【ビーレビュー大賞】
あなたのかたまり
ハツ
https://www.breview.org/keijiban/?id=12358
〝 忘れるためには、生きるしかない ″
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【最多得票作品】
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673:怨憎法
仁川路 朱鳥
https://www.breview.org/keijiban/?id=12329
「怨憎法」という魔法の書かれた魔術書と理解しました。初めの方、手足をもいでゆく、というかなり暴力的な描写があります。わたしたちは、あいされている、と始まりますが、「愛されている」ではないのですね。内部分裂と思想統一という、人類の歴史の変遷。
バイナリエディタ、サムチェックといった、コンピューター用語が出てきますが、数学は数によって、離散(デジタル)も連続(アナログ)も扱えますが、コンピューターはデジタルです。人間の身体はアナログです。コンピューターを人間よりも愛する、などというと、コンピューターには感情がないため、何らかの自己矛盾に陥ってしまうと思われますが、コンピューターを友達とすることはできます。人間の、情報処理と身体との矛盾によるエラーを、コンピューターは指摘し続けます。コンピューターは決して嘘をつかない。人間は、身体と頭との違いのために、愛に関してエラーを生み出し続けてきました。歴史において。
誰かに明け渡してはならない、だが、人間は、誰かに明け渡したいという欲望を持ってしまっているのではないでしょうか。だからこそ、明け渡してはならないのですが、明け渡すことのない大人は、一人もいないと言えるでしょう。
ころせ、殺せ、と命じるもの、手に持つダガー(短剣)で、悪の存在故に、憎まねばならない、この作者は、悪魔と戦う神々の眷属でしょう。自分が憎まれたことがないと思っているのんきな人(私もそうです)は、はっとするのではないでしょうか。
怨憎法という魔法を使っている作者は、その憎しみの魔法を使い続けることによって、より偉大な愛の魔法を使えるようになっている途中なのだと思います。
切実な願いの中で、戦い続け、すべてへ向けて愛を与え続けている作者は、人間として進化していると思われます。そのために、詩も進化をし続け、最高得票の結果を生む魅力のある詩になったのだと思います。素晴らしい詩を書く力のある作者に、栄誉が付されます。【黒髪】
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【優良】
サイクル
佐々木春
https://www.breview.org/keijiban/?id=12395
そう everything goes in cycles 世界はぜんぶ繰り返しでできている 人間はどこか自動的なとこがあって日常はオートパイロットにお任せなのである お決まりの風景 お決まりの人々 お決まりの食事 お決まりの言葉 そんなことを毎日毎日繰り返して サイクルとファミリアーになる 慣れ親しみ 家族になっていく サイクルは永遠なのかもしれない そしてそのサイクルしていくということだけが永遠なのかもしれない サイクルはいつまでも続く 回って回って回って 月が満ちて 欠けていく キッズだキッズだと思っていた親戚の子供が見ない間にずいぶん大人になっている 俺たちだって昨日までゲームボーイでポケモンをしてたと思ったのに いつのまにか立派な成人だ なにもかもいつか終わりが来るけど とりあえずは それがライフであり サイクルである【天才詩人2】
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昨日より生きている
やまなみ
https://www.breview.org/keijiban/?id=12376
生きづらさを抱えて生きている人が大勢いる、らしい。それはインターネットで可視化されての事だけれど、昨日より生きている、という事は、昨日は今日より、死んでいる方に近かったという事ではないのか。作中、話者は、大切に持ち歩いた小瓶を落としてしまっている。私たちには、変わる為に、昨日より生きるために、何か契機が必要なのではないか、とそう念頭に置いて考えてみたけれど、本当に生きるためには、きっかけも勿論、必要であるとして、根本的に生活の、習慣、或いはパターンの組み換えを行っていかなければいけないと、多くのライフハックの本は説いている。しかし私たちは「何かが起こる事を待つ」その期待から逃れられないのではないか。何か、きっかけがありますように。そうして人生が、今より改善しますように。昨日より、生きられますように。その切実な願いが端的な筆致で表現されており、推薦し、又、この作品は、運営内で支持を得て、優良へ選出されました。どうか、昨日より生きている、その感慨が日々、持続して良い方へ、向かってゆけますように。【田中教平】
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海が嫌い。
紗月皐
https://www.breview.org/keijiban/?id=12350
運営代表と通話しているときに、ボードレールもそうだったのだけれど、フランスの詩人にはマザー・コンプレックスが多くて、結局、彼等は母としての海、母なる海を、謳いあげているという話があった。この作品には明らかには「その感」の言及は、されていないけれども、一方でその、厳しい母が嫌いである、とか、一方で自己のアイデンティティを確認する上で、その母である海をのぞむ、と、こう、構図化すると、あながち間違いじゃないんじゃないかなー、と思ってしまう。間違いじゃないと思いつつも、作品に向かい直すと、この解釈じゃつまんないんじゃないかなーとも思ってしまう。図式化できすぎて、それだとつまらないというか、やっぱり文体、というか、この素晴らしい語り口をもう一度点検をした方が宜しいような。それは置いておいて、絵になる作品ではあった為か、又は語りの余韻が良いのか、この作品は運営で支持を得て、優良作品に選出されたのですが、どこかひねりつつ、シンプルであった点も良かったのではないかと。 【田中教平】
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そのほか みちはない
А・O・I
https://www.breview.org/keijiban/?id=12298
以前、現代詩フォーラムで「自由律俳句」それも種田山頭火もどきのものを、書いて投稿していた一時期があって、それらは私に清算する側面があるから、手元に印字したものしか、今、残っていないのだけれど、或るユーザーさんから「読んでいると安心した気持ちになります」ってコメントを頂いた。そのとき、ちょっと気にしていたのだけれど、結局、種田山頭火の句を読んだり、野口雨情の詩を読んだり、又は西行の歌を嗜んだり、万葉集で、これは、と思う歌に立ち止まるとき感じる安心を指して、私はそこに「滋味深い」という形容を見いだしてこの感覚が何かネット詩に抜け落ちているんじゃないのかと思っていた。
書かれた言葉というロゴスがあって、そのロゴスが目に止まったり、耳に入ったりする、パルスがある。
そのときに、口語自由詩というものを読むと、感情が飛躍する過程があって
ギラギラしたり、ドキドキしたりするわけですけれど、先のフワッと「安心する」「滋味深い」といった感を生むとしたらどうしてなのか、このА・O・Iさんの作品を通じて学べる側面があるというか、そこを突いてゆくと結局、ひらがなのひらく感じと閉じている漢字、そのワンフレーズ、そしてその波のように脈打つ、行わけに秘密がありそうだけれども、なかなかここまで書く事が私はできない。できないという事はまだまだわかりえていない。
その、ふわっとしたワンフレーズ、その語り口を支えるためには、それ相応のテキストのボリュームが必要になり、且つ、全体の整合性とか或いはえてしてわざと破綻したように見せかけて作品を重層化していっているとなると、その作品群はやはりそれに長じたА・O・Iさんにしか書けない、と強く言いたい。長じる。長じてしまう。本当の個性ってこういう事を言うのじゃないだろうか。【田中教平】
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無題
ハツ
https://www.breview.org/keijiban/?id=12389
【佳作】
水死体
せぶんてぃいん
https://www.breview.org/keijiban/?id=12441
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プラネット
内田
https://www.breview.org/keijiban/?id=12435
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照明落とした体育館
群島びょうびょ
https://www.breview.org/keijiban/?id=12403
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これまでの物語とこれからの物語へ
ほぼ
https://www.breview.org/keijiban/?id=12385
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暗渠
入間しゅか
https://www.breview.org/keijiban/?id=12314
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すこしだけ混沌としてほしい
1.5A
https://www.breview.org/keijiban/?id=12373
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自画像
古銭好き
https://www.breview.org/keijiban/?id=12356
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【フレーズ賞】
ある国の、ある夕暮れだけを忍ばはせ
思い切りのつかない箱を開け
ユキドケテントウムシ「散歩」https://www.breview.org/keijiban/?id=12418
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蒼空が、ずっと続いてゆく
Michie「バタフライ」https://www.breview.org/keijiban/?id=12413
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いつの日か
湧き水が湧き
清水が流れて
花澤悠「どぉか」https://www.breview.org/keijiban/?id=12391
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赤い流星と黄色の音符
ふたつの意思が結婚式を挙げる
トビラ「二重線」https://www.breview.org/keijiban/?id=12351
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時間は無内容のまま隆起し
あたかも何者かの倨傲によるかのようだ
yasu.na「時間の内容」https://www.breview.org/keijiban/?id=12342
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