お知らせ

あな   

作成日時 2018-01-17
コメント日時 2018-02-02

貴方の声が 虫のように耳もとにささやき 私の皮膚を穿孔して 血管の中に染み込むと 私の血流はさざめき 体の奥に蝋燭を灯すのです 貴方のだらしのない頬杖も まとわりつく体臭も すべてが私の奥に 石仏のように染み込んでいたのです 明るすぎる店内は光っていて ひとりで持つ手が重たいのです ふと買い物の手が 貴方の好きな惣菜を求めていて ショーケースの冷気で顔を洗うのです 閉じられた束縛の中で 私は蛇のようにじっと 湿度の高い空間で 安寧を感じていたのかもしれません 道路脇のカラスがなにかを啄ばんでいます 私の汗腺を塞いでいた あなたの脂 それでもつついているのでしょうか * 夜のさなかというわけでもなく 朝のさなかというわけでもない いつも中途半端な時間に覚醒するのだ 安い珈琲を胃に落とし込めば やがて外界の黒はうすくなり いくぶん白んでくる 陳腐な私という置物の胴体に ぽっかりと誰かが開けた穴の中を 数えきれない叫びがこだまして 私の首をくるくる回す この大きな空洞の中を ときおり小鳥が囀り 名も無い花が咲くこともあった 今はこの空洞に何があるのだろう 暗黒は苔むして微細な菌類がはびこり 私のかすかな意思がこびりついているだけだ また大きくせり出した極寒の風が いそいそとやってくる 私とともにある  この 巨大な穴 外をみる いくぶんかすかに白んできたようだ 空洞の上に厚手の上着を着込み 私は私に話しかけるために 外に出ようと思った 老いた犬を連れて


項目全期間(2019/09/16現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント00
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合00
閲覧指数:103.0
2019/09/16 05時35分49秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。


コメント数(7)
まりも (2018-01-20):

「貴方の声が~血管の中に染み込む」「私の汗腺を塞いでいた あなたの脂」 から喚起される、「貴方」との濃密な関係と、その関係が失われた後の空虚、 諦めきれずに「貴方の好きな惣菜を求め」てしまう語り手の素振りが印象に残りました。 前半と後半、語り方というのか、文体が微妙に異なるところに惹かれます。 前半は女性、後半は男性として、この二人の間に何があったのか。そんな物語を想像しながら読むのも面白いと思います。

沙一 (2018-01-21):

題名が、ふしぎだと感じました。 「あなた」と呼びかけようとして、かなわないと知り、「あな」でとまってしまったのでしょうか。 そんな穴のあいたような空虚感が作品を占めていますね。 直接語られていない物語を、想像させられます。

yamabito (2018-01-22):

まりもさん、おはようございます。 人間にはいろんな穴があり、そのれにまつわる話を構築、または作者本人を描いてみた次第です。 お読みくださり、ありがとうございました。 沙一さん、おはようございます。 タイトルは穴でもよかったのですが、思わせぶりに「あな」としました。 お読みくださり、ありがとうございました。

芦野 夕狩 (2018-01-22):

はじめまして。 「石仏のように染み込んでいたのです」 なんだかとても素敵な比喩だな、と思いました 語り手のなかのイメージだけではなく、「貴方」にまつわる不幸な出来事も想起させるような。 だからかもしれませんが、 「ぽっかりと誰かが開けた穴の中を」 というのは、比喩ではなくありのままに起こったことなのだ、と勝手に読んでいました。 変な妄想がいろいろ働いて面白かったです。

yamabito (2018-01-22):

芦野さん、こんばんは。 他サイトでは若干のやり取りがありましたが、HNの関係上こちらでは初めまして。 面白い部分があったとのこと、ありがたい限りです。

百均@B-REVIEW ON/ (2018-02-02):

好きな作品なので、好きとしか言えないですね。 僕は前から読んでいたので、単純に好きとしか言えません。 >陳腐な私という置物の胴体に >ぽっかりと誰かが開けた穴の中を >数えきれない叫びがこだまして >私の首をくるくる回す > >この大きな空洞の中を >ときおり小鳥が囀り >名も無い花が咲くこともあった > >今はこの空洞に何があるのだろう >暗黒は苔むして微細な菌類がはびこり >私のかすかな意思がこびりついているだけだ > >また大きくせり出した極寒の風が >いそいそとやってくる >私とともにある  >この >巨大な穴 > >外をみる >いくぶんかすかに白んできたようだ >空洞の上に厚手の上着を着込み >私は私に話しかけるために >外に出ようと思った >老いた犬を連れて 引用する他ないですね。ため息がでます。

miyastorage (2018-02-02):

1連目で立ち上げられるこの作品の書かれた動機、背景。多分、貴方の不在より、なお一層惹起された「不能感」。それが小気味いいテンポで描かれていると思います。 >閉じられた束縛 >安い珈琲を胃に落とし込めば この辺の表現は直截すぎて、前者は、第1連と2連で立ち上げられた世界観の持続を阻害しているように感じます。 後者は、なんで歌謡曲の歌詞みたいなチョイスをしたのか?と疑問。安い珈琲、旨くないすよね。 >私の首をくるくる回す という良質な表現を、この後に続く二つの連が受け止めきれていない。と言うか、*以降、急に表現が粗雑になってしまったような。*の前後で、書かれた時期が離れているのかなあと思わされるくらいに。*を境に話者も交代しているようですが、それにしても、惜しいなあと感じます。 >今はこの空洞に何があるのだろう って、聞く必要ないですよね。この後全部答えてるし。だからここは、視座のぶれではなく、作者の油断かなあ、と。

投稿作品数: 1