今回、選出過程の中で、今までのように常に大賞や優良などを与える様なことはせずに、賞にふさわしい作品が出てきたときにのみ、大賞や優良をあたえるべきではないか、という意見で、一致したため、大賞はなかった。優良に選ばれた『私たちもこのロスト・ハイウェイの先を急ぐ』も運営内での選考投票において複数の票を獲得はしたが、大賞とするにはまだ一歩足りないとの意見が多く、優良となった。また、澤あづさ氏の渾身の推薦文が書かれた田邊容氏の『花鉢』に関しては、運営内でも話題として上がったが、入選には至らなかった。同様に、入間しゅか氏やA・O・I氏の作品についても意見が出たが、佳作または落選の形なった。その他、いくつもの作品が選考の過程で話題として出たが、運営内で今回、作品よりも多く問われたのは選考過程の在り方と、大賞、優良、佳作の位置づけであった。
 ただ単純な意味で、良かったからというような消極的に賞を与えるのではなくて、意味のあるものにしたいという意見があり、例えば、佳作に選ばれた作品に関してなら、「佳作にしておくべき作品」という視点で、「貴方の作品には明確に足りてない部分がある」ので、もっと頑張ってほしい、という意味であるとか、「ただ上手い」だけの作品を大賞にはしない、などの意見である。
 選考過程もまだ手探り状態であり、大賞、優良、佳作以外にも賞を設けるべきではないか、という意見もあり今後、どのような形になるかは選考している私達自身にもわからない。
 ここからは私個人の意見だが、本当に良い作品は、二通りの反応しかなくて、その作品に関して、とにかく何かを「語り」たくなるような衝動に駆られるものであるか―実際に語れるかどうかは別にして―、作品に圧倒されて言葉がでないかのどちらかしかない。そういう意味では、饒舌に語りたい作品もまたその逆の作品も今回はなかったように私は思い始めから大賞の作品には消極的であったし、佳作ですら該当なしの方向であった。
 簡単ではあるが、これで総評としてさせていただきたい。

 これが俺達が打ち出すビーレビの作品だ!というのを世界に向けて発信するんだ的な発言で滾っている男が一人選考にいる、この男のせいで選考の空間の湿度は高く汗が噴き出る。つまり、大賞がほしければこの男をうならせなければならない。
その男の名を、ゼンメツという。

わかったか。君たちはこのゼンメツという男を
倒さなければならない。