いろは峠と恋札めくり(前編) ~詩飾り小説の欠片~ - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

エセ詩人

いでよ、エセ詩人!

コトダマ とはよく言ったものだ。 ハキダセ と 男は言う。 おまえは誰だ? わたしは何者だ?   

湯煙

硬派な作品

萩原朔太郎や中原中也のエッセンスを感じます。

千治

体験記『呆気ない宣告』

それはあなたの現実かもしれない。

大概のことは呆気なくドラマティックではない。そうした現実の丁寧な模写が作品に厚みを増している。

ほば

世界は自由だ━不死━

わかるということ

あなたにとっては何が、その理解が起きるピースになるだろうか?

ほば

ふたつの鐘がなるころは

鐘は明くる日に鳴る! いつでもそうだ!

運営在任中に出会った多くの作品の中のベスト。決して忘れない。

yasu.na

良い

シンプルに好き

あっす

パパの日曜日

パパの日曜日

いい

明林

終着点

生きる、その先に死地はない!

美しくさわやか、そして深い意味が込められたシーン、均衡の取れた心情と思想、強い意志で最終連へと迫る引き締まった展開、我が胸にこの詩文を抱いて!

yasu.na

九月の終わりを生きる

呼び覚ます声

夏の名残の暑さが去ろうとする頃、九月の終わりになると必ずこの作品のことを思い出す。

afterglow

こっちにおいで

たれかある

たそがれに たれかある さくらのかおりがする

るる

詩人の生きざま

言葉と詩に、導かれ救われ、時に誤りながらも、糧にしていく。 赤裸々に描写した生きざまは、素晴らしいとしか言いようがない。

羽田恭

喘息の少年の世界

酔おう。この言葉に。

正直意味は判然としない。 だが、じんわりあぶり出される情景は、良い! 言葉に酔おう!

羽田恭

誰かがドアをノックしたから

久しぶりにビーレビ来たんだけどさ

この作品、私はとても良いと思うんだけど、まさかの無反応で勿体ない。文にスピードとパワーがある。押してくる感じが良いね。そしてコミカル。面白いってそうそう出来ないじゃん。この画面見てるおまえとか、そこんとこ足りないから読んどけ。

カオティクルConverge!!貴音さん

あなたへ

最高です^ ^ありがとうございます!

この詩は心に響きました。とても美しく清らかな作品ですね。素晴らしいと思いました。心から感謝申し上げます。これからも良い詩を書いて下さい。私も良い詩が書ける様に頑張りたいと思います。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

これ大好き♡

読み込むと味が出ます。素晴らしいと思います。

きょこち(久遠恭子)

輝き

海の中を照らしているのですね。素晴らしいと思います☆

きょこち(久遠恭子)

アオゾラの約束

憧れ

こんなに良い詩を書いているのに、気付かなくてごめんね。北斗七星は君だよ。いつも見守ってくれてありがとう。

きょこち(久遠恭子)

紫の香り

少し歩くと川の音が大きくなる、からがこの作品の醍醐味かと思います。むせかえる藤の花の匂い。落ちた花や枝が足に絡みつく。素敵ですね。

きょこち(久遠恭子)

冬の手紙

居場所をありがとう。

暖かくて、心から感謝申し上げます。 この詩は誰にでも開かれています。読んでいるあなたにも、ほら、あなたにも、 そうして、私自身にも。 素晴らしいと思います。 ありがとうございます。みんなに読んでもらいたいです。

きょこち(久遠恭子)

カッパは黄色いのだから

良く目立ちます。 尻尾だけ見えているという事ですが、カッパには手足を出す穴がありますよね。 フードは、普通は顔が見えなくなるのであまり被せません。 それを見て、僕はきっと嬉しかったのでしょう。健気な可愛い姿に。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

永訣の詩

あなたが出発していく 光あれ

羽田恭

あなたには「十月」が足りていますか?

もし、あなたが「今年は、十月が足りてない」と お感じでしたら、それは『十月の質』が原因です。 詩の中に身を置くことで『短時間で十分な十月』を得ることができます。この十月の主成分は、百パーセント自然由

るる

だれのせいですか

どんな身体でも

どんな自分であっても愛してくれるか、抱きしめてくれるか、生きてくれるか SNSできらきらした自分だけを見せてそんな見た目や上辺で物事を判断しやすいこんな世の中だからこそ響くものがありました。例えばの例も斬新でとても魅力的です。

sorano

衝撃を受けました

ベテルギウス。まずそれに注目する感性もですが、詩の内容が衝撃。 猫。木。家族。犬(のようなもの)。女の子……。など、身近にあふれている極めて馴染み深いものベテルギウスというスケールの大きいものと対比されているように感じられました。

二酸化窒素

ずっと待っていた

渇いた心を満たす雨に満たされていく

afterglow



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いろは峠と恋札めくり(前編) ~詩飾り小説の欠片~    

序章 “序の口ならし”  触れもなく 雄叫びを上げる 山颪の声  幽谷を渡り 人、また人が  己の身体を腕に抱き 小幅な歩みを急かし行き交う  ゆけども果てぬ峠の道に、降りし積もった落ち葉の重ねが踏み出す度に舞いあがり、乾いた音でちいさく、ちいさく鳴くのです。  染みる寒さに貴方は思わず、手を懐に忍ばせました。  まだまだ先は長いのですから、今はまだ、力を抱えていて下さいな。峠を登っていくほどに、風は冷たく強さを増して、貴方の行く手を遮るでしょう。  嫌われ者の、独り旅。  この山に、  この世界に、  貴方は疎ましがられたのです。  世界は未だ、その本性を貴方に明かす気はありませんよ?  それでも行くというのなら、常識から外れるというのなら、人ならざるモノに好かれてしまうことでしょう。  第一章 “恋札めくり”  どのくらい登ってきたのか、もうわからなくなりましたね。山道へと入り込んでからは人の姿もなく、独り、無心に歩むのです。  振り返り、遠くに目を凝らしてみても、麓の明かりが見えることはありません。日の巡りがわからなくなるほど登り続けて、季節は秋の名残を見せるのみ。  山を越えて吹き下ろす風は、来たる冬の匂いを一足早く、裾野に撒いては解けてゆきます。  今冬もまた、寒さに震えることでしょう。冬を前にし、木々たちは、大地に埋めた根を温めるべく、赤々と燃える葉を必死になって落としていました。  それはまるで、山々に住まう者達の、終焉を飾る散華のごとし。何とも美しいではありませんか。周りを眺める余裕ぐらい、あっても良いと思うのですよ。  それでも貴方は脇目も振らず、体中の血を心臓と足の間で循環させ、ひたすら前へと進むのです。目にも脳にも内臓にすら、血潮の恵みを与えようともしないまま、空っぽになった頭を垂れて、ひたすら登ってゆくのです。  恐ろしい、ですか?  先の見えない景色というのは、それほどまでに恐ろしいものなのですね。先刻と変わらないように見える道、通ったはずと心に訴えかける道、小さな獣道と交わってはどちらが正しい道順なのかと、自分自身に問いかけるのです。  カサカサ。  カサカサ。  鳴きつづける無数の枯れ葉が、次第に貴方の心をむしばみ、心身の感を崩してゆきます。  夕陽を背負い、歩き続けた貴方の足が、とうとうぴたりと止まってしまいました。震える膝に両手を置くと、つぎはぎに繋いだ息を繰り返し、内に籠もった熱を吐き出します。  この風の中でも、汗ばみ、じっとりと湿る体の気持ち悪さに舌を打ちました。そろそろ一息入れないと、体力が続かなくなりそうですね。進みを止めてしまえば、引き返してしまえば楽でしょうに、そんな考えは微塵も持ってはいない様子。  体を休められる場所を探そうと顔を上げると、どういう不思議か、行く道の先に大きな楼閣がそびえているではありませんか。確かに、先ほどまでは存在していなかったかと。  しかし、二階建てのその楼閣は、見間違いを疑う事さえ難しいほど色華やかに飾られた、雅な造りをしているのです。  目に刺さりそうな赤塗りの壁。緑石で拵えられた柱に強く彫られた獣の群れは、影の落ち方ひとつを取っても気の配られた趣を見せ、秋色に染まる森の風情に逆らうような黒瓦が、時の流れに攫われないよう楼の品格に重みを付けておりました。  夕暮れの紅にも滲むことなく、それでいて、荘厳な佇まいは、心に巣くった煩いごとを天へと返さんばかりの夢城。  貴方はまるで、小波にたゆたう浮きん子のようにふらふらと、ゆらゆらと、楼の口へと吸われていきます。門に掛かった看板には『夢回楼』の金の文字。ごく控えめに宿場の文字も彫られていますが、どうやら妓楼のようですね。豪奢な造りも頷けます。  近づけば近づくほどに、俗世離れの風情を醸す建物ですね。外観はもとより、窓の欄干その奥に誰の姿もかすめないこと、こういう場には付きものの呼び子の声が聞こえないことなど、一帯に人の気配というものをまるで感じられないのも、幻想を思わせる要因になっています。  妓楼の様相を呈しているとはいえ、宿は宿。貴方は寸暇の寝床を求め、入り口に垂れた暖簾に手を掛けくぐってゆきました。 「いらっしゃいませ。ようこそ夢回楼(ゆめかいろう)へ」  不意に沸き立つ生き物の気配、同時に響いた男の呼び声。驚いて声の方に顔を向けると、横に肥えた背の低い、二重顎の男が立っていました。銭を転がすような揉み手に、随分と低い腰を見せ、揚揚とした足取りのまま貴方の側に寄るのです。 「おや、若旦那。ここへのお越しは初めてですかな?」 「ああ、いや。上がりに来たのではない。足を休ませてもらいたくてな。隅にでも、少し座らせてはくれないか? 銀ならいくらか手持ちもある」  右に左に目をやれば、掃き清められた広い三和土に、梁が交わる高い天井。奥へと繋がる廊下を仕切る屏風に流した花鳥絵図。格式を推し測った末、娘を買ってしまったら手持ちの路銀じゃ賄えないのではないかと、貴方は尻込みしてしまうのです。  見上げた先の太い梁を、隻眼青躯のヤモリが走って行きました。お使いにでも行くのでしょうか。  男がぐいっと顔を近づけます。 「おやおや! 四方八方、彼方に此方。国に名高い器量良しを、上から数えて、揃え集めたこの夢回楼。お立ち寄り下さった旦那様を、何のお構いもないまま帰したとなれば、楼の恥でございますよ。どの娘も手慣れた遊女でござい。ごゆっくりなさっていって下さいな」  堂に入る誘い文句と、擦り揉み手。  これだけ広い入り口に、笑顔の男が1人だけという異様な雰囲気は、まるであらゆる方向から貴方を飲み込もうとしているかのような圧迫感を感じます。本来であれば、お部屋を空かせている遊女達が、この入り口や二階から艶めかしい眼差しでお客を誘っているはずなのに、まるで世界から取り残されたかのような静けさに満ちています。  もっとも、これだけ山深くにあっては、遊女の数も限られるのかもしれませんけどね。男の言葉に引き込まれかけながらも、貴方は右手を横に振ります。 「いや。持ち合わせがないもので。ただ、一息入れたかっただけなのだ。風をしのげる場所があれば、どこでも」  すると男は、げっこうげっこうと頷きながら笑うのです。 「当楼では、初めてのお客様から揚げ代は戴きません。その心配は無用の長物にございますよ」  揚げ代をむしり取られる話はよく聞きますが、取らないとなると驚天動地。不思議なことを聞いた、そんな心情を顔に浮かべ、貴方は理由を問いました。  すると男は、相も変わらず軽妙に節を付けて歌い出します。 「初めましてはお導き。二度目の縁は言葉で結び、三度四度と盃かわせば、五つ何時しか居着くもの。私どもは、お金だけの縁を求めないのですよ。何度も足を運んでもらえるように、様々な趣向を凝らしております。良縁は金で買えぬもの。そうは思いませんか?」  随分と耳当たりのよい台詞ですけど、その目の奥にはしたたかな光が、ちろちろと見え隠れしていますね。軽佻な口車に乗るのは危ない気もしますが。わかっているのかいないのか、貴方は懐から取りだした手で顎を撫でると、大きく頷くのでした。 「これはまた、洒落たことを仰いますね。一期一会なんて言葉もありますが、私は一度で離れてしまう縁を寂しいと思うのですよ」  一期一会はすれ違うだけの縁という単純な意味ではないのですけども。それでも、男は我が意を得たりとばかりに、何度も首肯してみせました。 「まさにまさに。今夕は出会いに恵まれておりますな」  嬉しそうにお腹を揺らして笑う顔は、まるで手軽の鴨がやってきたと言わんばかりに見えるのですが。男二人が向かい合い、まるで旧知の仲のように笑顔を見せるた後に、貴方は大きなあくびを漏らしました。それを見た男は、ポンと一つ手を打ちます。 「ああ、これは不作法を。旦那は休息をご所望でしたね。もちろん構いませんよ、では早速、こちらでお好きな娘を選んでいただきましょう」  そう言われたので、隣の部屋で顔見せが行われるのかと付いていったのですが、部屋の中にあったの非毛氈が掛けられた長い縁台。縁台の上には、手の平ほどの大きさの、黒塗りの札が十数枚並べられています。  紅の原に、寸分の狂いもなく並べられた黒い札。その札一枚一枚に彫り込まれた金の文字が、典雅に、そして妖しげに、出番を待って佇んでいます。  書かれてるのは歌のよう。  視線で男に問いかけます。 「当楼では顔見せを行わないのですよ。代わりに文を書き交わし、夜伽のお相手を選ぶんでいただいております。顔かたちで選ぶより、心を通じ合わせた方がしっくり重なるものですよ?」  げっこうげっこうと、何とも品のない笑い声を挟んだ後に、こう続けたのです。 「お好きな歌をお選び下さいな。そして、その返歌をお書き下さい。書かれましたら遊女の元へとお運びし、返歌を気に入った者が一晩のお相手を致します」  貴方は戸惑ってしました。歌なんて書く機会も無ければ、作法だって知りません。  目があらぬ方へと泳ぎ始めた貴方に、男は心配ないと、笑って見せます。 「なにも、後世に残そうなどと申し上げるつもりはございませんよ? 傑作を綴っていただくことはないのです。思ったことをそのまま筆に乗せてもらいますれば、後は娘たちが上手に事を運びますゆえ」  難しく考える必要は無さそうですね。  何にしても、まずは札を選びませんと。 「玉響を鳴き納めしは 晩夏の蜩 草雄虫 仕舞えぬ恋に縋りて過ごす 夏の終わりの長きこと」 「赤砂(あかさ)な浜やら輪を閉じる 閉じぬ門扉に腰を掛け 春越え夏越え 待っております」 「木々の間に描いた星座が 風と流れる貴方を絡め 一番星と輝きますわ 銀色の繭に抱かれながら 二人で永久を紡ぎましょう」 「川面に跳ねた銀鱗が 夏の日差しにきらりと溶ける 鱗の数だけ夢を見せるの あぶくと戯れ 生け簀の夢の瀬」    うんうん唸っていると、いつの間にやら横手に人の気配。背は貴方の胸ほどしかない11,2の女の子。妓楼であることを考えれば、禿(かむろ)でしょう。  ひと目見た時に遊女かと見違えたのは、驚くほど端麗な容姿ゆえのこと。真っ直ぐ流れ落ちる御髪は、冷涼さを感じさせる銀色。前に垂らした一房を纏めた細い帯さえ、滑り落ちてしまいそうな光沢が、瑞々しい髪に上品さを与え、この年齢では持ち得ない色気を醸していました。  銀の髪に包まれた顔(かんばせ)も、真珠を思わせる濃密な白さを含み、特に目を引くのが左右色違いの瞳です。  片や金。気品高く、冴えた輝きを持つ鬱金色。  もう片側は赤。心の深くに沈めてもなお、冷ましきれない情を映した赤銅色。  赤や黄色、紫などの濃い色で拵えられた着物を着こなしてはいますが、異国の方かもしれませんね。  見惚れてしまうほどの容姿に、我の強い存在感。瞬く間に惹き付けられた貴方の視界は、周囲から浮き上がるかのように映える彼女の姿に埋まり、視線は色違いの目から外せなくなりました。それは正に、天賦の配色。  貴方の視線を正面から受け止め、その子は怖がるでもなく、逃げるでもなく。だからといって、貴方の瞳に興味を示すわけでもなく。黙って貴方を見つめているのです。  まるで、そう。静止した時の中から、存在していた証を産み出そうとでもするかのように。落ちる一対の影が、一幅の壁画として描き止められ、平面としてでも後世に残ることを願うかのように。    不意に沸き上がってきた熱の名は慕情。その制御しがたい衝動に、とりとめのない思考が追いついてしまい、貴方の心は空虚の中に置かれた音叉が独りでに鳴動を始めるかのごとく、震え、その音は徐々に大きな波を打つ本音に変わっていくのです。  その流れに逆らえず、甘く痺れる情に負け、貴方の腕がその子に伸びて指の先が求める――  ――先に伸ばしきったのは彼女の方でした。  すぅっと上げた手の、人差し指が微かに反って、貴方の胸を指し示します。その後に、つぃと横へと滑って指し示したのは、非毛氈に並べられた黒い札。  最後に彼女が示すのは、紅を乗せた小さな唇。微かに開いた雪椿の花びらに、優しく指を押し当て、こくりと首をかしげた姿は、恋も知らない無垢な乙女の星願い。  とでも、言ったところでしょうか。きっと遊女の皆様に仕草を教わったのでしょうね。  細い指の伝えたいことが、『札を選んだら自分に渡して』という意味なのだと気が付いた時にはもう、貴方の心を捕らえようと迫っていた濃密な色気は霧散していました。  夢から覚めたかのように慌てて瞬きをしてみると、掻き消えていた周囲の景色にも色が戻り、ふわりと視野が広がったのを感じとれます。どうやら雰囲気に飲まれていた様子。 「ああ、すまない。ぼうっとしていたみたいだ。札を選んで返事を書いたら、君に渡せば良いんだね」  そう言うと、彼女はこっくり頷きます。  その仕草に揺らされた髪の一房。その遊びを作っている小さな花を摸した髪飾りが、琴線に触れました。  黄色い縁取り、芯は薄紅、ハートの形の花びらを四枚咲かせた円模様。 「可愛い髪飾りだね」  その言葉を受け、彼女の唇が綻びました。年相応に可愛らしい表情が、貴方の興味をくすぐります。 「自分で選んだのかな?」  こくり。  容姿の可憐さを口に出して褒めるのには、少し恥ずかしかった貴方ですが、髪飾りならできそうだと、知恵を回してみるのです。 「この辺りじゃ見ない花だね。どこで摘んできたんだい? 銀のあぶくが煌めく天の、川に流れる星の裏かな? それとも南の孤島で鳥が、描いた虹の麓かな? 柔らかなまどろみの中にひっそりと乙女心を灯らせたような色使い。左右の瞳によく似合っているよ」  不安定な言葉の編み物。  それでも彼女は頬を染め、照れながら何度も髪飾りに手を伸ばしては引っ込めるのです。そんな仕草は年相応で、無垢な可愛らしさに満ちています。  このまま入り口に留まって、彼女と戯れるのもいいのでしょうけど、時間は有限、目的は休息。貴方は札に向き直りました。一つ一つに目を通し、心を寄せて味わうものの、どれも総じて個性に富んで、チャリリと効かせた洒落っ気がくすぐったい脇に刺さるよう。貴方は、ほぅ、ほぅと唸るばかりで、なかなか絞りきれません。  そんな中、一番左の上端に置かれた札に目が留まりました。 『嘘つき常の口つつき  杵つき月まで連れ添うて』  何だか語呂の良い歌ですね。札を手に取り、早速お返事を考え始めます。 『戻れぬ月は寂しかろうと  泣きつ寝付きの浅き夢』  金色の文字の左に一筆書き添えると、ずっと待っていてくれた少女に渡します。彼女はじっと札を眺めると、しばらくして一つ頷き、トテトテと衝立の奥に引っ込んでいきました。階段を上っていく足音が聞こえます。  この入り口で眠るのでもいいけど、どうせなら女性に沿われて眠りたいと、心中穏やかならざる面持ちで、大人しく結果を待つ貴方。  一人きり。取り残されてしまえば、することもなく、誰の気配も残らない静かな三和土を見渡します。  隅々まで気の配られた内装は、見ているだけで癒やされますね。玄関は丁寧に掃き清められ、壁に掛かった異国情緒を醸す湖畔も、海底に沈む古代都市の日常風景画も、日焼けのくすみさえ見られません。空気を持ち上げるかのような、緋毛氈の毛並みも豊か。  四季の花々が彫り込まれた天井の梁、その陰にいたモノと目が合いました。隻眼青躯のヤモリです。4つの足を目まぐるしく動かして、梁を回っていましたが、やがて1つの場所に落ち着くと、三角頭を左右に振って、縦横に目を巡らせます。  そして、ぱかりと口を開けば、したたり続ける長い舌。どこまでも伸びていき、やがて、ふつりと根元から切れました。  天井から落っこちてきたヤモリの舌は、宙で丸まり、パチパチと目映い火花を散らせはじめました。その光は太陽のような包容力を持たず、雷のように唯々激しく怒るのです。  散った火の粉が柱の陰に、壁の隙間に、机の裏に。部屋のあらゆる暗がりを目がけ、石火の速さで飛んでいきます。  この光に驚いたのは、影に潜むもそもそ達。黒黴にも似たもそもそは、姿形が定まらないまま。もそもそ這い出て彷徨いました。  或る小さなもそもそは老婆の姿に化けました。  細く長いもそもそはヤマトシジミに化けました。  柱に付いたもそもそは夏の案山子に化けました。  しかし、そんな子供騙しじゃ、ヤモリの舌はごまかせません。どれもこれも見破られ、門の外へと追い立てられます。部屋の隅まで綺麗になった頃にはすでに、ヤモリは別の部屋へと移っていました。  今のは一体何だったのかと首をかしげた貴方の視界に、真新しい掛け軸が映り込みます。その掛け軸には、隻眼青躯のヤモリが描かれていますね。どうやら楼の守り神のようですよ。ヤモリに、ムカデに、ヒキガエル。精緻な文字でかれらの特徴も添えられていました。  その者、片目の掃除番。輝くベロに舐められた部屋は、穢れの住まう場所も無し。  その者、赤い頭の始末番。楼に仇なす者あらば、地の巣穴より沸き起こり、瞬く間に咬み千切る。  その者、肥えた帳簿番。人に金子(きんす)に日にちまで、楼の全てを記載しながら、来る日も来る日も客を呼ぶ。  そうこうしているうちに、女の子が戻ってきました。笑顔と言って良いのかどうか、それでも柔らかな表情から、好ましい結果を携えてきたのだなと推測を立ててみる貴方。  はい、正解しましたね。立ち上がって迎えた貴方の目の前に、手を差し伸べてくれました。  さあ、手を取り行きましょう。  ここはイロハの井の頭。  ここから先が本番です。 第二章 “登楼ゆめりな”  屏風の裏へとまわり、廊下の先の階段を小さな手に引かれながら上っていきます。途中の踊り場で一つ曲がって、更に登ると煌びやかな襖に突き当たりました。襖を開けて出た先は、二階の廊下のど真ん中。そこに広がる光景にびっくりして、貴方は言葉を失いました。  廊下は左右へ長く伸び、どちらの先も緩やかに曲がっているため、先が見えず、全体でどれほどの長さがあるのか全く想像できません。そして、廊下の両脇に無数の部屋があるのです。見える範囲だけ数えても、襖の数は四十を超えてしまいそう。  外から見た感じでは、建物はこの様な形ではなかったはず。  襖と言わず壁と言わず、至る所に壮麗な画が描かれています。  山であれば、果てなくそびえる切り立ち峰がが。  いかなる物にも代えがたい、至高を誇る不二独立山が。  静謐な霧をまとった山紫水明の小さな山々が。  熱い火口を抱えて広がる懐の深い活火山が。  海であれば、地平の彼方に異国の大地が霞む海原が。  荒れ狂う波間に見える、頑固な白の埠頭が。  海鳥が騒ぎ立てる下、命のやりとりが繰り広げられる、自然の営みを育む洋が。  獣であれば、牙を剥き血を流しながら雌雄を争う、血の気が多い二頭の羆が。  草原に唯の独りで、天の星座に吠えかかる若獅子が。  人に馴らされ人に使われ、それでも牙を失わない、気高き犬の立ち姿が。  天寿を全うして土へと還っていく、夫婦鹿の寄り添いあう姿が。  花であれば、風に舞う黄色の花が人々を俯瞰しながら彼らの暮らしに溶け込んでいく、春の岬が。  緑の大地に凛と咲く、染めることも染まることも嫌う一本の紫の華が。  うち捨てられた家屋を覆った無数の蔓が付ける、真白な花が。  雪深き山に落ちた深紅の一輪が。    狂ったような緻密さで描き込まれた画の数々は、まるで大地を作り替えようとする波のように迫り、貴方の意識を揺さぶるのです。  一目で心に情景を届ける絵画には、一切の共振を許さない言葉の行が添えられていました。 『平面を映す物こそ立体であり、立体こそが虚像の始まりであるなら、零次元に見る光点こそが星霜を意味し、彼の越境さえ望めないのだと悟るのならば、祖はやがて其方の業に宿りけり。』  意味の通じない綴りに何故か、何故かとても惹き付けられるのです。  ここだけ違う星に通じているかのよう。  貴方はお上りさんよろしく、頭をきょろきょろ。  大きく開いた眼もきょろきょろ。  ついでに手足もきょろきょろ。  上下左右もきょろきょろ。  きょろきょろ。  きょろきょろ。  きょろきょろ。  きょろ       きょろ。 きょろ        きょろ。         きょろ      きょろ。       きょろ  きょろ。           きょろ きょろ。  襖に描かれた山や海、獣や花が語りかけてきました。 「汝《なんじ》はどこへ向かうのだ?」  貴方は答えます。 「この先へ。山を越えて、未来へ進むため」 「何のために?」 「……わからない」  襖はカタカタと笑います。 「左様か、左様か。人の身で、己の丈より高みへ登るのは苦しかろう。幼き頃に立てた望みも辛苦に紛れ、散り散りになったとしても不思議はない。もがく理由を見失ったのならば、良い、良い、この階段を上るが良いぞ」  襖は開かれていて、その先に上り階段がある事に、今更ながら気が付きました。 「独りきりでこの場所に居るのは寂しかろうて。誓いを忘れ、希望を見失っては、未来さえ苦しむだけの時となれり。いっとき、全てを忘れ、天上にておなご達と戯れるがいい」  長く、果ての見えない廊下。行く道。  ここにきて、華美な装飾が施されたこの場所に取り残され、ぽつんと立っている事が急に恐ろしくなってきました。  どこを向いても立派な造形で、みすぼらしい自分の居場所なんて無いように思えてしまうのです。 「怖がることはない。ここは慰めの檻。寂しく感じる心さえ、溶けて揮発してしまうほどに、ぬるく溺れさせてくれる牢である」  そうなのかもしれないと、まるで天啓のように、脳裏を光がよぎります。ここは妓楼なのだと。  肌の温もり、湿る声、世を捨てた匂いに抱かれ、理性をぼかされ、安穏とした悦楽に溺れさせてくれる場所。 「汝の望む場所はここにはないぞ。其方の視界に未来など見えぬであろう。さあ、ここを離れて上へ登るがいい」  貴方は思い出しました。  本当の心が望んでいたのは、手の届かない高い望みなどではなく、高みから世間を見下ろすだけの堕落した快楽の世界。  何も考えなくてもいい、何も成さなくてもいい。ただただ本能に従って動ける場所だということを。  望む場所は上にあるのだそうですよ。  登ってみますか?  一歩を踏み出し掛けた瞬間、思いっきり腕を引っ張られました。心臓がひっくり返りそうになって転びかけながらも、なんとか踏みとどまります。  右腕を見ると、先導していた少女が、ぎゅっと腕にしがみついていました。  銀の光を返す髪が目に飛び込んできた時、酩酊した意識は不可思議な束縛から逃れ、素直な景色を見ることが叶うようになりました。  一方、彼女は悲しそうな、心配そうな顔で貴方のことを見上げています。 「ああ、すまない。ちょっと……これらの風景画に当てられていたようだ」  あまりに沈んだ顔を見せるので、安心させようとしゃがみ込み、彼女と視線の高さを合わせます。貴方は髪にそっと触れて、落ち着かせるようになで下ろしました。  それでも、彼女は唇を噛んだまま、目の色を変えることはないのです。 「もう、大丈夫だよ」  声を掛けても、効果は無くて。  彼女は首に掛かっている紐を手繰り、胸元から小さな袋を抜き出しました。お守り袋のようですね。それを貴方の目の前に持ってきます。  何をさせたいのかわからずに首をかしげてみせると、彼女はお守り袋を自分の鼻に当てて、目を瞑りながら大きく息を吸いました。そうして見せてから、もう一度、膝を付いている貴方の前に掲げてみせます。  どうやら匂いを嗅いで欲しいみたいですよ。  一歩、膝を擦り前に出て、彼女の胸元のお守り袋に鼻を近づけます。目を瞑って深呼吸をすると、強く、甘い香りが肺を満たしてゆきました。  何の匂いでしょう。  食べられる限界まで熟させた果実の香り、人の手の入らない深い山腹に湧いた、泉の縁の苔むす匂い。  手先がピリッと痺れてきました。意識が、危なっかしい ふわふわ した感覚に変じてゆきます。わかっていて、それでも離れがたい悩ましげな匂い。  彼女は自らの内側に、こんな景色を隠し持っていたのでしょうか? こんな景色と共にいるなら、外の情景などに惑わされることはないでしょう。  さらりと髪に触れられました。  彼女は手櫛をかけるように、差し入れた指で貴方の髪を梳いていきます。  浮きかけていた意識が鮮明になってきました。  見ると、彼女の表情は穏やかなものに変わっていました。この顔をみるだけで、お守りの効果を信じられそうな気持ちになりますね。  再び、手を引かれて長い廊下を歩いて行きます。  襖を何枚過ぎたかわからないほどの先、一枚の襖の前で彼女は立ち止まり、小さな手が離れていきました。  その襖に描かれている画は、石畳に赤い鳥居が立ち並ぶ、静かな参道を描いたもの。  押しつけがましい我筆にならず、それ故、赤鳥居が本来持っている、清らかに引き締まった気配が伝わってきます。 「ここかい?」  こくりと頷くと膝を付き、襖をわずかに開きました。  すぅ  たしっ  すぅ  たしっ  少女が小さな音を立てて開け閉めすると、中から艶のある声が返ってきました。 「はいな」  小さな声ですが、静かなここではよく通ります。  少女はそろりと襖をずらした後、一呼吸置いて、するすると引き開けていきました。  茜の隠れ家。  夕の赤が、部屋を満たしていました。  十畳ほど、でしょうか。それほど広くない部屋の天井は低く、こざっぱりとした調度品でまとめられています。障子窓の奥に見えるのは、木々が生い茂る山。部屋の向きを考えればおかしな事だと、そんな事も ちら と頭をよぎりましたが、それらの考えは、すぐにどこかへ飛んで行ってしまいます。  部屋の真ん中、三つ指を突いた遊女は、そっと顔を上げ、「お待ちしておりました。寝月姫《ねつき》、と申します」と、葛湯のようにとろりとした声で迎えてくれました。  綺麗な一筆書きの鼻筋に、細められた目の縁から蕩けるように下がった眦《まなじり》。柔らかそうな頬や耳たぶに、ふっくらとした唇には紅が乗り、思わず触れたくなるほど魅力的です。  幾重にも重ねた着物は、内側ほど色が薄くなるよう仕立てられていて、一番外の金糸の刺繍が縫われた赤い着物から、鎖骨のあたりにちらりと覗く真白の薄着まで、実に見事な色の重なりを見せています。  誘われて一歩踏み出すと、後ろで音もなく襖が閉まっていきます。それを見届ける間もなく、立ち上がった女性に手を引かれて、部屋の真ん中に腰を下ろしました。  障子を閉めて風の音を塞いだ寝月姫さんは、貝細工の施されたお盆を手にして貴方の隣へ。目の前に、朱塗りの盃とお銚子が用意され、どうぞお一つと手渡されます。  でも、貴方はもらい渋りました。  今、お酒を呑んで眠ってしまっては、起きたときに夜になりかねないと危惧したのです。今日中にこの山を越えなければならない貴方にとって、盃は受け取りにくいものでした。 「でも、今日は床ではなく、お膝を所望なのでしょう?」  渋る態度を見た寝月姫さんは、貴方があぐらに組んだ足の間へ差し入れた手を床に付き、迫ります。頬に唇が触れる距離で問いかけてくるのです。 「お酒も飲まずにわたくしの膝へ頭をお乗せになられては、眠りにくいのではありませんか?」  確かに、目の前にこれだけ艶やかな肢体があっては仮眠でさえ取りにくいかもしれません。自信を隠そうともせず訊ねる声に、瞬きする間ぐらいの逡巡を見せた後で、貴方は盃を受け取りました。そもそも、間合いを盗まれた時点で、貴方に勝ち目はないのです。  トクトクと鳴る透明な液体は、盃の底に描かれた蝶をひらりと舞わせます。おっと、と慌てて口を付ければ、鼻をくすぐる酒精の匂い。  久しく飲んでいなかったお酒は、身体の隅まで巡りゆき、懐かしい熱を呼び覚まします。  一度口を付けてしまえば、引き返せなくなるのが上質なお酒の魔力。空けるたびに嬉しそうに微笑まれ、甘やかしの言葉で撫でられるのですから、更に引き返せなくなってしまいました。  結局、銚子を1本、2本。 「旦那様のお名前をうかがってもよろしいですか?」  ふうっ、と耳に入り込んでくる蜜に濡れた声。 「星摘実(ほしつみ)」  稀なる偽名。  答えると、何故か彼女は手を叩いて喜びました。 「まあ、お星様のお名前ですか。わたくしとはご縁がありそうですね。わたくしには月が入っていますもの」  ご縁に幸がありますよう。手をそっと押さえられて、くちびるが重なります。  祝福を擁する唇  微かに解けては  絡み合うしるべ  濡れそぼつ吐息  細い指先が、今重なったばかりの貴方のくちびるに伸びてきます。微かに触れた後、つい と横に流れました。 「お髭」  最近は手入れをおろそかにしていましたから、顎は無精髭に覆われているはず。  そんな感触を楽しむ指先が、やんわりと耳へと沿い上がります。頬を包む手の平に、くすぐったさと温もりを感じます。 「彫りの深いお顔にございます。輪郭は鋭さを持ち、まるで飢えた獣のよう。さぞかし腕の立つお方なのでしょうね」  頬からするりと衣の合わせ目に伸びる手。  その冷たさに、ぴくりと身体が反応します。   「隆起した胸板は逞しくて。お身体の芯に、硬い力が宿っているのを触れただけで感じられます」  じっと、彼女と視線が密に交わります。 「太い眉毛の下で輝く黒い瞳は、まるで……」  話の枝葉を途中で手折ってしまった彼女。  そっと目を閉じ、過去を遡るかのような表情を見せました。  もう戻ることのできない過去なのでしょう。辛く悲しそうで、本能的に優しく抱きしめたくなる顔を見せるのです。 「まるで黒水晶のよう」 「黒水晶?」  貴方はまだ見たことはありませんね。とても光沢のある、真っ黒な水晶のことです。  あやかしとの相性が良い石。 「はい。闇色の晶《しょう》の中でも特に光を返す石でございます。わたくしの故郷でも僅かながら採れましたが」  懐かしい。そう呟いた彼女が再び目を開くと、黄色掛かった薄めの瞳は、初心な子供のような涙に潤みはじめます。  胸を指でいじられたまま、互いの距離が縮まり、声なき思いをくみ取って、今度は一緒にくちびるを逢わせました。  吸われるような口づけは、身体より先に心を解かれる、遊び心に富んだ大人の仕草。涙が見せた純朴さは、彼女にとって捨ててしまいたいものなのかもしれませんね。


いろは峠と恋札めくり(前編) ~詩飾り小説の欠片~ ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 3
P V 数 : 1409.4
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 8

作成日時 2020-01-03
コメント日時 2020-01-05
#テキスト #ビーレビ杯不参加
項目全期間(2024/04/25現在)投稿後10日間
叙情性11
前衛性11
可読性11
エンタメ22
技巧33
音韻00
構成00
総合ポイント88
 平均値  中央値 
叙情性0.50.5
前衛性0.50.5
可読性0.50.5
 エンタメ11
技巧1.51.5
音韻00
構成00
総合44
閲覧指数:1409.4
2024/04/25 18時39分26秒現在
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    作品に書かれた推薦文

いろは峠と恋札めくり(前編) ~詩飾り小説の欠片~ コメントセクション

コメント数(3)
エイクピア
(2020-01-04)

前編から読むべきでした。後編から読んでしまいました。後編は全部読んだのですがこの全編は第1章の半分ぐらい読みました。遊女、妓楼など、楼ですか。太夫、太夫が出て来そうな。一見さんお断りではなくて、言葉巧みに客を定着させようとして居る様で興味深いものでした。夢回楼や揚げ代はとらないなど、多分に自然との合一が強いのだと思いました。残り全部を読むとまた印象が変わるかもしれませんが。

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千才森 万葉
千才森 万葉
(2020-01-04)

エイクピア さんへ  お読みいただきありがとうございます。  そうでした……詩は、どこから読んでも詩なんですよね。そういう意味でも、詩が持つ自由度は高いんだなと思わせられます。シナリオを読む作品という点でみれば、本作品は小説の形式となるのでしょう。後編から読まれたのでは、なかなか内容が掴みにくかったんじゃないでしょうか? 申し訳ないです。てか、後編から読んでも読み込めるなんて、相当な想像力がないと難しいはず。さすがです。  いささか、どころではなく長かったことかと思います。特に、詩をメインで読まれている方からすれば、異様な長さかと。現代詩然とした詩文と比較すれば読みやすいかなと、わたしも思うのですが、やはり普通の小説と比べれば読みにくいと感じますし。  詩のサイトに載せるということで、詩としての味わいが出ているのかどうか。そんな所も気になっていました。読んだ方が何かしら思ってもらえたのなら、良かったなと思います。蛇姫様、なるほど、蛇にその姿を変えて主に危機を知らせる。しまった、そのままだ(笑)  自然との合一は、わたしの思想の根幹を成すテーマになっていて、何かと自然に基づいた生き物が出てきますね。一方で、自然に飲まれてしまえば、人間は動物から離反した人間としての生き方を失うんじゃないかとも思ったりしています。自然に住まうモノたちは人間を引き込もうとしますし、人間はあらがおうとする。そんな思いも溶けていたのかもしれません。

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千才森 万葉
千才森 万葉
(2020-01-05)

沙一 さんへ  あれ? 『風車はまわる』で最後でしたか。何か大きなものになりそうな気もしていたので、少々残念ですけども、とても楽しませてもらいましたし、勉強もさせてもらいました。ありがとうございました。シリーズ完結おつかれさまでした。最後であり最初でもある輪廻は、終わりにふさわしい題材だったと思いますよ。すんなりと終われたようで、幸いです。  お読みいただきありがとうございます。  天才とも評される泉鏡花さんと比べられるとさすがに雲泥の差で(笑) ただ、幻想文学、あの怪しく不思議な世界観を巧みに操る技術は学んでいきたいですね。真似では面白くないですから、わたしなりの作品を書いていきたいなと思っています。そうですね、あの時代の作品を読まれる方からすれば、読みやすいかも。小説サイトにも載せたんですが、やっぱり読みにくいせいか(ドンパチやったせいもあるのでしょうけど)ほとんど感想が付かなくて。今の時代を考えれば、まだまだ読みにくいんでしょう。  あ、その歌を選びます? それなら、まだ帰って来やすいかもしれません。人間ですし。  あかさなはまやらわを(閉じる)→た抜き(狸)  あとは、蜘蛛と人魚でしょうか。まあ、実際は襖を開けてみないとわかんないんですけどね~。  短歌に出来たら良かったんですけどね、字数を合わせるだけならともかく、上手な短歌を書こうとすると色々作法も覚えないと(汗 てなわけで、自由形式の歌にして逃げてみました。  ミクロコスモス、陰陽和合。なるほど。これらの解釈から、どう読み解いたのかが何となく掴めて、面白いですね。楼を1つの宇宙と見立て、森羅万象を配置することでこの世界を表現しているが、それぞれを構成しているのは極小の陰陽である。といった感じでしょうか。作者よりも深くまで感じ入ってもらえて、嬉しい限りですよ。  そうなんですよ。文庫とサイトでは、文章量に対する印象が違うんですよね。一行の文字数も大きく違いますから、空行の印象も大きく変わってしまいます。その点は、意識していかなきゃいけないなと考えていますね。

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