで監獄で、少女の部屋はなく、ゴミ箱の中を漁られ、気づけば私物が動いているという。 そして、生きていることの証明である母、逝った。 「お前が間違っている、すなわち、私が正しい」 (何が?何が間違っているの?両親が別れたのはわたしのせいじゃないし、好きでこの監獄に来たわけじゃない。わたしに選択肢なんてなかった。この名前だって、この肉体を持ったことだって、私が選んだわけじゃない。この顔、この声、この体、この髪、この性格、これらを作り上げたのは、一体誰なの?ねえ、教えてよ。それを教えてよ。答えられないんでしょ。じゃあ、走れば苦しくなったり、疲れれば眠たくなったり、眩しければ目を細めたり、これらも間違いだというの?ねえ、誰でもいいから教えてよ。わたしが生まれたことは、間違っているの?わたしが選んだわけじゃないのに。悲しければ泣いたりするのも間違いだというの?) 少女は、 夜な、夜な、自ら、体に、傷を、つけ、ゆら、ゆら、嗚呼、ああ、腕に、こく、こく、刻む、煙草、もく、もく、吸う、嗚呼、嗚呼、体に、傷を、存在、証明、うう、奴に、復讐、復讐、復讐、ねえ、なぜ、なぜ、なの、私は、生を、肉体、名前、捨て、てい、いの、? 「その後、少女は売りを覚え、東北の地で一人暮らしを始めましたとさ、めでたし、めでたし。それでは、宴は終わりです、皆様お気をつけてお帰り下さい」 「……きみの箸の持ち方に、恋をする……」 「おお、すげえ、箸の持ち方に恋をするって、すげえ、え、なんすかそれ」 「俺、箸の持ち方汚いんで、人前じゃ、箸使いたくないんすよ」 (対面して食事ができる関係性、だけれど、相手の目を見られないから、箸の持ち方を見てしまうのだろう。なんて言ったけど、それでも、きみはいつしか、次第にその目線をあげていたよ。初対面のぼくの目をきちんと見て話ができるようになっていたよ。自分の体は、自分で守ってね。もう傷ついてしまった体には、布をあてるんだ。色とりどりの布をあてて、きみの体はまるで虹のように、見る人を和ませるように。布が足りなければ、人にもらえばいい。きっとどこかに、布を差し出してくれる人はいるからね) これからも、きみのエピソードを聞かせて欲しい エンディングは、まだまだ遠くだ


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白島真白島真 (2017-11-27):

タイトルに「パッチワーク」とあるように、少女が一応、狭い少女的世界から一歩踏み出すことを 前半「第三者的視点」、中盤「少女の視点」。終盤「ぼくの視点」からそれぞれをパッチワークのように貼り合わせて創作した作品と読みました。 (私も少女の成長過程を書いた「花の化石」という作品があります) 作中主体が変わっても、ごく自然な形でその世界に入っていけるのは、主体は変わるたびに、新規の題材が周到に用意されているためでしょう。 特に終連の「箸の持ち方に、恋をする」のくだりは一番、面白かったです。 >「その後、少女は売りを覚え、東北の地で一人暮らしを始めましたとさ、めでたし、めでたし。それでは、宴は終わりです、皆様お気をつけてお帰り下さい」 上記のような手法は効果より、逆にマイナスの方が大きいと感じ、ここではややしらけました。 この作中主体は上記三者には属せず、よりパッチワーク的効果を狙ったようには思うのですが。

コーリャコーリャ (2017-11-27):

すごーく(とくに二文字、になるとことか)痛々しくて怖いんだけど最後の最後で虹ってワードがでてきていっきにポジのほうにスイングしますね よっこのポエム上手 その娘が虹色の布たちに包まれながら走っていくようなエンディングだといいと思いました

仲程仲程 (2017-11-29):

この作品全体の雰囲気はすごく好みです。 最初と最後の少しくさい(すみません)表現も対のようだとうまく成立していると思います。 それにつつまれて中の物語ですが、出だしはMoonという曲が頭のなかで流れてきました。二連の感情のたかまりもいいなと思います その後少女は---、箸の持ち方--- の雰囲気も自然に入ってきて、物語として好きです。 で、個人的な好みの話でしかないのですが、二文字区切りのところは私にはあまりすとんこないというか、ぐいともってかれないというか、 なぜかとちょっと考えてみたら、この作品は文字の見た目よりも、言葉の音のほうで感じたいからなのかな思いました。

なかたつ (2017-11-29):

白島真さん ありがとうございます。 箸のくだりは、まさに偶然の産物です。 しらけたところは残念ですね。ここの部分は、言い換えるとしたら、あなたは引退したアイドルやAV女優のその後まで興味を持てますか、とほぼ同義であり、結局人はある人のことを最後まで見届けることなどしないものだ、という皮肉です。 コーリャさん どもどもです、あざます。 ポエム上手、てへぺろ。 僕もこの娘のエンディングはわかりませんから、見続けたいと思っています。そんなエンディングが来るかわかりませんが、この娘自身も誰かに布を差し出す存在であって欲しいと思いました。 仲程さん ありがとうございます。 二文字区切りのところは、見た目も大事だとは思っているのです。 息絶え絶えに何とか言葉を紡ぎ出そうとしている、二文字吐くたびに呼吸をしなければならない、そんな様子を描きたかったのですが、選択した言葉が悪かったのだと思います。


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