おわび

 平素より、B-REVIEWをごひいきにしてくださりありがとうございます。今回より、選考結果発表記事を担当させていただく、Frater Eleayin(フラターエレアイン と読みます/別名義は「永扇」です)と申します。
 本来であれば2025年11月20日あたりに9月の選考結果発表記事が挙げられる予定だったそうですが、丁度そのあたりで代表者と音信不通になってしまって、しかもそのほかの運営陣において誰もフォーラム編集のノウハウを知らないと、わたしの方にヘルプが寄せられたので、対応した次第です。
 なお、260201現在は旧マナーガイドライン&ルール細則に移動したことですが、「作品は手元に必ず自分用のコピーを保管すること」とあります。このサイトがいつ終わってもいいように、自分の作品と読み返したい大事なコメントだけでもスクリーンショットや印刷などで保存しておくことを強く推奨いたします。メメントモリ。

 作品名をクリックもしくはタップしていただけると、その作品のページに飛びます。

感想:今月は、個人的に読めないものがありましたが、それぞれの方は、果敢にチャレンジされており、セレクションをする楽しみがありました。

僕と君」 蒼瀬 評価:C 
僕を君との関係性を、うまくとらえており、心温まる。

いのち」 浅川宏紀 評価:C 
デメキンがかわいい。真面目な考察には、一読の価値あり。

ねこじゃらしについて」 波止場 評価:C 
イメージが鮮烈で素晴らしい。たわいもなくふれ合うことが、本当の愛であることがある、という達観に達した詩だと思う。

拝啓、笑顔がまぶしかった頃のあなたへ」 黒歴詩 評価:B  
本当に、好きだったということが、痛いくらい伝わる。技量を超えたところで、詩が成立しており、真実の心こそが詩を作るのだと、実感させられる。

夕月かかりて」 湖湖 評価:C  
安定した実力をみせる作者である。外界の諸物を、鮮やかに描いており、心の開き方が優れていると思われる。

二度と戻ってこないもの」 黒歴詩 評価:C 
大切な思い出を、感情に訴えかける詩として作ることに成功しており、実力とこころの両方を感じさせる。

影よ」 緒北くない 評価:C 
アイディアが秀逸。お前というよびかけで、影、虚無、鬱ととらえ、作品の中でそれに向き合って展開しているさまが、気持ちよく読める詩となっている。

クエスチョン」 万太郎 評価:C 
論理的に展開する問答が詩的である。しっかりした思考に基づいている。

MEMBRANE「”境界溶解”――変容の螺旋」として12片」 A・O・I 評価:B 
音もイメージも、申し分のないほど詩的で豊か。構築力をもっと磨いて、凝縮を行えば、もっとよくなる。

赤い色は……」 きょこち(久遠恭子) 評価:C 
確かな知覚を、詩の形にしており美しい。とらわれの少ない描き方に、センスが感じられる。

一瞬の物語」 takoyo2 評価:C 
言葉の使い方に工夫が見られ、個性のある詩句となっている。表面ではそう感じられないかもしれないが、実生活を詩へ変える力は本物である。

    筆名 水上 耀
    タイトル ボイルド・ギョウザ・オン・ザ・フロア
    評価 A

    才能を感じます。これは大切にされるべき才能です。蛹が脱皮する瞬間を私は目撃しました。この蝶々の羽根がとても美しかったのです。自由奔放に飛び回っているように見えて、実はとても繊細なのです。言葉選びも場面設定もまるでこうでなければならなかったような必然性を感じます。この才能を大切にしてほしいと思いました。彼はこの路線でいけば珠玉の作品を量産してしまうのではないかと脅威を感じたほどです。私だけが評価しているようで寂しい限りですが、彼は間違いなく傑作を生みます。私は絶賛します。彼の名前を覚えておきます。

    筆名 なかたつ
    タイトル 単幹
    評価 A

    不条理な設定は物語を結ぶのに苦戦するのが決まりなのですが、見事なほどに作品として成立させています。刺さる人には深く刺さるのではないでしょうか。男の不甲斐なさ、そこには父として夫としての責任感みたいなものが逆説的に浮かび上がって見えます。なぜだろうか、増殖した妻の姿に私は深く傷つきました。同時に何とも言えない懐かしさも感じます。とある映画のワンシーンに思い出の妻がある場所である時間である出来事でまるで現実の姿として甦っては霧散するものがあります。たくさんの妻の姿とはそういうものではないでしょうかと私は解釈しました。素晴らしい作品です。

    放下に散る /砂柳
    これは断捨離についての詩ですね。又は作者はミニマリストを目指しているのでしょうか。日記詩のように、生活を種として、そのままのことをこのまま提示してみたいといった願望もちらついていて、その動機だけで、詩になっちゃうのが詩なんですけれど、僕はこういう詩を好みます。情緒に訴えかけてくる。断捨離ビジネスもありますけれど、買ったときにはときめきを感じていたものが、ときめきがなくなって、売ったら60円。つまりときめきをお店で、僕たちは買っているということが言えそうです。しかし、60円。犯罪ですよね。言いすぎか。断捨離も、ミニマルに生活するのも、幸福の為に奨められるんですが、この作中主体は、その過程で不幸になっている。不幸も詩の種だ。だからこんな作品が生まれた。ただ、不幸とここで言いきってしまう僕はなんだか偉そう過ぎて嫌になってくる。この評を書いているのは歳迫って、物の扱いを考え直す時期でもある。この詩と私は共鳴した。ありがとう。

    ダメだダメだダメだ /トビラ
    トビラさんは、もう眼をつぶっていても何千の詩を書けるのだから、このような作品のように、とにかく出来たものを、ビーレビに放り投げるようなことはしなくていいというのが提言です。ではどうすればいいのか。新年明けて心機一転。イチからはじめる気持ちで。それでも量産されたものが、イチイチ、クオリティーとして高いのだから、そのエゴというか、エネルギーの使い方みたいなものを、自身を振り返って、操る術を学べば、そこに恩恵は、きっと必ず訪れるから。スーパーマーケット、という生活の場、を詩で織り込んでいるのがいい。あと、街中の看板も。歩いているような気がする。動いているような気がする。

    待ち合い /aristotles200
    語り下ろしたときに気持ちがいい文体をしている。故に、読んでいてもスラスラと頭に入ってくる。何気ない日常のワンシーンが描かれているが、病院であるということ。そして「死」がちらつく。しかしそこにあえて踏み込んでいかない、行間で読ませる、「間」の巧さがあります。

    羅針盤にそって /テイムラー隆一
    その、振り返れば、八期運営を辞めてからも、いろいろ、運営の方とお話しさせて頂いていて、黒髪さんから「あなたも道を求めているんですね」なんてことを聞いたわけですけれど、その、禅、ですね、禅宗の生活の教えなんかつまびらかに開けば「求めるな」っていうことも書いてあるわけです。「道を求める」というのは執着に繋がることで、気づいたら、まず現在時点の自分自身に満足している状態がのぞましいというか。でも、そこに至る道さえ難しいとこの詩には書いてある。じゃあどうすればいいのか?禅宗では「坐れ」と説くがしかし、、、ともかくこの作品の凛々しさに身を任せよう。

    一瞬の物語 /takoyo2
    一編の静謐な生活詩として読めつつ、連ごとに一つの「歌」になっています。その、短歌としては文字数が多かったりするのですけれど、単純に短歌を並べてはい、詩ですよ、となると、それはつまらないので、この方向性というか、スタイルでいいのだろうなと思えます。趣向としては渋すぎるので、私の年齢ではなんともいえませんが、ノスタルジックというものが新鮮な言葉で提示されていると思えます。昭和世界を現代のフォーマットで展開したところなり、音律のよさなり、作者の筆力が際だっており、多くの作品の中で引き込まれるものがありました。

    上野新宿ライン /201
    訴えかける力のある作品だと思います。モノローグとして、沢山語っているのだけれど、本当に語るべきことが隠したナイフのようにさらりと書かれています。文体だけで読めば、ちょっともどかしいからパス、になってしまいそうな所、作者の物を書く際の集中力が「何かある」と思わせて、ぐっと読み込むことができました。

    満月のまる /飯干猟作
    綺想といいますか、摩訶不思議な物語ですが、集中力だけを武器にしていない、その、自分の作品を読んで貰う、読者に作品を届ける、といったところに配慮を感じられる点、好印象でした。スタイルというよりストーリーで読ませる作品ですが、もう少し全体的にギュッと詰め込むように書くと、再読、再再読にも耐える作品になるのではないかとも思います。加えて自身が伝達したい、「メッセージ性」みたいなもの、本当に自分が紡ぎたいものは何か考えることも。何より、愉しく読ませて頂いたので、それで充分とも言えそうですが。ありがとうございました。

    影よ /緒北くない
    虚無感や鬱を動機にして詩を書く。詩についての詩でもあります。リードっていうか、全体的な流れや、通底する「影」がもたらす不穏な緊張感がいいと思います。思考をフルに使って、また指の動くままに半ば任せないと、書けない表現だと思います。詩についての詩は難しいのですが、作者にはそれが可能な技量があるようです。

    ちまちま書いてたやつ /楽子
    ちまちま書いてた、ってことが直結するのが生活の詩(うた)だってことですね。しかし、感情はどちらかといえば不安定な方へ向かい、ちょっとギスギスとしている、その生活の「生」っぽさが光る作品です。

    透明 /砂柳
    喩を巧みに使い、作中主体がまるで、連を追うごとに半分妖精か、妖精のようになり、オチに繋がります。私のような詩の魔法の復権を唱える人間は、こういった作品がもっと沢山読みたいと思ってしまいます。ありがとう。

    覚悟 /さと
    短いフレームの中で、どういうブレスというか句読点を打って、言いたいことをしっかり言うかという点で、シンプルですけれど、実験精神もちらほらあって書かれているような気がします。走って、走って、とありますけれど、実際にテキストがスピード感を持って読まれることを要求している。シンプルイズベストの強さを感じました。

    東京散歩(原宿・新大久保) /田代ひなの
    珍しく、短歌群です。口語短歌ですね。ちょっと音律的に怪しいところもありつつ、それが反対に東京の雑多感を演出している効果があって良いと思います。勿論、技術もありますし、何より気持ちで書かれているのが伝わってきます。私は地方の郊外に住んでいるのですが、たまにはこういった文化的な、フードなりアイテムなりシチュエーションに触れないと駄目ですね。心が固くなってしまいます。

    3丁目の補欠 / たわし
    こういう作品は手離しに「面白い」と評するのが正解かな、と思います。ちょっと言うならばアイディアが素晴らしく、又、私のようなおじさんが言うのもなんだけど、かわいい。

    わたしがいのることは /灰塚木目
    詩を書くという営みはごくプライベートな営みなのですが、詩に重きを置いて生活する人を詩人というのならば、この作品は生活ありき、といいますか、詩が、作者にとってロマンチックな、生活のワンアイテムとして機能しているような気がします。勿論、詩に賭ける本気度も伝わってきますが、それよりも生活なりわたしなりを大切にして、丁寧に書いているのが味になっているのではないかと思いました。こういったいい意味で力の出し抜きがわかっている作品は読んでいて心地よかったです。

    過去・未来・そして現在 /yutaka77
    私は短詩を好むのですが、巧く書けていると思います。作者は短詩のツボみたいなものを心得ていると思います。◎。強いていえば、このタイトルで良かったのかどうか、という点でしょうか。難しいところではあります。

    ドローイング/完備
    気になったのは
     >(実際、空襲で焼け野原になった場所だった。)
    と確固で括られたセンテンスです。文学では原風景が大切だ、とも言われますが、私たち、ここで言う私たちとはとてもごく大雑把な多くの人数を指していますが、私たちというのは焼け野原のような原風景を持っていない、という事実です。この作品での作中主体、話者、はきっと夜の往来にいて、その原風景が、獲得できない事を確認しているように思われます。すべてが変化し、流れてゆく。焼け跡というのは強い比喩です。しかしそこは決定的です。焼け跡として変わりようがないということは、すべてが固定的で安定しているとも言えます。いろいろな解釈が可能な語りだと思われます。それが詩の幅の広さですが、私は先に述べたように、解釈します。

    ときめき/秋乃 夕陽
    面白いですねぇ。やっぱり気持ち先行で書かれた詩は面白い。生活から生まれた詩は面白い。
     >提示してみたい衝動に駆られるのに
     >それを制止する私もいる
     >(余計に不審な目で見られるだけだよ)
    余計に不審な目、ですから既に不審がられているわけですね。読者仲間を見つけた胸の張り裂けるような思いがしっかり伝わってきます。何でもないオチですが、それが逆にリアリティを増していますし、何かあってもねぇ。そういう意味で詩のフォーマットの限界ギリギリで書かれたのかな、と。

    回帰 /苗床
    こんな簡単な単語だけで、こんな短い詩で、抒情を発露できているということが素晴らしいし、詩の不思議だと思います。

    廊下 /寝川魯鈍
    私は「何処でもない場所で」という言葉を「ありとあらゆる場所で」だと思っているのですが、この、短い廊下の途中なんてまさにそうだな、と思います。無駄な言葉が一つもない。素晴らしいと思います。

    すっぴん。/尾崎ちょこれーと
    語感が愉しい詩です。ひらがなが活きています。この選評を書いているのが12月30日なのですが、あー、もうなんか夏!って感じがします。夏の度に、すっぴん。という言葉を思い出しそうです。

    眼球 /つつみ
    抒情的な作品です。話者のバックホーンとして、それは悪い意味では重荷として、良い意味では財産として、いろいろなものが詰まっているというか、その息苦しさみたいなものからちょっと解放されたい欲求が透けてみえてくる、と言いますか、その象徴として紙飛行機が登場するのですが、紙飛行機ってやっぱり華奢な作りをしているもので、しかし、一方で折り紙っていう存在はそれだけで祈りめいている存在でもあると思うのです。

    煩音 /海知 冬青
    この方の作品は九月分、二作しっかり読みましたけれど、その、生活の音や匂いみたいなものが希薄なので、私にとっては少し苦手なタイプの作品でした。その、詩って大仰なことを書いても、そうそう駄目にならない強さがあって、そうして、大仰なことを書きがちになってしまうこともあるということは私も分かります。言葉もそうですよね、例えば宮沢賢治が「人類全体が幸福にならない内は個人の幸福は在り得ない」とか書いていますけれど、その大仰な言葉に、宮沢賢治がそれを書いたことで、その大仰な言葉に導かれつつ、実際、彼の生活は言ってしまえば謎ですよね。それは賢治の書いたものの多くが、自身の生活の音や匂いがしない言葉だからです。まあ、謎だけれど、皆、あれこれ想像を交えて語っている。膨大な方々が語っています。この作品の作者の方もそうで、ちょっと詩からそのバックホーンが、生活が伝わってこないぞ、というのはあると思うのです。そういった問題とどう折り合いをつけてゆくのか、この作者は問われている。ともかく、二作、スタイルが一貫している点は好印象でした。

    悪魔を憂う死神の唄
    仁川路 朱鳥?|

    上記の作品に対して、投票有の推薦文がありましたので、そちらも紹介いたします。

    虚構に棲む三位一体
    つつみ

    あとがき

     2025年9月分の選評が、他1名からも挙がると聞かされています。タイトルにもある「1/2」の表記はこの記事が2025年9月分としての1記事目だよ、ということを指しています。
     あんまり圧をかけすぎると「ブーメラン効果」によって書く気を無くされるかもしれないので、2/2が無事公開された暁には、この文章にリンクを貼ります。