砂を飲む

（事情を説明できますか？）雨が降っていて、ぼくは彼女を殺しそうになったので、アパートから出ました。殺してません、誓って殺しはやってません。きょうは、美術館に行くはずだったのですが、雨が降っていて、ぼくはあまり雨がすきではなくて、頭も痛いし、中止にしようと。家で映画を観ましょう、と彼女に言うつもりでした。でも、たまたま眠ってしまっていて、起きたら約束の時間を過ぎていて、それで、彼女がアパートにきたから、ぼくが怒ってしまって、美術館で待ち合わせていたのに、アパートにいきなり来ないでほしいと思って。雨が降ると耳鳴りもするから、美術館に行っても集中できないし、彼女は優しいから、いつでもいいよって言ってくれるけど、きょうはいきなりアパートに来たから、驚いてしまって。チャイムが鳴って、玄関のドアを開けたら、彼女が立っていて、閉めて、あ、あわてていたので、びっくりして閉めたら、彼女の指を挟んでしまって、痛！！となって、しまったと思って、ごめん、と言いました。そうしたら「どうしてあぱーとにいるの」といわれました。ぼくは、ごめん、といったのに。（落ち着いて。それから？）だから、もう一度、ごめんと謝りました。そのあとで雨のことを説明しました。雨で美術館には行けないから映画を観よう、そう言いました。そうしたら、彼女は何も言わずにぼくから離れていきました。一緒に映画を観たいのに、離れないでほしいと思ったので、腕を引っ張って、アパートに入れました。そのとき、もう怖くて、どうして帰っちゃうのかと尋ねたのだけど、ぼくには彼女がなにを言っているのか理解できませんでした。ぼくは映画を観るためにパソコンの電源を入れました。かのじょはいつものそふぁにはすわりませんでした。たっていました。かのじょはえいがをみないつもりでした。（あなたの彼女が映画を観なかった）それで、ぼくはアパートを出ました。もう堪らない気持ちになって、全身が震えて、終わりにしたいと思いました。ぼくは人間として欠陥していて、きっとこの先も彼女との約束は守れません。ならば、砂を飲みたいと思いました。むかし映画で観ました。悪いことを償うために、砂をたくさん飲んで死ぬ人たちがいるって。最後の望みで、ぼくはアパートに戻りました。一緒に砂を飲んで死のうと言いに行ったんです。でも、彼女は困った顔をするだけでした。一緒に死んでくれないんだ、と思いました。（それでこの公園に？）決まりがあって、よく噛んでから砂を飲みます。苦みとか鉄の味が口の中に広がって、舌ざわりがじゃりじゃりして、気持ち悪いけど、思い切って、次々にごくんと飲みます。これで罪を償えるんです。お巡りさんもどうですか。

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作品データ

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作成日時 2019-03-05
コメント日時 2019-03-29

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