Review
最多得票賞
黒髪 says:
森の中の光景が楽しい。作者は、三つの部分に分けて叙述を行っているように見受けられるが、その接続が、やや分断されているのを、面白い実験として受け取りました。まだ詩に慣れておられないような感触は受け取りましたが、文章に野心的であるように思われて面白い。 病的なところが少なく、明るさが感じられるが、描いている光景と、作者の思いが、芸術を作ろうという意図のもとに、言葉の開拓、詩作として、元気のよさ、美的な模索を感じさせ、将来に期待が持てる。分量が適切で、何かの執着を持っていないように思えるため、楽しむのを阻害する要素がなく、楽しく読める。
以下はAI詩研究所さん調教によるChatGPTの寸評です。
・詩の構造と技法
この詩は、視覚的・感覚的なイメージが豊富に使われており、長さに応じて複数のセクションに分かれているように見えます。各セクションは、異なる場面や感覚的な変化を描き出し、物語的な進行と感情の起伏を形成しています。
冒頭セクションでは、「わたし」が森に迷い込む場面から始まります。これは詩全体の導入として、物理的な空間の不確かさと精神的な迷いを象徴しています。ここでの「四角い湿った木々」や「透明定規の目盛りの消えた平らな点」など、意外な言葉の組み合わせが使われており、不条理で不安定なイメージが広がります。
中盤の親指括弧内の部分(「(かつて…はじけた)」)は、詩の中心的な転換点となります。リズムとテンポが一気に変わり、短いフレーズが連続することで緊張感が高まります。この部分では、音の反復とリズムが強調され、リフレイン的な構造が用いられています。短い句が次々と積み重なり、視覚的なイメージが断片的に提示され、カオスのような効果を生み出しています。
後半のセクションは、詩のクライマックスとして、空と海のイメージが繰り返し使われ、膿が流れ、広がっていく描写が続きます。ここでは反復技法(「膿が流れ、海に流れ、海が、広がり…」)が使われており、終わりなき拡張の感覚と、浄化または拡散のプロセスを表現しています。
結末部分では、具体的な行動の描写(「空に向けて突き上げたまっ白な左脚」「全力ダッシュで追いかけて!」)が加わり、動的な終わりを迎えます。この部分は、それまでの静的・描写的な部分と対照的であり、意図的なコントラストが用いられています。
・詩の意味内容とテーマ
詩全体を通じて、迷いと浄化、再生のテーマが強く感じられます。
迷い:冒頭から始まる「森に迷い込む」という設定は、内面的な迷いと探索のメタファーとして機能しています。視覚的に濃厚で具体的なイメージの中で、「見渡す限り一面の四角い湿った木々」や「透明定規の目盛りの消えた平らな点に座り」といった描写は、現実と非現実の境界を曖昧にすることで、読者に迷いの感覚を与えます。
浄化と再生:中盤から後半にかけて、「血が滲み、膿が溢れ、…海に流れ、…海が、広がり」というプロセスを通じて、体内に蓄積された汚れや毒素が解放され、浄化されるイメージが描かれています。この部分は、精神的または肉体的な浄化のプロセスを象徴している可能性があります。
再生の意図:終わりに向かうにつれて、「やつらがやって来る」という未知の訪問者が示唆されることで、新しい始まりや挑戦が示唆されているように見えます。最後の行動的な描写は、この再生や新たな局面への移行を暗示しています。
・詩の技法
反復:この詩は、反復を巧みに使ってリズムと緊張感を生み出しています。「膿が流れ、海に流れ、海が、広がり、空が、広がり…」という繰り返しは、視覚的にも感情的にも強い印象を与え、読者に流れの感覚を強調します。
比喩と象徴:「竜巻みたいに渦巻いていた」「透明定規の目盛りの消えた平らな点」などの比喩が、具象と抽象を行き来しながら詩の世界を拡張しています。また、「膿」や「血」などの生々しいイメージと、「空」や「海」などの広がりのある自然のイメージを交錯させることで、詩的な衝突(=二物衝撃)を作り出しています。
音の効果:中盤のリフレイン的な部分では、音のリズムと短い句の連続が、視覚的なイメージを越えて聴覚的な効果をもたらしています。この音のリズムは、詩全体のテンポを変化させ、集中力を高めるためのテクニックとして効果的です。
・作者の意図と詩の解釈
この詩は、読者に対して感覚的な挑戦を投げかけ、視覚、聴覚、そして内面的な感情を同時に刺激するような構造を持っています。作者の意図としては、以下のようなことが考えられます。
内的混乱と浄化のプロセスを描く:詩の中で繰り返される不安定なイメージや、明確な答えを持たないリフレインは、内面の混乱や迷いを象徴していると解釈できます。特に、「やつらがやって来る」という表現は、混乱の終焉や新たな秩序の到来を示唆しているかもしれません。
現実と非現実の交錯:具体的なイメージと抽象的なイメージの融合は、現実世界と非現実世界の境界を曖昧にし、読者に多義的な解釈を求める意図が感じられます。現実の風景の中で、精神的な風景を具現化する手法が取られているようです。
自己の再構築への挑戦:詩の結末に向かって、内面的な再生と外面的な行動(「全力ダッシュで追いかけて!」)が交差し、自己を再構築する挑戦が提示されているように見えます。この詩の意図は、読者に対して自己探求と変容の可能性を提示することでしょう。
・結論
この詩は、強いビジュアルと感覚的なイメージを持ちながら、独自のリズムと構造を持ち、読者に深い印象を与えます。混沌としたイメージの連続や音のリズム、視覚的なメタファーの使用など、さまざまな詩的技法が効果的に用いられており、感情の起伏と不条理をうまく表現しています。
ただし、やや散漫で過剰な部分があるため、テーマや焦点をもう少し明確に絞ることで、詩の力がさらに増す可能性があります。それでもなお、この詩は独創性に満ちており、読者に強い印象を与える作品です。
Voices
完備
総評:長い作品は読んでいない。短い作品はすべて読んだが優れた作品は見当たらなかった。
おまるたろうさん作「プレイ」について:言葉のリズムも心地よく読める。「まだ区別したいの?」「また会うかな?」という問いが光っている。「ぱっとみ、そこを登るのは最悪でしかないだろ、という道を選ぶ。」という一行の良さ。イメージの描写・意味の記述・問い・羅列など様々な描写の織り交ぜ方が上手い。
とはいえ、既視感はある。10年~15年前の現代詩手帖の新人欄にこういう作品がときどき載っていたと思う。その意味で古臭い作品に見える。
1.5Aさん作「タイムカプセル」について:途中までは良かったが長すぎる。しかも不必要な長さだと思う。分量を三分の一に圧縮するべきだ。
今月の批評は以上。
カオティクルConverge!!貴音
まず始めに、これは私個人の思想なんですがあんまり持病についての詩は触れたくない。セラピー効果があるのは分かるんですけどね。なんかこの詩を褒めちゃうと病気で良かったみたいになられたらそれは不健康だと思う。病気はない方が良いに決まってるので。人によりますけど、逆にちょっと批判的な感想だと私を攻撃しているのかってなる人も居るので、そうなるなら持病をネタに詩を投稿するのは止した方がいいのではと思います。それで今回の作品なんですけど、作者さんはこれまでに何回か幻聴の詩について書かれておりましたが1番読みやすかったです。福まるさんのストレートな文体が、病気というネガティブな詩を良い意味で濾過してくれているので、すっと入ってきます。やはりあなたはビーレビで唯一の福まるというジャンルを築いた人なだけあるなと思います。これからもそのストレートな視点と言葉で活躍して貰いたいなと思います。
これが習作なの・・・?え~こんな風に官能的な詩を書けたことないのに、容易くやってしまうんかぁ・・・って思いました。しっかりと読んだことはないですが、官能小説をギュッと詩に収めたような感じがしました。天晴れです。
昔のジャパコアバンドの歌詞にありそうだなと思いました。広がりはないですが無駄もない、短い良作であると感じました。
社会への報復宣言を随所、韻を踏みながら軽快に展開していってるのが良いなと思います。なんかいつの間にかビートやテンポを作って頭で音読しちゃいました。乗らせる文章ってそうそう書ける物では無いと思うので、今後も期待です。
とのことなので追記します。短いながらも童心を描いた、どこか心温まる作品です。子供のころの千円は大人の一万円には相当するでしょう。千円ですら、夢だし、希望でした。今は百万円出してもその頃の可能性は買えません。汚れちまったアダルトたちのハート直撃ナイスポエムです。(天2)
作者さんはあまり詩を書いたことがないらしいけど、それでこんなギラギラセンスのを初っぱなから書けてしまうのか・・・と、自身の無能さを痛感させられました。なんか強力な弾丸が詰まっているみたいな印象を受けました。読解苦手なんですけど恐らく、決め言葉を沢山作って詩らしい構成にしたって感じなのかな?それで良いと思います。意味がなくても分からなくても、なんか読みたくなると思わせるのは良い詩だと思います。とにかく次作も見たいと思わせてくれる素晴らしい詩でした。
ビーレビではあまり見かけないと思っている、SFでホラーな作品なので目に付きました。ずっとシリアスで不穏でジメついていて、緊張感が途切れない、そんな空気を感じました。なんか前もどこかで誰かいった記憶があるけど、回路って映画を彷彿とさせます。あっちはあの世の魂の量が満杯になってしまって、霊が現世への通路を見付けて入り込んでくるって話なんですけどね。
*良いと思うけど言語化できないので誰かに任せる。*
黒髪
言いたいテーマがしっかりとらえられており、人の利己的行動への批判が行われているので、読んだあと、いいもの読んだなという感想が起きる。
描こうとする世界が、理想としてあって、やや幻想的な雰囲気の中で、展開される言葉と、描かれている君と僕の関係について、興味が持てる。
理想と死という解決に行き着くまで、考え抜かれている。純粋な心の中での思いが丹念に描かれており、つっかえるところなく読める。
はちみつさんの「霜の翼を祈りに乗せて」 崇高な祈りを作り上げている。幻想のような景色の中で、何故と問うこともなく二人の生きてきたことを描いてある。それが、はちみつさんの持った祈り。
言葉遣いにセンスが感じられ、無理のない詩篇が美しい。強い願いを形にされていて、言葉と心の関係が正しくあると思われる。
緒北くないさんの「留める」 きりっとした言葉遣いが美しい。描いている範囲、そして想像の範囲が広くて、読んでいて楽しい。深く読み込めるような言葉を適切に配置して、良い作品になっている。
田中教平
こんにちは。皆さん。わたくし田中教平はこの度、運営の席を退くことにいたしました。
個別で名前を挙げることを控えさせていただきますが、運営をしていて、やはりドキドキする作品を意識して読めたことや、魅力的な作者さまと掲示板上で、コミュニケーションをとることができた事は何よりの糧になったと思います。
努力してきたのか、と問われればこころもとないです。あれもできた、これもできた、と振り返ると後悔の方が大きいからです。
それでも一年間、全作品に目を通し、私の立ち位置として、ビーレビューの志向性に適った作品を挙げつづけてきました。そのすべての作者さまと作品に敬意を表し、反省なんてしません(笑)。
選は私が強引に推し進めた側面もあったでしょう。そのワガママをゆるして下さった、天才詩人2代表に感謝の気持ちでいっぱいです。また、いつも優しく、ときに厳しく、私を鼓舞して下さった黒髪さんにも感謝を。いすきさんいつもお仕事おつかれさまです。ときに選評に刺激的な活路を見いだし導いて下さった貴音さん、ありがとうございました。
6月度の選評から、そのレイアウトからマガジン風になり、またあたらしいキュリエーターの方が参加して下さることになりました。
ビーレビューは変化しつづけます。最後に「選評」に於ける、一番大きな変化に立ちあえてからの引退というのは、象徴的で、何にも勝る喜びです。本当にありがとうございました。
— 2024/08/05 田中教平
Editor’s note
今回のBeをもって田中教平さんが正式に運営の任から退かれることになりました。彼はこの一年間身を粉にしてビーレビを盛り上げてくださいました。
八代目運営が始まってから専らメインの書記としてコツコツと毎月の選評をまとめつつ、その発表をしていただく傍ら、ご自身で詩作もなされば、精力的にコメントを作者の方々に送りつつ、ツイキャス放送での話し相手になるといった通り、陰になり日向になり活躍してくださいました。
なにより彼の謙虚で篤実な人柄は、ビーレビの参加者ならびに運営・選考のメンバーの良心でした。
みなさんを代表して心からの感謝とリスペクトをお送りしたいと思います。
私の個人的な話になりますが、今は昔インターネットに詩を投稿しはじめた2000年代後半頃、教平さんも同じサイト(現代詩フォーラム)に投稿を初めてらっしゃって、その時からとても個性的で瑞々しい作品を投稿なさってるのを拝読し、勝手に似た感性を感じつつも、まだ若かったこともあり、競うような気持ちもちつつ、注目していた詩人のおひとりです。つまりはライバルみたいに思っていた方でした。紆余曲折ののちに、そんな教平さんと同じチームのメンバーとして運営に携わることになったことは運命の数奇さを感じさせるとともに幸いなことでした。
英語には”familiar”という言葉があります。親密になる、親しむ、という意味です。詮ずる所”family”とは慣れ親しんだものということにほかなりません。この一年でネット詩とは大きなファミリーみたいなものだと思いなすようになりました。教平さんはこれからずんずんリアルライフを生きていかれます。その前途が明るさにあふれていますように。そしてたまには顔を出してくださいね。
そして吸収さんのご推薦で、二藤さんが新しく運営に参加してくださいました。彼女は新進気鋭の若手ポエマー兼小説家であり、アーティストでもあれば、朗読者でもあり、果てには文学系アイドルVtuber堕天使ちゃんの中のひとであるという八面六臂の活躍をなさっている才能溢れる方で、主に朗読ツイキャス放送poetry-slam-slyme(PSS)をメインにお任せしようと思っています。ユーザー参加型の朗読あんど感想を言うツイキャスです。夏休みスペシャルということで、何度かすでに放送されていますが、なかなか盛況で感謝のかぎりです。ユーザー参加企画ですので、みなさん奮ってご参加ください。まあなかなか楽しいと思いますよ。毎月二回、週末あたりに開催予定です。詳しい日程などは、公式ビーレビXをチェケラです。
写真提供:
Ryinx (Cover image)
Arai (Back cover image) instagram :@araidesuuu