作品投稿掲示板 - B-REVIEW

杉本 順


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プロフィール
記録
プロフィール:
心のままに詩を綴ります。呟きも。読書(主にSF,推理,文学)音楽好き,好きな作家→P.オースター、伊坂幸太郎、イェイツ、E.ディッキンソン、S.ミルハウザー、P.K.ディック、G.イーガン、村上春樹、森見登美彦、J.アーヴィング、ナボコフ、筒井康隆、小川洋子。まったり創作楽しみたいです。読書,音楽記録→ #順読 #順音

杉本 順の記録 ON_B-REVIEW・・・・

「人工呼吸」 小学生くらいの 男の子が蹲って ケースから取り出した 青色のピアニカに 息を吹き込んでいた 呼吸をしていないよ 男の子は顔を真っ赤にして 白いパイプを咥え 頬を膨らませて 泣きじゃくっていた 僕は近寄って ピアニカの鍵盤を 叩いてみせた 勢いよく吐き出された 青緑色の海水 ピアニカは溺れていた 雑音ばかりの大海に その喘ぎ声は 音階を昇っていき 男の子の笑い声と重なり 美しい和音になった 僕は楽器店で ピアニカのパイプを買った 自分の胸に挿し込み 思い切り息を吹き込む この身体に隠された 朱色の鍵盤を探す 鉛色の空と街の狭間で 僕は溺死している 黒く濁った肺の中で 小さな魚が一匹 優雅に泳いでいる 僕は毎晩 誰もいない暗い浜辺に 打ち上げられる 呼吸を忘れたまま (「びーれびしろねこ社賞」 応募スレッド)

2021-12-07

「やまいだれ」 やまいだれを 道行く人たちが 服の上に羽織って 通り過ぎていく 風に煽られて コートの裾のように ひらひらと翻る どうしようもなく やまいだれを 身に着けたくなる この胸の痛みを 喉の奥の嗚咽を 整えられた用語で 誤魔化してしまいたい 脱ぎ捨てられた やまいだれが 古着屋の店先で 僕を手招きする 一度袖を通せば もう抜け出せない 誰にも責められることなく 冬の風に怯えなくて済む くしゃみを一つ わざとしてみた 風邪なんか 引いていないのに 心に効く 鎮痛剤が あればいいのに やまいだれは 容赦なく 僕を睨みつける お前はまだ立てるだろうと 治まらない微熱 火照った身体を 引き摺りながら 青と赤の境界線を 虚ろな眼で探す 空がまた高くなった 僕の背は 子供に戻りつつある (「びーれびしろねこ社賞」 応募スレッド)

2021-12-07